無能の烙印
この作品に登場する設定は私個人が実際に夢で見た設定を盛り込んでます
第一章 無能の烙印
「――神域補助。それが、お前に授けられたスキルだ」
神官の声が、王都の大聖堂に響き渡った。
十七歳の少女、セレイナ・フォン・アルヴェリアは、静かに自分の手を見つめていた。
輝く銀髪に、宝石のような碧い瞳。背筋の伸びた立ち姿と、優雅な物腰。彼女は王国でも名高いアルヴェリア公爵家の令嬢であり、幼い頃から将来を嘱望されてきた少女だった。
アルヴェリア家は、代々優れた戦士や魔術師を輩出してきた名門貴族である。
父は王国軍の重鎮。兄は王立騎士団への入団を約束された天才剣士。弟でさえ、幼い頃から希少な魔法の才能を発揮していた。
そんな家族の中で、セレイナだけは違っていた。
剣を振るえば兄に及ばず、攻撃魔法を使えば弟に及ばない。
それでも彼女は、努力を怠らなかった。
誰よりも早く起きて魔法書を読み、傷ついた使用人には薬を調合し、家族の訓練を陰ながら手伝った。
いつか自分も、アルヴェリア家の誇りになりたい。
そう信じていた。
そして今日、十七歳の誕生日を迎えた彼女は、神殿で一生を左右するスキルを授かることになったのだ。
「神官様。そのスキルは、どのような能力なのでしょうか?」
セレイナが尋ねると、神官は水晶に浮かんだ文字を読み上げた。
「対象の能力補助、魔力効率の改善、戦術情報の解析……。なるほど、支援系のスキルですな」
「支援系……」
「残念ながら、直接的な攻撃能力は確認できません」
その瞬間、周囲から失笑が漏れた。
「支援だと? 貴族の令嬢が?」
「攻撃魔法も使えないのか」
「アルヴェリア家の名に傷がつくな」
セレイナは唇をかみしめた。
けれど、まだ希望はあった。
「ですが、仲間の力を支えられるのなら、きっと役に立てるはずです。私、もっとスキルを研究して――」
「もうよい」
冷たい声が彼女の言葉を遮った。
父、アルヴェリア公爵だった。
「セレイナ。お前には失望した」
「……お父様?」
「我が家は王国を支える名門だ。戦場で役に立たぬ者を後継者として残すわけにはいかん」
「ですが、私はまだ、このスキルのすべてを理解しておりません」
「言い訳は聞きたくない」
父は、まるで見知らぬ他人を見るような目で娘を見下ろした。
「三日以内に屋敷を出ろ。今後、アルヴェリアの名を名乗ることも許さん」
セレイナは言葉を失った。
「……私を、追放なさるのですか?」
「そうだ」
「私は、お父様のお役に立ちたくて……」
「黙れ!」
怒声が大聖堂に響く。
「役立たずに用はない!」
その一言が、セレイナの胸を深くえぐった。
幼い頃、父が病に伏せたとき、彼女は毎晩付き添った。
兄が訓練で負傷したときには、治療法を調べ尽くした。
弟が魔法に失敗して落ち込んだときには、何時間もそばで励ました。
誰かを支えることが、自分の生きる意味だと思っていた。
けれど、その力は誰にも認められなかった。
「……承知いたしました」
セレイナは深く頭を下げた。
涙は流さなかった。
泣いてしまえば、これまで積み重ねてきたものまで、すべて失ってしまう気がしたから。
こうして、十七歳の令嬢セレイナは、生まれ育った家を追われた。
手元に残されたのは、わずかな旅費と古びた鞄。
そして、誰からも価値を認められなかったスキル――。
【固有スキル:神域補助】
【分類:支援系】
【評価:最低位】
【攻撃能力:なし】
誰も知らなかった。
その鑑定結果が、スキルの真価を測るにはあまりにも不完全だったことを。
読んで下さりありがとうございましあ




