1章 15話 冒険者ギルドの思惑
実はダークな話が好きです。
でも、書くのが・・と言うか考えるのが苦手で、それでもなんとか絞って考えたのが今回の回です。
楽しんでもらえたら嬉しいです。
ゴブリンロードから、ゴブリン族が戦い易いダンジョン構築案を知らされた。
「まず俺の要望を伝えるぜ。
やって欲しいことは、ダンジョンの拡張と
戦うことのできるゴブリンの召喚だ。
具体的には、まず部屋2つを追加で作って欲しい。
部屋は直列に繋げて、そこに繋がる通路は
当然1本のみだ。奥の部屋に繋がる通路が2本あると、
冒険者が多数いたときに2か所からなだれ込んで
来るようになって守りが大変だからな。
次に戦闘可能なゴブリンだが、多いに越したことはない。
ただ、旦那は俺を召喚してしまってポイントも
今は少ないだろうから、当面はランサー4匹と
シャーマンを1匹を召喚することを考えてくれ。
後、悪いがゴブリンも召喚できる範囲で数匹頼む」
「わかった。ところで、戦闘には役に立たなそうだが
通常のゴブリンも必要になるのか?人海戦術か?」
通常のゴブリンも必要だと言う。ゴブリンなんて召喚しても無手だし戦闘には役立たなそうだけど……。
「人間にはわからないかもしれないが、
俺はこれでも人間で言うところの貴族だ。
身の周りの世話をさせる奴が欲しい。
ゴブリン族にも社会ってもんがあるんだぜ?」
ゴブリン族の社会について少しだけ教えてもらったのだが、やはり種族差があると全て理解するのは難しかった。だが、俺はゴブリンロードに委任すると決めていたから素直に言われた通りにしようと思った。
とりあえず、現状のポイントで今日やれることをロードと話合った結果、部屋の作成は明日以降に後回し。ゴブリンとランサーの召喚を行うことにした。
召喚からランサー2匹とゴブリン2匹を選び召喚を行う。計26ポイントだ。
召喚の光から槍をもったランサーが現れる。ランサーは少しボロボロのチュニックのような服を着て、背丈ほどもある槍を両手に構えている。近くにいるゴブリンより頭1つ分は大きかった。大体130cmくらいだろうか。ちなみに横にいるロードはサトルと同じくらいある。大体170cmくらい。もしロードと1:1で戦うことになれば、冒険者は自身と同じ大きさの敵と戦わなければならないのであり、とても危険だろう。
ランサーとゴブリンはロードに近づくと、何かを話し始めた。
話が終わるとゴブリン1匹が水辺に行き、もう1匹はダンジョン内を移動し始める。何をするのか見ていると、水辺に移動した1匹はゴブリンズマッシュを集めていた。もう1匹はラットを追いかけている。ロードに食物の確保を支持されたのだろう。
ランサー2匹はロードの少し後ろを左右に分かれて立つ。それだけでロードに少し威厳が出るのを感じた。
「ちょっとダンジョン内を見て回ってくるぜ」
ロードがランサーを連れて1-Aの部屋を歩き出した。
水辺や湿った土のエリア、ゴブリンズマッシュやその数まで手を抜かずにしっかりと観察している。
そんな姿を眺めて感心する俺にシスが声をかけてきた。
『サトル様……ゴブリンロードと親し気ですね……。
私はもう用済みでしょうか……』
声の調子はトーンが下がっていて、明らかに嫉妬が見え隠れしている。
声しか聞こえないが、顔が見えたらさぞひどい顔をしていることだろう。
「いや……お前はダンジョン作成のサポートだろ。
戦闘はゴブリンロードに任せるんだから、
そんな羨ましそうな声で話しかけてくるなよ」
シスは悔しそうに「くっ」と言っていたので、悔しそうに歯噛みする姿がなんとなく思い浮かべられた。
『(私だってサトル様がレベル5になれば……)』
シスがぼそぼそと小さい声で何か言っているが、何を言っているのかまでは聞き取れなかった。
シスを無視してロードの姿を見守る。俺が今ダンジョン内でができることは何もない。だったら、今このダンジョンのためにもっとも役立てることは情報収集だ。
ダンジョンマスターの部屋に戻り麻の鞄をとってくる。ついでに、宝箱から銅貨8枚と今回はポーションも取る。
「ダンジョン内にいてもできることがないから
村にいって情報収集をして来る。
戻ってくるのは明日の朝だ。
今のうちに、何か言うことはあるか?」
ロードは首を横に振ってからいい情報期待してますぜと俺を見送ってくれた。
シスからは、私は?私は?みたいな声が聞こえたが、敢えてスルーした。と言うか、シスってこんなキャラだったっけか……と思う。
その頃村の冒険者ギルドでは、近くに発見されたダンジョンの調査を依頼する冒険者を選定するための会議が行われていた。
「誰かいいアイデアがある者はいないのか!」
議長として参加していた村のギルドマスターは、1時間が経過しても前向きな案が出ずにいるこの状態に苛立っていた。
実は案が出ないのも当然のことで、ダンジョンの調査依頼を出す冒険者は、ダンジョンのレベルより上のランクと言うのがギルドで奨励されている。
ダンジョンのレベルより上のランクの冒険者を選定しない場合は、推薦者がそのダンジョン調査の責任を取ることになっているのだ。
今回見つかったダンジョンは、見習いながらもしっかり訓練していた冒険者が撃退されたということで、ランクは下級扱いになっている。つまり、中級ランクの冒険者でないと適正な選定とは言えない。
しかし、現在この村には下級冒険者しかいない。
誰かが下級冒険者を推薦しなければならないが、責任をとるのがイヤで誰もが拒否して会議が進んでいないのだった。
「ギルドマスター、私に案があります」
一人の職員が立ち上がった。
赤色のボブカットの髪に、切れ長の目の女性。ギルドに訪れたサトルの相手をした職員だった。
「おお、君か。どんなことでもいい、言ってみなさい」
案と言う言葉に反応しギルドマスターが焦るようにして答えを求める。
「デールのパーティを調査として派遣してはどうでしょうか」
デールと言う名前が出て、会議室全体がざわめく。
「冒険者狩りのデールか……あやつらは素行が悪すぎる。
今まであやつらと対立したパーティがいくつか
失踪しているのだ。
そんな素行な奴らを態々推薦する理由はなんだね?」
「彼らのは素行と言うレベルではないでしょう。
証明できないだけで殺人を犯しているのは確実です。
彼らを推薦する理由は1つです。
もしそのダンジョンで何かがあって、戻らなかったと
しても我々が何も困らないからです」
それを聞いたギルドマスターは慌てて立ち上がった。
椅子が後ろに倒れたため、ゴトッと言う音が室内に響く。
「君! それは、冒険者を見捨てると言うことか!」
「落ち着いて下さい、ギルドマスター。
彼らは下級に収まっていますが、中級の下位クラスの実力は
持ち合わせています。
行いさえよければ、とっくに中級冒険者として認められて
いるんです。世間体は守ることができます。
そして、彼らに殺されたかもしれない遺族から、真相の調査を
依頼されているのを忘れましたか?
出された調査依頼が何件未解決のままになっていると思うんです?」
「それは確かにある……その前に、今回の調査依頼を奴らにするとして、
素直に依頼を受けるだろうか」
「それについても考えがあります。もし調査がうまく行けば、
銀貨を与え中級冒険者として認めることにしましょう」
「気は確かか!やつらを中級に上げるなど……!」
ギルド職員はため息をついて言った。
「仕方ないことと思います。しかし、私は思うのです。
彼らの依頼の結果からして、彼らには調査依頼は向いていない。
こちらが納得の行く調査結果を持ってこれることは
ないと思っています。ですから、調査依頼は未達成とするのです。
それだけでは、彼らは納得をしないと思いますので、謝礼だけは
後程銀貨で渡しましょう」
ギルドマスターはそこまで聞くと観念したように項垂れる。
「そうか、しかし……いや、もう何も言うまい。
もしかしたら、もうそのような手段しか残されて
いないのかもしれないな。
最初から選択肢など無かったのだ。これが最適解だった。
そうなると、彼らだけに調査させるわけにはいかない。
道案内と監視も兼ねてギルドから一人同行の者を
出さなければならないぞ」
デールパーティを推薦したギルド職員が、ゆっくり手を挙げた。
「……私が行きます。この意見を出したのは私です。
慣習に倣って、推薦者である私が彼らに同行して
結末を見守ってきます」
赤髪の職員が喋り終えると会議室内のざわめきは収まり、申し訳なさそうな顔をしてギルドマスターが言う。
「本当にいいのだな?本来ならば、この決断を
しなければならないのはギルドマスターである
わしであるはずなのに」
「覚悟しています。ただ、もし今回の件が終わって
もし私が無事に戻って来れた時には、対価を
約束頂けますか?」
「わかった。あ奴らとの同行は死さえ覚悟しないと
いけないのだ。それくらいは認める」
とてもギルド外の人間には話すことができない会議が終わった。
ダンジョンに訪れる冒険者が、このようにして派遣されることになるとはサトルは知らず、情報収集のために村に向かっている最中だった。
次回冒険者とゴブリンロードの戦いになる、予定です。
今までもちょくちょく入れる予定のなかった話が入り、
予定が狂っていますので、あくまで予定です。




