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朝起きたら、宇宙征服者の姫になってた!  作者: 七月 夏喜
第3話 双子姫、アデン登場!
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その7


 騒がしい部屋から関口はひとり中庭に出て、ぼんやりと外を眺めていた。


「おい、おい」


 聞き覚えのある声に彼は辺りを探す。中庭の大きな木の側に、男が周囲を警戒するように立っている。

 白ヘルやや小太りで、金色のちょび髭をしている。


「おまえは、クルス!」


 脇目も振らず勢いよく裸足で中庭に飛び降り、関口は走り出した。


「よう、元気、か……」


 そう男が言い終わる前に関口は胸ぐらを掴んで吊り上げる。


「おまえ、どんな面して現れるんだよ!」


 締め上げられて苦しいのか薄笑いなのか、わからない表情のクルスは見つめた。


「なんだ、この前のことか。あれは惜しかった。もう少しで仕留めることが出来たんだけどな」


 その言葉に逆上するように、関口は更に締めあげる。


「クルス、お、お前……のせいで、も、百瀬は」


 クルスが手を払うと男は大きく後方に突き飛ばされた。


「冗談じゃないぞ。随分酷いじゃないか、関口。これでもあの時は、紳士的に振る舞ったんだぞ」


「まさか、また百瀬を狙ってるんじゃないだろうな」


 尻餅をついた彼はその姿勢のまま声を上げる。


「まさかじゃなくて、それが俺たちの宿命だと言ったはずだ。血が覚醒する前に潰さねばならん。この星のためにな。関口、訳はしっかり説明しただろう。お前は姫に一番近いんだ。いつでもやれるはずだ」


 拒否を示すように首を振る関口に、クルスは塊を投げた。宝石の様な瑠璃色の物体は男の足元に転がる。


「これは何だ」


「見ての通りキラーストーンさ」


 不気味な程、口元をクルス吊り上げた。


「これを姫の胸に突き刺せ。そうすれば血はそいつによって分解、浄化される」


 一般的に口にしない言葉に関口は青ざめる。


「突き刺す?」


「安心しろ。本当にそれを突き刺すわけじゃない。その石は特殊な効果をもたらす。お前がそれを発動させれば、事は済む」


「一体これは何だ、教えろ」


 関口は必死の形相だった。


「それは『オメガ・テン』というここ地球には存在しない、宇宙の石だ。これをお前の力によって発動させる。なに難しくはない。手に持って振ればいい。そうすれば、あの姫の星の人間に特に作用する劇薬になる」


「ど、どういうことだ」


 狼狽える関口と違い、さっきから男はずっと薄く笑っている。


「姫の中にある、征服者ザベリンの血が分解される。その手助けをする。つまり覚醒しなくなる」


「覚醒しなかったら、百瀬はどうなる?」


 説明するクルスは少し後悔じみた顔をした。


「彼女は血が覚醒することで、その後の寿命を伸ばす」


「つまり、覚醒しいないと言うことは……」


 関口の手が震えている。


「気の毒だがそこで寿命が尽きることになる。彼女にとって、それが幸せか不幸せか」


 彼は頭を振った。


「そんな……。何故、俺が、そんなことを」


「またそれか。関口、それがお前の与えられている使命だからだよ。百瀬璃緒の近くにお前がいたのは、偶然じゃない。必然なんだ。この日ために必要だったんだ」


 クルスは関口の足元の塊を拾い上げ、彼の手を持ち上げ握らせた。


「……出来ない。そんなこと、俺には出来ない」


「それはお前が、百瀬璃緒に恋愛感情を持っているからか?」


 再び瑠璃色の塊は関口の足元に滑り落ちる。


「俺も非情じゃない。側いたらそんな気も起こすに違いない。覚醒する前は普通の女性だからな。しかし、これから先彼女は、地球にとっては一大事だ。私情を挟む余裕はない。今は将来のことを考えろ。奴等にこの星を渡してはならないんだ。この後の星たちのためにも」


 クルスは関口にもう一度塊を握らせ、背中を押した。


「こんな物いるか!」


「困ったな、じゃあ俺がやるとするか。なに、造作もないことだ。お前に任せたのは、せめてものの親心だったんだけれどな」


「ちょ、ちょっと待て! それは俺が預かっておくよ」


 大事に握り締めて、前にのめり込みそうなままよろける。



「巧くやれ」


 彼が去った後、クルスは空を見上げる。


「さて、どう答えを出すかな、関口。お前次第だ」


 星空の中に一際光を放つ星があった。それは燃えているようにも見える。クルスは爪を咬んだ。


「次の選択肢は、この星の終わりだ」



 背後の草むらから音がする。


「誰かいるのですか」


 分け入りながら来た男、カオスだ。彼は常に警戒心を尖らせては見回りをしていた。クルスは慌てて、異空間に体を預けて逃げる。


「気のせいか……」


 だが、カオスは見逃さなかった。ゆらりと歪んでいる空間を見つける。手に翳すと、それは逃げるように消えて無くなった。


「……でもないようです。リューク」



***


「どうしよう、あの双子ども」


 早紀は腕を組んで考え込んだ。さっきから、二人で真剣な顔をしたり、くすくす笑ったり、互いに顔を見合わせて、肌に触れたり、話が途絶えないようだ。


「仲良しになれって言ったけど、何故か嫉妬しちゃう」


 彼女の顔は笑っていない。本気モードだ。桶に水を入れ、近くまで寄り、それを勢いよく浴びせた。


「二人とも長湯してると、のぼせちゃうよ」


「さ、早紀!」


 頭から水を被った二人は、叫んだ。


***


「心配など要らぬ。今日はリオンと一緒の部屋に就寝する。少しは、あやつと仲良くなったようだ」


 アデンは定時報告を、メイラムに入れていた。彼女は快活な話しぶりだ。


ー何故、姫がそこまで、リオン姫に付き添わなければならぬのですか。そうでなくとも、あなた様はエクティーヌ星、ザベリン第一王位継承者として、いずれはリオン姫も配下になるべき、お人……ー


「メイラム、聞け」


ーはー


 大浴場から出たアデンは浴衣を着ている。


「我が妹リオンは、とても素直だ。恐らく、王位など興味はない。いやそれよりも、ザベリン家自体、眼中にないだろう」


ーそれは、この辺境に地ならではの弊害でございます。しかし失礼ではございますが、リオン姫が王位継承されるには、いささか十分な素質をお持ちとはお見受けられませんー


 アデンは、くすくす笑った。


「それがしが、リオンの素質だ」


ーおしゃってる意味がよくわかりませんがー


「制圧、支配することだけが、統一ではないと言うことだ」


ーは……?ー


「よい。まだ父上様への連絡はするな」


ーしかし、姫ー


「命令だ」


ー御意ー


 メイラムのレシーバー越しの声が戸惑っていた。アデンは背伸びをして、ロビーの椅子に座る。


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