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1章 36話 メイドの役目

前話が36話になってましたので、35話に書き直してます・・すいません。


居酒屋へ行こうとするとシスからストップが入った。どうやら先に俺の靴を新調したいらしく、革製品の店に行こうと言うことだった。


「いらっしゃい。製品は店に出ている限りだよ。

 何か聞きたいことがあったら声をかけてくれ」


俺のような見た目の者にも微笑んでそう言ってくれる店主はとても好感が持てた。綿製品との店とは大違いで、心なしかシスの顔も満足そうに見える。

製品を見て回ると、革によって多少の金額の違いはあるものの革靴の既製品は銅貨50枚が相場らしかった。

靴については流石に革から作るとはシスは言えないようで、既製品の靴だけをひたすら見ていた。その目は真剣で、視線が靴に穴を空けてしまうようだ。


靴の選定はシスに任せて、俺は他の製品を見てまわることにした。店内を歩いて回っていると、製品が置かれていない場所に1足だけ靴が置かれているのを見つけた。


「店主、この靴はどうしてこんな場所に置いてあるんだい?」


店主が俺の指さした方を向く。


「あっちゃー。

 ここに置きっぱなしになってたのか……。

 お客さんすいません。それは売り物にならない奴で、

 倉庫に戻そうと思ってたやつですわ」


そう言って店主が靴に近寄る。シスが先ほどまで見ていた靴を置いて、その靴を見ながら言う。


「これは……店主、この靴を購入することはできますか?」


「お客さん、これは売り物にできないやつですよ?

 そんなに買いたいですか?」


どうやらシスはこの靴を良い物だと判断したらしい。

よく見れば他の靴とは意匠が異なっていて地味であるが、作りがとてもしっかりしているのがわかる。


「できればお願いしたいのですが」


シスのお勧めでもあるので、俺も店主に頼むことにした。


「そうですねえ……。

 では、銅貨20枚ってところでどうでしょ?

 実は、これうちの弟子が作ったもんで、

 地味すぎて意匠の勉強をさせ始めたところなんですわ」


弟子が作ったと言う靴は、店主が作ったであろう物より品質は上だった。

そのうち靴の名匠として有名になることだろうと思う。


意匠の方はシスがなんとかできるようで、靴と一緒に色合いが同じ革の端切れを買っていた。端切れはサービスしてくれたので支払いはたった銅貨20枚で済んだ。

支払いを終えて店を出るとシスから提案があった。


「サトル様、今日は思ったより遅くなりそうなので

 宿屋を手配しませんか?

 幸い、買い物も大分安く上がったので、資金は

 十分ありますし」


当初あった銀貨2枚は、現在残り銅貨80となっている。

銅貨80枚あれば、宿をとった上で居酒屋で飲んでもこと足りる。


「そうだな。じゃあ、いつも使っている宿屋に行こう」


俺を先頭にして宿屋に向かって歩き出す。

辺りはまだ暗くなっておらず、居酒屋が空くには少しだけ早い。時間を潰す方法が村の散策くらいしかなかったので、丁度よかった。


宿屋に着いてシスを伴って中に入ると、ヒューッと口笛を鳴らす音がした。

口笛の主はカウンターの前にいる店主である。


「下品だよ」


「悪いな。美人な女を連れて来たやつには

 毎回こうやるのがこの宿屋の習わしでね」


そんなわけあるかと思いつつ部屋2つの予約をする。

それを聞いた店主から、


「1部屋にベッド2つの部屋もあるぜ。

 なんなら、1部屋で……」


「1部屋にベッド2つの部屋で!」


店主が言いかけている途中でシスが横から入ってきた。

まさかシスがそのようなことを言うとは思わなかったので俺と店主の二人は茫然としてしまう。


「シス?」


「1部屋にベッド2つの部屋です」


なぜ?と言う顔でシスの名前を呼んだ俺に、シスがもう一度同じことを言ってきた。

相手に説明を伝えるのが下手な時がたまにあるシス。察しろと言うことなのだろうか。


「わかった。1部屋にベッド2つで頼むよ」


店主はからかったことが失敗だったかのような微妙そうな顔をして鍵を出した。


「銅貨10枚だよ。部屋は3階に上がって左側だ」


鞄から銅貨10枚を取り出し店主のカギと交換する。

シスに手渡すと、俺の前に立って部屋に向かって移動を始めた。そんなに早く部屋に行きたいのだろうか。

シスの後をついていき、店主に言われた3階の左側にある部屋に入る。

部屋は1人の時の約倍の広さで、4畳ほどの部屋の端にベッドが1つずつ置かれていた。その間にテーブルとイスが置いてあった。

シスは買ってきた物をテーブルの上に置いた。


「サトル様、私は自分の欲望のためだけに同室を

 進めたわけではありません」


こいつ、意味ありげな感じだった割に欲望が入ってたことを急に認めたぞ……。


「例えば冒険者の場合、宿屋は男女でも同室なのが基本です。

 この宿はまだ治安がいいようですが、治安の悪い村の場合

 盗みに入られる可能性もあります。

 今回私は用事がありますので、部屋に残ります。

 サトル様お一人にお任せして申し訳ありませんが、居酒屋での

 情報収集をお願いします」


言われてみればシスの言うことはもっともだ。この村に着て門兵からここを案内された時に、この宿屋は治安がいいと言う話があったが、他の宿屋の治安については微妙であると聞いていた。

きっとシスは他の村などに行った時のことを気にして、敢えて教えてくれたのだろう。口には出さずに心の中でシスに感謝した。

シスは居酒屋に絶対ついてくると思っていたので、部屋に残ると聞いて少しだけ驚いた。でも、居酒屋に行けば酌婦が来るだろうこともあって、非常に助かる提案だった。

何かあったら使え、とシスに銅貨を10枚渡しておいた。


居酒屋に行くために部屋のドアを開ける。ドアを閉める前に振り返ると、シスが俺を送り出すためにこちらを見ていた。


「サトル様、行ってらっしゃいませ」


深くおじぎをするシスの所作はとても美しい。俺は正直、メイドと言うものに幻想を抱いている。だから、シスのメイドらしいところだけは本当に素晴らしいのにな……と思いつつ、行ってくると声を掛けて宿を出た。




シスは窓からサトルが歩いていく姿を見つめていたが、サトルが角を曲がり姿見えなくなったので服飾店で購入した裁縫道具を取り出す。

シスが部屋でやることと言うのは、サトルの服や靴を仕上げることだ。

今日だけで2回も主人をバカにされたのだ。

バカにされた理由は当然メイドである自分の責任だとシスは思っている。

今日買った綿の布と革の靴と端切れを準備し、裁縫を始めた。

こうしてシスの中での戦闘が始まった。


話が大分逸れていってしまってますが、ちゃんとメインのストーリーには戻りますのでご安心を。

(早くダンジョン作成まで行かねば)


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