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ドラゴンマスクより「僕」  作者: 美憂


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ポジションへのプライド

W杯を見てて思うんだ。

例えば、スペイン代表のゴールキーパーって自分で選択したんだろうかって。

ブラジルはどうなんだろう?


僕のポジション、ゴールキーパーは特殊なポジションなんだよね。

決まってしまえば、他のポジションへのコンバートはほとんどない。

僕は「背が高い」と言う理由でコーチから指名された。

指名された時は嬉しかった。だって、特別感のあるポジションだからね。

「僕は選ばれた」そう、思った。

練習メニューも違い、クラブでは特別に専任コーチがつく。


中学校の部活には「走るのが嫌だから」とゴールキーパーに立候補してたやつがいた。正直、むかついた。


僕のいたクラブでは許されない理由だが、確かにJリーグの試合中の走行距離やスプリント回数にゴールキーパーの名前が出ることはない。ヒートマップも解析されることもない。ほぼ決まったエリア内で完結する。

僕は、足元が弱いとか走れないとか、マイナス面で選ばれたわけではないと思ってる。チーム内では、どこのポジションでも器用にこなしていたと思う。

でも、自分がゴールをとるとか、自分が支配するとか、自分が潰すとか、そんなエゴを持ってやってやっていたかと言えば、わからないけど、コーチの判断は正しかったと今も信じている。

僕は、走れないからGKになったんじゃない。

「お前なら守れる。」

そう言われたんだと信じてる。


決められたゴールの高さを考えれば、背は高い方がいい。さらに手足が長い方が、ゴールをカバーして相手への圧力を与える。

ゴールキーパーは、手で捕るだけじゃない。

抱えるのか。

弾くのか。

流すのか。

たった一つの判断でヒーローにも戦犯にもなる。

それまで、手を使ってボールを受けることは考えたこともなかったので、不思議な感じがした。正面でボールを受け、落とさないようにするのは、トラップとは違って抱え込む感じで体の使い方が違う。まあ、最低条件はゴールさせないことなんだけど。体のどこに当ててもいいからゴールを守るって、僕はかっこいいと思ってる。練習の時にたまにやっていたのでルールはわかっていたけど、最初は攻撃時には置いて行かれた感があった。


チームのゴールは遥か遠くで見る。チームのピンチは最前列で見る。

自分のチームがゴールした時、まず間違いなくゴールキーパーまでハイタッチには来ない。ゴールキーパーまでハイタッチに来る時、それはゴールキックのロングフィードを受けた選手がそれを受けてゴールまで持ち込んだ時、最高に嬉しい。まずはゴール前で、一人で「よっしゃ!」となる。その時は、ゴールキーパーまでハイタッチが回ってくる。だからってわけじゃないけど、僕は常にそこを狙っているw

学年では、いつも最後尾で頭一つでる僕は、ゴールキーパーとして県のトレセンには常に選出されていた。人見知りしちゃうから慣れてる県トレまではいいんだけど、年代別日本代表には選ばれてもコミュニケーションがうまく行かず、声が出せずで控えだった。「わー!〇〇県の〇〇選手だー!」となっちゃって、そんなすごい選手にコーチングできるわけもなく、体格とロングフィードから期待されているものは、披露することもできなかった。

調子に乗って受けたJチームのユース(かあちゃんの好きなチーム)のセレクションには見事に落ちた。僕なんか足元にも及ばないすげーキーパーがジュニアユースから入ってて、コーチングできない僕の居場所はベンチにもなかった。


W杯見てると、出場国のゴールキーパーの身体能力はハンパないんだよなー。なんでフィールドプレイヤーじゃなくて、ゴールキーパーになったんだろうと思う。特にスペインの華麗な攻撃を見てると、あの中に入りたいって思わなかったんだろうかと思う。

あのゴールキーパーたちは、

自分でその場所を選んだんだろうか。

それとも、

僕みたいに誰かに選ばれたんだろうか。

もし選ばれたのだとしたら、

その人たちは、いつ「自分で選んだ」と思えるようになったんだろう。

そう思えるのがポジションに対する自信だったり、プライドだったりするんじゃないかな

と思うんだ。


かあちゃんのおかげで、てか、ドラゴンマスクのおかげで、自分の目標がはっきりしてきて、自分が不足しているものと対峙し始めた。おかげで、スタメンを取れるようになり、サポーターから「守護神」として認めてもらえつつある。すっごい控えめに言ってるけどねw


僕はゴールキーパーが好きだ。

守備の要でもあるし、攻撃の起点でもある。

何よりサポーターの煽りを背中に一人で受けながら、ピッチ全体を見渡せる。こんなポジションはない。


僕は、最初はコーチに選ばれたゴールキーパーだった。

いつ「自分で選んだ」って思えるようになった?って聞かれたら


今でしょ。


って、人には聞かせられない。今のはなかったことにして。

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