木のモンスター
「ーーっっ!!」
目が覚めて最初に目に入ったのは木が折り重なって出来た天井だった。
上体を起こして周りを見渡す。
見たことのない造りの空間に……柔らかい草で出来たベッド。
……ここは一体……。
「……あー、あーー。」
「……良し。聴覚……視覚……問題ない。声も出せるな……イケる……」
この空間の中心で小さな声が聞こえる。
視線を向けると木が生えている。
背が低い割には幹が太く、人の腕の様に見える枝が左右に伸びている。
「……気がつきましたか?」
木が……話しかけてきた。
幹をねじり、こっちを向いた木の真ん中の辺りに黒くて丸いくぼみが3点。それはちょうど目と口に見える。
「…………やっぱり怪しいですか……ね……」
反応のない僕に木が言葉を続ける。
…………凄く怪しい。
木は更に言葉を続ける。
「……ちなみに私のこと……どう思います?」
え?どうって?……木としか。
「えっと……怖いなー、とか……気分が悪いなー、とか………ないですか?」
え……?……怖……くはない……けど、ただひたすらに怪しい……
一言も口を聞かないこっちに身振り手振りで幹や枝をクネクネと動かしながら声をかけてくれる様子は……むしろ、ほんのちょっとだけかわいい……かもしれない。
「…………」
「…………」
少し沈黙する。木の目と口に見える黒いくぼみは
困ったような表情を見せる。
「……ない…………」
「ーーっ!?……へ?」
「……怖く……は……ない…………」
「……あ……良かっ…………たぁ……」
しぼり出すように小さな声で意思を伝えた。
木は困ったような表情から一変して、とても嬉しそうにこっちを見ている……ような気がする。
「…………」
「…………」
再び沈黙した。
目の前の喋る木は次に話しかける内容に悩んでいるようだった。
この木との不思議なやり取りにまだ少し混乱しつつも今に至るまでの記憶を辿った。
ビス……なんとか家の次男を暗殺するため、その補助として実行役に同行してこの森へ。目標が特級モンスター討伐の際に死亡とゆうのが依頼の要望らしいので特級モンスターと戦闘になるまで気づかれぬよう暗殺目標を追跡して……。
ああ、そうだ!思い出してきた。
その例の特級モンスターがすべてを狂わせた。
最初はただのモンスターだと思ったのに、次男と護衛はモンスターを見つけて数分もしない内に急に倒れた。その直後におびただしい瘴気が特級モンスターから押し寄せて、逃げることも動くことも目を逸らすことも怖くて出来なくなった。隠密用の外套で姿が見えないはずなのに特級モンスターはこっちに気づいている。実行役が特級モンスターの異様さに思わず攻撃をし始めたけど、まるで効果はない。座標指定の魔法を実行役に送る役目の自分が倒れてはいけないと瘴気に耐え続けていたけど……その後のことは覚えていない。
そして気がつけば、柔らかい草のベッドの上に居て木のモンスターに話しかけられ今に至る。死んでないのが不思議なくらいだ。




