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姉として



 家に入るなり嗅覚が敏感に反応する。色々な香りが入り交じって匂いの所在が掴めない。中心に大きなウッドテーブルがある居間の四隅と壁には薬草やら香草?もしくはハーブ?が置いてある。もはや、その言葉の区別もつかない。増設された棚にも床にも複数種類の草、わずかに赤い実がついているものや瓶に入っているもの、鉢から育っているもの、もうゴミにしか見えないものまで……もう草、草、草。

 早くに両親を亡くしていて、私自身も騎士になるため王都へ行ってネイナだけになったこの家はすっかりこの子の薬草庭園と化していた。



「……凄いわね、これ全部ネイナが集めたの?」



 ネイナは慣れた手つきで薬草の葉の一つ一つチェックしながら話す。



「え?薬草のこと?……そうだけど……あれ?お姉ちゃん昨日ここに泊まったんじゃないの?」

「村長さんの奥さんが強引でね、ご飯をご馳走になってそのまま泊まることになったの……それで朝起きたら村長から馬小屋に繋いでいる男の様子を騎士の私に見てきて欲しいって頼まれたのよ……」

「へー、そうだったんだねー」

「ネイナこそ昨日はどうしてたの?家に帰ってないの?」

「なんか薬の調合終わって気付いたら調合台にしてた机で寝てたみたいで……」

「本当に薬草なことになると相変わらずね」



 ネイナは薬草のチェックを終え、温かい飲み物を入れてテーブルに置いてくれた。

 それに気付いたので物珍しそうに薬草を見るのをやめてテーブルの席についた。ネイナも向かいに座った。



「はい、どーぞ」

「ありがとう。いい香りね」

「でしょう?フフーン」



 得意気な顔のネイナ。なんだか楽しそう。

 


「……美味しい。これはハーブティー?なにか効能でもあるの?」

「美味しいでしょー?それの効能はねーー……」



 水を得た魚のようにネイナは生き生きと薬草学を語り出した。聞いたことも見たこともない草の名前を呪文のように次から次へと紡ぎ出す。話は脱線して薬草の群生地や採取場所、色んな場所に行ってどんな人と関わってどんな風に過ごして感じたか。薬草の知識の幅を広めてくれる師と呼べる人に出会ったこと。私の知らないネイナの日常をいっぱい話してくれた。

 ネイナもずっとこの村にいたわけじゃなく、町の市場まで出向いて調合した薬で取引したり、情報交換したり、時に薬草採取の依頼を受けたりと、たくさんの人と関わって、頼りにされているんだと思うと姉として嬉しく思った。



 私がいなくっても……もうこの子はちゃんとやっていける……この子を慕ってたくさんの人が寄り添ってくれる。だから……大丈夫。





 そうよね……?







 …………ネイナ。



 





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