1章 14話 ダンジョン強化
ある業務に精通した、Aと言う人がいるとします。
Aの上司であるBはAの業務にはほとんど知識がなく、またアドバイスできることもほとんどありません。
この状態であれば基本的にAに全般的に委任する。
当然のことですよね。
『色々言いましたけど、サトル様はまだ魔力を使うことは
できないでしょう。魔法が使える程魔力を溜まりましたら
こちらから魔法の説明を致します」
つまるところ、今は気にするなと言うことだ。相変わらず向こうから話しかけてきた時はそっけない。
シスとは一週間にも満たない程度の関係だが、共に過ごすことで少しはわかってきた。
シスは無駄に嘘をつかない。今は魔法のことは忘れてタイミングは任せた方が良いのだろう。
気を取り直してさあこれからダンジョンを強化させよう!と思ったのが、気づいたことがあった。
ラットの数が多い気がする。ずっとラットを放置してたのもあって増え続けたのだろう。そう言えば、ダンジョンに訪れた冒険者はゴブリンは倒していたが、ラットは一度も倒していなかった。
ラットをエサとするゴブリンの召喚のため、ゴブリンのリストを見るとレベル2にあがったこともあってか召喚できるモンスターの種類が増えていた。ゴブリン族のランサー,シャーマン,ロードが増えていた。
ランサーは10ポイント,シャーマンは20ポイント,ロードはなんと100ポイントもする。更にロードの横には小ボスと書いてある。
ランサー,シャーマン,ロード,それぞれの詳細を見ると、
~ゴブリンランサー~
訓練によって槍の戦闘技術を得たゴブリン。
ゴブリンロードがいると統制された動きをとることができるようになる。
知能はそれほど高くなく、ゴブリンロードがいなければ通常のゴブリンとさほど変わらない。
~ゴブリンシャーマン~
ゴブリンの中でも魔素の影響を受け、10級とファイアボールの魔法を使えるようになったゴブリン。
知能は少しだけ高めで、少しだけ気の利いた行動が可能である。
ゴブリンロードがいるとランサーとの連携が可能になる。
~ゴブリンロード~ 小ボス
ゴブリンたちを統べる長。他のゴブリンを統率する関係上知能が高く、言葉を発してダンジョンマスターとの意思疎通が可能である。
ダンジョン内に召喚すれば、ゴブリン族のことに関してはある程度のことを任せることができる。
ゴブリンロードはロードと名がつくだけあって、ゴブリン族の統制をとることができ、また連携することができるらしい。
また、ゴブリンロードに関しては「ダンジョンマスターとの意思疎通が可能」と書いてある。これが非常に気になる。
ただゴブリンロードの召喚は100ポイント必要だったので今はまだ召喚することができなさそうだ。
現在の所持ポイントは85ポイントと表示されている。
昨日冒険者を撃退した時点で35ポイントだった。1日後の今が85ポイントと言うことは、レベルが2に上がったことで補充されるポイントが50になったのだろう。明日になれば更に50ポイント手に入るのでゴブリンロードの召喚が可能であろう。これは少し想定外の出来事だった。
明日ゴブリンロードを召喚するために、50ポイント残して今日は35ポイントだけ使うか。
ゴブリンロードは自分と意思疎通ができると言うのだから、ダンジョン内のゴブリンのことは任せてみようと思う。
一旦召喚は明日にまわし、レベル2になってまだ判明してない新しくできるようになったことを調べるが、特にこれと言って何かがあるわけではなかった。レベル3以降に随時更新されていくだろうから、それに期待だ。
とりあえず、現在召喚できるモンスターのリストを改めて確認したり、アイテムの内容を見るなどして過ごした。
夜には、新しく作れるようになったライ麦パンと葡萄酒合計3ポイントを作成し口に入れる。
……クッキーより美味い! だが、村で食べたパンとスープのセットのほうが美味しさでは上だ。
寝る前に、今となっては恒例となってしまった宝箱から中間マージンを抜く作業をする。
今回は5枚しかなかった。
どうせ明日またリポップするので5枚全部持っていく。
ダンジョンマスターの部屋に戻り、麻の鞄に銅貨を詰め込むとそのままベッドに潜りこんで寝た。
ベッドも宿屋の方が良かったと改めて思った。
翌日真っ先にライ麦パンと水を作成する。所持ポイントが135だったので作成によってポイントが133に減る。
ライ麦パンを口に頬張るとしっかりと味わいがあり、ようやくクッキーを卒業できたと言う喜びを感じれた。
早くレベル3に上がって、もっと美味しいものを食べれるようになりたい……!
食事を終え、1-B部屋に移動し早速ゴブリンロードを召喚する。
召喚からゴブリンロードを選ぶと目の前にいつもより大きな召喚の光が発生した。
その召喚の光から、ゴブリンロードが出てくる。
汚れて毛羽だった麻の服、その上に狼の毛皮でできた長い丈のボレロのようなものを纏い、背中にショートソードのような武器をベルトで下げている。とても精悍そうな顔つきをしていた。ただのゴブリンに比べて顔つきが人間に近い。
「よろしく、マスター。俺がゴブリンロードだ」
ゴブリンロードは俺の方を向いて、特に敬ったりするでもなくそう言った。と言うか、正直軽い……。
だがその態度はむしろ好感触だった。そもそも、この外見のゴブリンがリイムのような貴族然とした態度をとってきても困るわけで……。
ここに村から派遣された冒険者が訪れることと、そのためにダンジョンを強化しなければならない旨と
ポイントがいくらか余っていて相談してポイントを使おうとしてることを話した。
「マスター、あんた賢いな。ちゃんと自分ってものをわかってる。
ゴブリンのことと、ゴブリンの戦い方については
俺が一番わかっているんだ。下手に手を出して変な編成になるより、
何もしないで俺に任してくれたほうが何百倍もいってもんだ」
そう言うとゴブリンロードはガハハと笑った。俺も釣られて少しだけ笑った。
「明後日までにダンジョンを強化をすればいいわけだな?
任せろ!
下級冒険者くらい俺が追っ払ってやるぜ」
ゴブリンロードの姿はとても頼りになりそうに見えた。
現在サトルの所持金銅貨8枚
所持ポイント 30




