2章 34話 撤退
間がだいぶ空きました。
自分で納得がいかないことが増えてきてしまい、過去の文章を少しずつ直しています。
「この部屋のコボルトは倒しても新たに沸かないようだ。
遠慮なく倒すぞ!」
コボルトを倒しても新しくコボルトが召喚されないことを知り、ヨーゼフたちは合計6匹いたコボルトを1匹ずつ順調に倒していった。
そんな中、手伝おうとしないドワーフとエルフを見てカタリナが舌打ちをする。
エルフはモンスターが表れても攻撃の意思を示さず、ただ周りを警戒するだけだった。
ドワーフはこの部屋に入ると脇目も振らずに壁に走り寄り、青く色づいた壁の前でナイフを取り出し壁を削っていた。
「コバルトブルーの染料じゃ・・。」
ナイフで削り取って粉状になったものを舌でなめてからドワーフのネロが言う。その声が聞こえているのは傍らにいたオルフェロだけである。
「では、これは何かの鉱脈か!」
オルフェロは驚きの声を隠せずに大声を出した。
声はヨーゼフ達にも聞こえたが、目下戦闘中であり反応している余裕はなかった。エルフ達も戦闘しているわけではないが、ドワーフの話には興味がないようである。
ネロとオルフェロはそんなメンバーをしり目に、バックパックから組み立て式のつるはしを取り出す。この場で掘り始めるつもりであった。
部屋にいたコボルトは6匹から3匹に減り、倒されたコボルトからドロップした魔石はエルフが回収していく。残り3匹のコボルトであれば、ヨーゼフ達だけでも楽に倒せる相手であるからエルフたちは警戒を解き魔石の品定めをし始めていた。
「銅じゃ!銅鉱脈じゃ!
それにしてもなんと純度の高い・・・。」
つるはしで鉱脈を掘ったネロが、掘り出した鉱石を見て更に驚嘆の声をあげた。
鉱脈と言いつつ、純度100%に近い状態で析出していた銅は驚きの産物以外のなんでもなかった。
ネロの横でオルフェロは自身のバックパックに銅の鉱石を詰める。その行動で、ギルドに持ち帰ってもっと詳細に調査する価値があると言うことがよくわかる。
「とどめ!」
そんなドワーフとは関係なく、カタリナは最後の1匹となったコボルトにショートソードをたたきつけた。
無事にこの部屋のモンスターを全て倒し終わったヨーゼフ達は、少しだけ警戒を弱めてドワーフやエルフに向き直る。
「このダンジョンの探索はもう終わりだ。
撤収する。」
ヨーゼフはギルドマスターが言わんとしていたことが今よくわかった。エルフたちは魔石に対して尋常じゃない興味を示している。これは、ゴブリンやコボルトのような低級モンスターが魔石を落としたという事実にではなく、この魔石がとても価値が高いものであることを示している。また、ドワーフにしても鉱脈、そして鉱石に尋常ではない価値を感じている。
つまり、総じてこのダンジョンが特別であるということだ。
「なぜじゃ?
まだこの奥には目にしていない宝が
あるかもしれないじゃろ?」
銅の鉱石をかき集めていたオルフェロがヨーゼフに言う。
「うちのギルマスが言ってたのさ。
成否の判断は各ギルドの者がする、と。
魔石を見た時、そこの鉱脈を発見した時の
あんたらの態度を見たらこのダンジョンが
どれだけの価値があるかがわかった。
それを見てわかったのさ、調査は終わりだと。
これ以上の調査はわざわざ俺たちがやる必要はない。
他の冒険者に任せればいいだろう。」
その言葉を聞いてエルフもドワーフも驚きを隠せない。
「待て!
まだこの先にはまだいくつもの部屋があると
思われる。
それを調査せずに帰ると言うのか!」
エルフのマルクが反論する。が、しかし
「ダンジョンの全ての部屋を調査することが
今回の目的ではない。
それに、奥深くに入れば強いモンスターが
現れるのは必然だろう。
あんたらと一緒にこの先戦い続けるなんて
こっちはごめんだ。」
その言葉にマルクもリネーアも顔を下げて悔しそうにする。
「ならせめて後2部屋・・いや、後1部屋でもいい!
この通りじゃ!」
ドワーフのオルフェロは頭を下げてヨーゼフに頼むが、ヨーゼフは顔を振って断る。
「断る。
どうしても行きたいと言うなら、
あんたらだけで行けばいい。
エルフの二人もそうすればいいさ。
あんたら4人が協力すればそれくらい
楽勝だろう。」
そう言うと、ヨーゼフは他3人のメンバーに声をかけ部屋から撤退するように準備を開始した。
「無理を言っても仕方ない。
彼らに信頼を示さなかったのはわしらじゃ。
彼らの頼みや話を全く聞こうとしなかったのに、
わしらの願いだけを叶えてもらおうなんて
おこがましいにもほどがあるだろうしな。」
オルフェロの肩にネロが手を置いて告げる。
その声はエルフ達にも聞こえていた。
最初からエルフもドワーフもヨーゼフたちと協力していれば、この先に行くことも適ったのかもしれない。
それを閉ざしたのはマルクやネロたちなのだ。
冒険者は信頼で生きていると言う。信頼できない者と危険な冒険をすることなどできないのだ。




