イズ
「ああ!そうだ。もう暗くなってきたから早く帰らないとご両親が心配してるんじゃない?」
散々考えて絞り出された質問はモンスターが人に問いかける内容とは思えないものだった。
「……親……は……いない……」
「そう……」
「…………」
「…………」
そして沈黙。
沈黙の度に困る木のモンスターに少し興味が湧いたので逆に質問してみたいと思った。
「……モンスターさん……」
「……?……え?あ!はい!なんですか!?」
やけに声が嬉しそうだ。
「モンスターさんはずっと……ここに住んでるの……?」
「あー……えっと……以前は違う所に居たんですが、気付くとここで目を覚ましたんですよね……ハハハ……」
迷子の……モンスター……なんだろうか。質問を続けた。
「仲間はいるの……?」
「……いないです。1人なんです」
1人?モンスターなのに人みたいな言い方……。
「元々いたところに帰りたい……?」
「それは……まあ……そう……ですね……」
「そこには家族がいるの?」
「…………はい」
モンスターにも家族っているんだなぁ。
それにしても急に歯切れが悪くなった。何か考え込んで挙動も鈍くなった。
「家族って言っても……私はあの人たちにとって、もう【家族】と呼べる存在じゃないのかも知れないですけどね……こんな姿になるよりずっと前から……」
どうゆう意味だろう……。
「あ!ごめんなさいね。こんな話して……えっと良かったら名前を聞いてもいい?」
「……イズ……」
「イズ……さん?」
ブンブンッと首を縦に振って肯定した。
「イズさん、良かったらまたお話しにここに来てくれないかしら?」
「……うん……」
謎に愛嬌のある木のモンスターと居心地の良い草のベッドとの別れを惜しみながら、その場を後にして所属する東聖魔法院へ帰還することにした。




