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朝起きたら、宇宙征服者の姫になってた!  作者: 七月 夏喜
第2話 正義の覇者、光臨!
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その4


 遠い宇宙から青白い炎に包まれた物体が、地球からやや離れた場所を通過しようとしていた。

 その炎の中から小さな光が分離し、高速で地球に近づく。


 周辺空間に停泊しているリューク率いる艦隊はその物体の接近を感知し、警告の後、無反応なそれを砲撃し撃沈した。

 砲撃のさなか、脱出ポッドが飛び出したことには気づかなかった。




 深夜、風呂場で物音がする。窓が開け放たれていた。


「おい」


 丁度洗髪中の男は気づかない。


「お、い」


「は?」


 頭を流し終えて彼は顔を上げた。窓から進入を試み、失敗して頭だけ出している者がいる。


「わあああああ!」


「しっ! 大きな声を出すな」


 その顔は煤だらけだった。

 戦慄く全裸の男は尻を洗い場に擦り付けたまま、凝視している。


「騒ぐな、よく聞け」


 珍入者がそう言うと、男は両手を上げた。不思議な顔をして話を続ける。


「聞け。この惑星は征服されようとしている」


 浴室に冷ややかな空気が漂っていた。


「えーと、泥棒」


 全裸の男は珍入者を指さす。彼はその指先の到達点から離れようともがくが、窓枠にはまり過ぎて出来なかった。


「ストーカー!」


「うるさい! お前何ぞに、興味はない! ともかくよく聞け!」


 男は目の前の珍入者が、動けないことを悟ると立ち上がる。


「立つな、聞け! おまえは正義の覇者だ。この惑星を救うの……」


 話の終わりには男は珍入者に向かって、お湯を掛け桶を投げつけた。額に受けた一撃は、その者を窓から離すことに成功する。開いた窓から鼻から上だけ出して再び声がした。


「おまえ、サベリンの娘『リオン』とい言う姫を知っているか」


 聞き覚えのある言葉に、関口の動きが止まる。彼は『百瀬璃緒』のことだと気づいた。


「知っているはずだぞ」


 窓に煤を付けた顔が浮かぶ。白いヘルメットを被り、金色の髭をはやした男が立っていた。


「あんた、一体誰だよ。警察呼ぶぞ」


「まあ、待て。聞けよ、俺の言うこと。おまえ知っているよな、『リオン』と言う名」


 白ヘルの男は真顔で見つめる。


「き、聞いたこともない。大体、姫ってなんだよ」


 口元を歪ませて、関口は笑い飛ばした。


「おまえ、本気で笑ってるのか」


 余りの真摯な顔に、関口の口が自然と閉じる。


「リオンは極悪非道の侵略者ザベリンの娘だ。もうじき、この惑星も奴の配下になるんだぞ」


 その凄んだ顔からは、先ほどのドジっぷりが伺えない。


「侵略? なんだそりゃ?」


 白ヘルが凄んでも、今ひとつ状況がつかめない関口は素っ頓狂な声を出した。 


「な、何を藪から棒に。それに、いつもと変わらんぞこの世界は」


「それは、奴がまだ覚醒していないからだ」


 白ヘルは指を立てた。


「覚醒していない?」


「そうだ。奴らの子供は、十七年間、ある惑星の里親の元で住人になりきって過ごす。まあ赤ん坊の時からだから、本人も知らないだろうがな。そして十七歳の誕生日を迎えるとともにザベリン家の血が覚醒し、その地の侵略を始める」


 今関口は璃緒の顔しか思い浮かばない。


「どうしてそんな侵略みたいなことをするんだ?」


 白ヘルは頭を振った。


「奴らの運命か、持って生まれた習性か。言い伝えでは殺戮を使命としているとも聞く」


 関口はいつか璃緒の隣にいた男に、刃物で真二つにされそうなったことを思い出す。鋭い眼光に肝が縮み上がった。


「いずれにしても侵略と統治された惑星は、ザベリンの次なる侵略拠点として存在するのみとなる」


 聞き耳立てている関口は、すっかり体が冷えていることに気づく。同時にこの状況の異常さを感じて我に返った。


「あんた、一体そんな変な事、そんな宇宙の話なんて胡散臭いっていうか、バカげてるって言うか。あんたが一番怪しい、一番危ないよ」


「つくづく、わからん奴だな、おまえは」


 思い立った白ヘルは、再び窓枠に顔を入れる。


「言っておくが、我々の先祖はこの侵略を最小限に食い止めてきた戦いの歴史がある。この惑星もかつて、奴らの魔の手から救い出したことがあるのだ。そしてそれは今でも受け継がれて続いている」


 男は全裸へ指を差した。


「この惑星へ、受け継がれている者は、おまえだ。おまえはこの惑星を救うために、派遣されたのだ。使命を遂行しろ。俺はそれを伝えにきたのだ」


 しかし関口は頭を捻っている。


「大体、そんな子供向けヒーロー番組みたいなものをどうやって信じるのさ。俺はこの地球で生まれた、ただの人間だ」


 白ヘルは大きな溜息をついた。


「確かにな、悪かった。少々、焦っていたよ。もう少し説明が必要だった。だが俺が今言ったことは嘘じゃない。これだけは覚えておいてくれ」


 急に窓枠から白ヘルが消える。


「リオン姫が覚醒したらこの惑星は滅亡する。おまえが阻止するんだ」


「ち、ちょっと!」



 関口は窓から首を出した。だがそこには誰も居ない。ただ門が破壊され鉢植えが割れた側に、人間が一人くらい入るような、機械の残骸が転がっていた。


「本当なのか、リオン、百瀬……」


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