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1章 35話 動向

題名が36話になってたので、35に書き直しました。

宿屋へは行きません→宿屋へは行こうとしてません



村へ着くとすぐ布製品の店に向かうことになった。

俺の恰好を急ぎなんとかしたいシスの要望のためだ。以前入ったことのある麻製品の店ではダメなようで、綿製品を売っている店を探すことになった。

森側の門付近は散策し終わって綿製品を売ってる店がないのはわかっていたので、正門付近を探す。

正門前から続く大通りから別れた道に入って探したりしている際に、ついでに騎士の姿も探してみるのだが、一向に見かける気配がない。

もしかしてもう帰ってしまったのだろうか。


いくつか目の小道に入るとようやく綿製品の店見つけ、シスが先に入っていく。

シスが入ってきた時は揉み手をしていた店主が、俺が入った途端嫌そうな顔を向けてきたため、シスが抗議をしようとしたので止めた。毎回この調子で誰かに反抗しようとするのは困る。

何かあってもシスをすぐ止められるように二人で製品を見て回る。綿の布の既製品は大体1着銀貨1枚。着色されたものもあり、黒,赤,青、ととてもキレイであった。シスがその内の1着を手に取って、俺に合わせてみようとしたところでそれを見た店主が近づいてきて怒鳴った。


「おい! 何してんだ!

 うちの製品は貴族様にも愛用されてんだ。

 そんな汚い奴になんて合わせるんじゃねえ。

 汚れるだろうが!」


シスの手から綿のシャツが奪い取られる。

シャツを奪い取られたシスは激怒の表情で手をわなわなを震わせている。

店主は服に汚れがないかを調べていたりして、未だにシスの表情に気付いていない。気づいた瞬間が最後だろう……俺も怖いから、放置する以外の方法を探せていない。


俺にはもう止められないため傍観していると、シャツの点検を終えた店主がもう一言くらい何か言ってやろうと思ったのだろうか、シスに近づいたところでようやく激怒の表情に気付いたらしく、立ち止まると今度は店主が震えだした。こちらは、怒りで震えているのではなく恐怖で震えている。

絶対的強者の怒りを向けられた弱者の姿がそこにあった。


「そこの俗物。

 この方は私が仕える貴族様だ。

 今は身なりがあまりよくないので、最初の無礼な態度は

 許してやったが今回はそうはいかない!

 お前の罪を持って、そのふざけた目玉をくりぬき、

 歯を全て毟ってやろうか」


シスが店主の胸倉を掴む。その力は凄まじいもので、太った店主の体が持ち上がる。


「ひっ……ひぃぃっ……」


シスに胸倉を離された店主は尻から地面に落ちる。腰を抜かしたらしく床に尻もちをついたまま立ち上がれないでいた。歯をガチガチと打って恐怖で会話になりそうもない。

更にゆっくり歩いて近づくシスに対し、必死に床を蹴って逃げようとする店主。

最終的に店主の背中が壁に当たり、これ以上逃げる場所がなくなってしまった。店主は涙を流しており、いつ気絶してもおかしくないような状態だ。

流石にこれ以上は見ていられない。シスの肩に手を置いて、やめるように伝えるとシスは店主への睨みをやめることなく、チッと舌打ちして仕方なく離れた。

とてもメイドのやることとは思えない。天使のような悪魔のメイドだ。メイドの姿をした化け物と言っても過言ではないのだから仕方ないかもしれない。


俺は店主の前に屈みこむと、店主の肩に手を置いた。


「ひぃぃっ」


ここまで来ると俺さえ怖いようで、店主は涙を流しながらなんとか逃れようとひたすら床を蹴っている。


「店主、俺はそこまで気にしてないけれど、

 ぞんざいな扱いを受けたことをうちのメイドが

 腹立てている。

 これは、店をやるものとしてダメなことじゃないかな。

 何かしら誠意を見せるべきだと思うんだ」


諭すように伝えると、店主が壊れたように頷きを繰り返す。

それを見て、シスの方を振り返るとシスも仕方ないと言った風に口を開いた。


「では店主。

 面で出来た布を白と黒1つずつ売りなさい。

 もちろん誠意を見せてもらいます。

 それと、サービスで裁縫用の道具も一式融通しなさい。

 全部で銀貨1枚でいいですね?」


店主はいまだ壊れたように頷きを繰り返している。

動く気配がないから仕方なく奥に向かって声をかけて、小間使いを呼び買ったものを袋に入れさせる。

小間使いは店主の姿に驚くが、自身も同じような姿になりたくなかったようで仕方なくシスの言に従っていた。

袋に入れられた物を受け取り、銀貨一枚を支払うと二人で店から出た。

店から出た瞬間、シスの顔が笑顔に変わる。

予定より安く買い物が仕上がったのでご満悦のようだ。




この店は普段からこう言った客をぞんざいに扱うことが多かったようで、製品の品質は良かったが評判は悪かった。

これ以降、このように脚に悪い態度をするとメイドの服を着た悪魔が来てこらしめられるぞ。と言う言い伝えが伝わった。




「あの店主に騎士団の噂を聞けたら良かったんだけど、

 あの調子では聞いてもまともな返事は来なさそうだね」


シスにそう話しかけると、シスはあんな者に聞くことなどありません。とぷいっと顔を俺から背ける。

可愛い仕草をしたり、恐怖の大王のような表情をしたりと忙しいシスである。


次に情報収集をするため、まずは冒険者ギルドへ向かった。

冒険者ギルドは、騎士が訪村したときのような賑わいは見せてはいなかった。

シスには先ほどのような騒ぎは起こしてほしくないため、ギルドの外で待たせて俺一人でギルドの建物に入る。

ギルド内で、前に話を聞かせてもらった職員がいないかなと探していると、


「こんにちは。今回もまたギルドに何か御用でしょうか」


声をかけられた方を向くと、そこにはちょうど良く先日の職員さんがいた。

旅人がギルドに情報を聞きに来たのが珍しくて覚えてくれたのだろうか。

いきなり騎士の話に入るのはよくないと思いまずは雑談から入る。


「こんにちは。

 ダンジョンの調査のために聖騎士が村に来たというので、

 結果がどうなったのか教えてもらえないかと思って

 来てみたんだけど」


ギルド職員はこちらをじっと見つめてから、目を閉じて一呼吸おいてからにっこりして返答をくれた。


「ダンジョンの調査は無事終わりました。

 モンスターの強さも確認できたので、今後は

 中級冒険者が村に滞在するようになりますね。

 村としても安心です」


数多くの人に同じことを聞かれたんだと思う。話し方が淡々としていた。

それに対してふぅんと言った具合に相槌を打ち、さらに質問をする。


「ダンジョンの調査をした騎士様たちはもう帰られました?

 一目でも見たかったんだけど、タイミングが悪かったみたいで。

 まだ滞在されているのなら、一目見てみたいんだけど」


次の質問に職員は少し目を訝しげに細める。騎士の情報を聞いて本当にただ見たいだけなのか、何か悪さをしようとしているのかを見抜こうとしているようだ。


「聖騎士様や騎士様の滞在場所を教えることはできません。

 滞在予定などであれば、少しくらいは話すことが

 できるかもしれません」


「そっか。流石に機密情報に当たるのかな?

 変なことを聞いちゃったみたいですいません。

 無理ない程度に教えてもらえたらいいんだけど……」


申し訳なさそうな顔をすると、職員が俺に笑顔を向けてくれた。


「わかりました。

 聖騎士様、騎士様はまだ当分の間は村にいるようです。

 村の近くにできたダンジョンの調査は終わったので

 帰られると思ったのですが、まだ気になることが

 あるようで」


聖騎士、騎士達がまだ村にいると言う情報を聞けた。正直、別に騎士たちに会いたいわけではないのでこの情報で満足である。

まだ気になることがあると言うことだから、またダンジョンに訪れる可能性がある。それだけで十分だった。

後は、ダンジョンに訪れなければならないようなイベントを起こすだけである。


「ありがとう、村を散策してみるよ。

 もしかしたら見かけることができるかもしれないからね」


心にもないことを言ってからギルドを出る。

これ以上は情報を手に入れても意味ないかもしれないが、追加で新しい情報が手に入るかもしれないため、俺は居酒屋へも向かうことにした。


布製品の店はちゃっちゃと終わらせるつもりだったのに、自分で書いていて楽しくなっちゃってこんなに長く……。


反省はしていません。

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