2.頭を打ってこんにちは☆
改めまして。パルミジャーノ・レッジャーノです。
本日から、私が仕えることになったのはブリアナ・ミシガン公爵令嬢です。
ビックリです。
私の転移先が、公爵家だなんて。
下手したら、殺されてもおかしくないですよ!
あの自称神、私がこの世界で死んだ後に必ず合って絶対に引きずり回して殺す。
その時こそ、愛用の釘バットが唸る時!!!
あの初対面の時に、ものすごく理解があるなとは思ったのですがこの世界では異世界の巫女が召還される時に起こる『不幸な事故(私の巻き込まれ召還)』は、ごく普通にあることである程度の身分のあるお貴族様が独自の判断で異世界人を保護するのは当たり前のことだそうです。
自分の家で保護するのが無理なら、神殿に届け出るのだとか。
私の場合は、公爵家の娘の護衛を兼ねた専属侍女。
そのための試験は、愛用の釘バットと共にあっさりパスしました。
さすがは、釘バットですね。
旦那様の一存だけでは、奥様が納得しなかったので試験を受けたのですが私の試験を見た奥様の顔色がなぜか優れませんでした。
ブリアナ様がある日、敷地内の森の散策をしたいと言ったので私も付き添った。
そこに、異世界ファンタジーのモンスターの定番ゴブリンが現れた。
私が釘バットを取り出して構えると、脱兎のごとくゴブリンは全力で逃げ去った。
なぜ...?
その後は、見晴らしのよいところで普通にピクニックをしました。
ブリアナ様は、現在ツァオバー学園に通って寮生活をしております。
いわゆる魔力を持つ子どもが通う学校ですね。
私は、自称神の恩恵のほとんどを拒否しいたので魔力はありません。
あっても、ここが魔法が存在する世界だとあまり価値を感じませんですしね。
私には、愛用の釘バットがあれば大丈夫♪
「パルミジャーノ、馬鹿王子が来たら、その武器で退治してくれないかしら?」
「...考えておきます」
そんな話をしている時に、階段の一番上からキルシェ穣が落ちてきました。
慌てて、重力軽減の魔法を展開させてキルシェ穣の床に落ちる衝撃を少なくしようとするブリアナ様。
しかし、残念ながら頭をぶつけることは避けられませんでした。
見たところ、キルシェ穣は軽傷なのでよしとしましょう。
だが、私は見てしまった。
キルシェ穣が落ちる瞬間、側にいたのがキルシェ穣に言い寄っている一人でブリアナ様の婚約者である馬鹿王子だということを。
キルシェ穣が、目覚めたと言うことで保健室までブリアナ様とお見舞いがてら行くことにしました。
保健室に入ると、キルシェ穣は私たちを見て
「ブリアナ様が、悪役令嬢―――っ!?」
「なんですの!?」
何を言われたのか分からず、困惑するブリアナ様。
「前世の電波を受信しちゃったんですね。おめでとうございます」
なんだ、流行のアレかと思って言葉にする私。
「えぇっ!? パルミジャーノって、日本人なの。通りで、黒目黒髪なわけね」
「はい。そうです。少し前にウワサになった『異世界の巫女』の召還に巻き込まれたのが私です」
「そうなんだ。パルミジャーノは、乙女ゲームってしたことある?」
「全年齢のを一作だけですね。ドハマリしましたが」
「ここってね。私の前世でした乙女ゲーム『魔法だけで、恋が叶うとは限らない』の世界なの。でも、パルミジャーノ・レッジャーノという脇役はいなかったわね」
「現実ですからね」
「あぁ、現実ね」
そこに割り込む声が。
「キルシェ様。わ、私の侍女に向かって『脇役』だなんて失礼ですわよ!
それに、パルミジャーノ。『脇役』とか言われて納得しない!」
「申し訳ありません。ブリアナ様。ですが、キルシェ穣はたった今、前世の電波を受信されましたので」
「ごめんなさい。ブリアナ様。前世の電波が、そう言えって」
「前世の電波って、なんですの?」
混乱するブリアナ様をおいといて、キルシェ穣がその乙女ゲームについて教えてくれました。
『魔法だけで、恋が叶うとは限らない』と言う乙女ゲームは、二人の美少女が主人公。
一人は、この世界の聖女。(キルシェ穣のことです)
もう一人は、私をこの世界の召喚に巻き込みやがった八方美人な美少女・明石優理です。
ブリアナ様は、攻略対象の内の一人ヴァーンジン・カスピカイの婚約者で攻略対象を落とす際に立ちふさがる悪役令嬢なのだとか。
もちろん、他にも攻略対象がいます。
とにかく、重要なのはこの乙女ゲームが『全年齢対象』だと言うことです。
前世の記憶を有するキルシェ穣にとっては、倫理観的に全年齢対象というのは重要なのでしょう。
ブリアナ様は分かっておられないので、ある意味不都合な事実であるこのことを私は黙っていようと思います。
この世界が乙女ゲームが舞台というのは驚きましたけれど、あの八方美人な美少女・明石優理にとっては、ボーナスステージのような気がしました。
彼女の攻略予定の攻略対象たちは、全員婚約者持ちだけど。