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ドラゴンマスクより「僕」  作者: 美憂


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7/18

変化

変わることを恐れなければ、そこが新たなスタートになる。


僕は僕のサッカーがある。


とうちゃんみたいにはなれない。その事実は、もう嫌というほど知っている。とうちゃんは、ゴールを奪う人だった。


試合を壊せる人だった。

空気を変えられる人だった。


僕は違う。

気づけば周りを見ている。味方の位置を確認して、リスクを考えて、失敗しない選択を探している。それはGKとしては悪くない。でも、だから、


J3に落ちた。

試合にも出られない。

ベンチで終わる日もある。

プロなのに、ピッチの外から試合を見ている。


明日やろうはバカやろう。

僕は甘ったれのバカやろうだ。


でも、その甘ったれた自分をどこか他人事みたいに扱っていた気もする。


若いから。

まだ時間があるから。

いつかチャンスは来るから。

そうやって、少しずつ安心して甘やかしていた。


瑠の言葉が刺さったのは、多分そこだ。


「そんなので、サッカーやってるつもりになるなよ」


別に僕に言ったわけじゃない。

でも、あの瞬間、確かに僕の中の何かに当たった。

女子チームには、続ける場所そのものが危うい現実がある。


人数が足りない。

仕事がある。

家庭がある。

怪我したら終わるかもしれない。


それでも、みんなサッカーを続けている。

かあちゃんさえも、罵倒して勝てるところに引きずり上げようとしてる。自分がどう思われようが、瑠には関係ない。勝つための怒りなんだ。

かあちゃんは、その中心で毎回ボロボロになっている。足を引きずって帰ってきて、湿布貼って、なのに次の日にはまた動画を見て、準備してる。


僕はかあちゃんをかまってる場合じゃない。瑠に腹を立ててる場合じゃない。あんなふうに、「サッカーしたい」が全部に勝っている感じに浸りたい。


レーザービームのような鋭いロングフィードで、攻撃に力を与えるような熱いプレイがしたい。吠えて、鼓舞して、神の声を送り続けるんだ。


ロングフィードは、ずっと都築龍太を見て、真似てきたのに。僕は一体彼の何を見てきたんだろう。都築龍太の1番の強みは、吠えるコーチングじゃないか。あんなキックがしたいの前に、自分の弱さを認める前に、あんな選手になりたいと、なぜ、強く思えなかったんだろう。


とうちゃんみたいな“エゴ”がなくたって、僕は僕のサッカーをやるしかない。てか、サッカーがしたい!


まずは、スタメンを取って、

そして、一年で昇格する。

目標を、ちゃんと形にする。


ぼんやり「頑張る」じゃなくて、「何をやるか」を決めよう。都築龍太のような、ちょっと恐くても味方のために声を出すことから始めよう。コーチ、驚くだろうな。


ビルドアップができるようになったら、

コーチングができるようになったら、

考えたらワクワクしてきた。

 

ピッチを支配しようとする覚悟を持とう。


ロングキックの精度を磨き、監督のイメージを刷り込み、ピッチで指示を出すんだ。練習中からアピールして、紅白戦も圧倒的な支配をしてやる。


ミスを怖がって黙ることはもうやめよう。


キャラじゃないことをやらなきゃ、殻は破れない。


マンガみたいに夜のピッチで叫んだ。


『そんなんで、サッカーやってるつもりになるなよぉ〜!!』


それは、瑠がかあちゃんに言ったことだった。


「今までと同じなら、今までと同じだろー!」


ドラゴンマスクが偉そうにかあちゃんに言った言葉だ。


だから、今度は自分がやる番だ。

ドラゴンマスクとして、かあちゃんに言葉を送りながら、結局、一番変えられてるのは自分かもしれない。


最近、練習後に一人で残る時間が増えた。


誰もいないグラウンドは静かだ。

ピッチに向かってボールを蹴る音と僕の雄叫びだけが響く。


その時間が、少し好きになってきた。

とうちゃんみたいになれなくてもいい。

かあちゃんみたいに無茶苦茶でもいい。


僕は、僕の見つけたサッカーをやる。

始めるのに遅いってことはないんだ。


サッカーは好きだ。

好きだから続ける努力をする。


その先にしか、多分、次の景色はない。

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