暇なお留守番
グリットリグでテュフォンの帰りを待ち侘びているエルスカデだった。
私が風邪が治って師匠の工房に赴くと、鍵が掛かっており、入れなくなっていた。
扉を前後に揺らしてもびくともしなかった。
食事処や服屋、雑貨店、武器屋、酒場、宝石店などテュフォンが脚を運びそうな店に探しに行ったが見当たらなかった。
《スペックフッガレ》という冒険者パーティのアストリッドとフーゴの男女に会って、訊ねた。
「アストリッド、フーゴ、お師匠が居なくなった。何処に行ったか知らない?」
「テュフォンさんが居なくなった?ほぉう、私ぃ彼女に会ってないから知らないよ。グリットリグから出国したなら、誰か連れていくかもね。何処か、店の人が居なくなっている筈だから、聞いてみたら」
「テュフォンさんが居ないなら、アストリッドが言ってるように出国てるかも。彼女がグリットリグから長い間離れることはないからなぁ。早く会えるさ、エルスカデちゃん」
アストリッドとフーゴにはこう言われた。
私は師匠が交流の深い食事処に赴いた。
「こんにちは〜。おじさん、お師匠が工房から居なくなった。何処に行ったか知らない?」
スモーキリガが厨房から出てきて、屈んだ。
「おう、エルスカデちゃんよく来たね!テュフォンなら、ウチの者を連れて、アルターレに行ったよ。エルスカデちゃんになにも言わずに行きやがったのかい、あいつ」
「お師匠、すぐ帰ってくる?」
「当分は帰ってこれねぇな、遠いとこだからな、そこは。テュフォンは死なねぇから安心しな」
「うぅ〜ん、わかった」
私は食事処を出て、自宅に帰った。
工房は閉めてあって、入れない。
翌日。
私が大通りを歩いていると、《スペックフッガレ》のスヴェアに呼び止められた。
「おーい、エルスカデちゃん!!なにしてるの?」
「暇だから歩いてただけ」
「昼食奢るから一緒に来ない?」
「良いの?行く!!」
私は頷いて、スヴェアに差し出された片手を握り、歩き出した。
私はスヴェアに手を引かれながら、入ったことのない食事処に連れてかれた。
背凭れのない椅子に座り、テーブルに両腕を載せた私。
スヴェアが店員に注文をして、運ばれた水をぐいっと飲んだ。
「テュフォンさんがグリットリグを出国たんだってね、寂しいね。テュフォンさんには最近会ってなくて」
「そうなんだ、スヴェアさん」
私の両親は私が勝手に出掛けてもなんとも言ってこない。
私が師匠を慕うようになったのは、私が森に入って魔物に襲われてたのを救ってくれたからだ。その日以降、師匠の工房に入り浸り始めた。




