2章 33話 不和
冒険者4名、エルフ2名、ドワーフ2名のダンジョン攻略です。
まだまだ続きます。
(まさか、エルフとドワーフ両方お目にかかれるとは・・。)
前回訪れた4人の冒険者(無限沸きゴブリンをたった数匹倒して帰った)が、新たにエルフ2人、ドワーフ2人を連れてダンジョンに訪れてきている。
データでそれぞれの冒険者を見る。冒険者4人は当然前回と変わらない。ステータスは総合してFランクだ。個々の能力で中級冒険者の下の方に位置しているだろう。だが、前回見てわかったがパーティプレイをそつなくこなしている。パーティとしては中級の中と言うところだろう。
エルフどドワーフは冒険者に比べて1ランク能力が高かった。全員明らかにステータスに偏りがあるが、総合してランクEほどの力を持っている。
戦闘については素人のサトルが見てわかる程にバラバラの行動をとっており、とてもパーティと呼べるものではない。しかし連携が悪いからといって個々の強さでゴブリンに負けるはずなどない。8名は1-Bを抜け、更にDを越えてEの部屋にまで進んでいた。ゴブリンロードの部屋の方へは向かわなかったのが少し残念だ。
Eの部屋は冒険者の休息用の部屋として作った場所であり、モンスターは出ない。ウィンドウに映った冒険者たちは周りを警戒しながら休憩を取っていた。
「まさかここまで全ての部屋にゴブリンの魔方陣があるなんて!
一体このダンジョンはどうなってやがんだ!」
ヨーゼフたちはモンスターの出現しない部屋にたどり着き、警戒しながらも休憩していた。
攻略をエルフやドワーフに頼りすぎるわけにはいかず、先頭を進んでいたヨーゼフたちは最も疲労の色が濃い。
エルフやドワーフは適度に力を抜いていたので、そこまで疲れていない様子である。
特にヨーゼフは多くの魔法を使いメンバーをフォローをしていたため、疲労の色も濃い。
カタリナはそんなヨーゼフの姿を見て、エルフやドワーフに怒りを超えて憎しみさえ感じ始めてきていた。
当のエルフやドワーフはヨーゼフたちの行動は当然かのように思っているようで、今は皮で出来た水袋から水を一口二口飲んで喉を潤していた。
「いつまでそうしているつもりだ。
次の部屋にさっさと向かえ。」
ヨーゼフの魔力の回復を待っていたところに、エルフのマルクがそう声を掛けて来た。
この言葉に、怒りを我慢しつづけていたカタリナが爆発した。
「あんたらねえ!
ほとんど手伝いもしない上にそうやって威張り散らして!
一体何様なわけ?
あんたらが態度を変えないなら私たちはこの依頼から降りる。
自分たちが本当に強いと思ってるなら、
私たちなんて当てにせずに勝手に4人で進んでよ!!」
そう言って、降ろしていた荷物を担いで出口の方に向かおうとしたとき。
「待ってくれ。もう休憩は終わりだ。
先に進もう。」
ヨーゼフがカタリナの言葉に反論するかのように、先に進むことを提示した。
「ちょっと!
なんでまだ手伝うわけ?
ヨーゼフは頭に来ないの?!」
カタリナはヨーゼフに近づいて、耳元で小さな声で怒りを露わにした。
しかし、ヨーゼフはカタリナの怒りには取り合わなかった。
「カティ。行こう。
もう魔力も回復したから。」
立ち上がると、新しい光の玉を出現させカタリナより先に進んで行こうとした。
「待ってよ!!もう!」
カタリナはヨーゼフを自分より先に進ませるわけには行かず、仕方なく追いかけた。
それを後ろで見ていたヘルミは、もうどうしたらいいかわからずリーダーであるヨーゼフの言う通りにすることにした。普段おちゃらけているが、ヨーゼフは聡明である。きっとこの行動にも意味がある。そう信じることにした。
隣にいるイーロの顔を見るが、イーロはいつものように何も喋らずまた表情も変えてもいない。
エルフとドワーフは冒険者たちの移動を見てから、またその後ろをついていった。
「シス、あの魔術師はどうしてここまで頑なに
依頼をこなそうとするんだろうな。
あの8人はパーティとして成立していない。
ましてやエルフとドワーフは冒険者を捨て石とでも
思っているかのような振る舞いだ。
この後の部屋をくぐり抜けれるとは思えない。」
「サトル様、申し訳ありません。
私にはあのような弱者のことなどさっぱりわかりません。」
真剣に疑問をぶつけたサトルだったが、シスの返答を聞いて呆れてしまった。
そして思い出した。シスは全ステータスBランクなのだ。空を飛ぶ竜には地を走る下等生物の気持ちなどわかるはずもなかったのだ。
8名は更に先に進んだ。
次の部屋からはコボルトが出現するようになる。8人がどのようにしてコボルトを潜り抜けて行くのかをただただ見ることにした。




