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第21回SFサバイバルゲーム  作者: 野川太郎
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痛い二人組

 数十分前、坂田はもうすぐ敵基地であるC地区のK公園に迫っていた。隣りには戸宮を連れてながら、歩いていた。

 大学にいたルーズドッグをすべて片付け、その活躍ぶりと、リーダーシップを武器に一団を引き連れて坂田は歩いていた。

 さすがは俺だ、俺が一番強い。俺がいればルーズドッグなど簡単に倒せる。そうだ、この活躍をあのいばり腐った女に連絡してやるか。

 坂田は携帯電話を取り出し、他の生徒から教えてもらった鮎喰のアドレス帳をクリックして電話をかけた。

「もしもし、誰?」

「同じクラスの坂田だけど、大学の敵を一掃したんで、もうすぐC地区の公園に向かうんで連絡した」

 坂田は得意げに話した。

「それはよかったけど、負け犬たちを撃退するのが少し遅いんじゃないの。ま、あんまり期待してなかったにしては頑張ったと思うけど。でも、気をつけなさい。中途半端な攻撃をして敵リーダーを逃がさないように。それと、馴れ馴れしく私に電話しないで。きもいから。それじゃあ」

 そう言って、鮎喰は一方的に電話を切ってしまった。

 あのくそ女、何様のつもりだ。俺が敵の親玉を倒して、あいつに自慢してやる。

 坂田は携帯電話をしまい、皆に命令した。

「おい、お前ら、これから一気にC地区のK公園を攻めるから俺について来い」

 坂田は大きな声を出して皆にそれをいい終わると、走り出した。

 膳は急げだ。誰かに手柄を取られたくはないから。それにしても、先輩が一人もいなくて良かったぜ。先輩ってのは調子に乗った後輩をぼこりたくなるもんだけど、ここには同級生と後輩しかいない。だから、命令しやすい。

 坂田が走る姿を見て、戸宮や他の仲間たちも走り出した。走っている途中に敵がいたが大軍の前に圧倒され、倒されていった。そして、C地区の公園前にたどり着いたのだ。

 芝生での戦いでは敵と味方が混ざり合っている感じではあったが、一斉に攻撃を仕掛けたので、味方を助けることができた。

 近くに放送部の中村が俺の勇姿を撮影していたので、テンションが高まった。

 これで、敵の大将を俺が倒せば、文化祭の時に上映されるゲームの映像で俺のかっこいい所が写され、一躍人気者になる。

 K公園の境界線付近で、膠着状態が続いていた。

 俺より先に来ていた連中であるが、手こずっているようだ。

「お前ら、何あんなやつらに手こずってんだよ」

 坂田は近くにいた一年生らしき生徒たちに言った。

「戸宮、回り込むぞ。着いて来い」

 そう言って、戸宮を引き連れて左に回りこんだ。しかし、K公園は高い塀に囲まれていたのでなっていたのでなかなかいい入り口が見つからない。

「前に敵がいるぞ」

 戸宮が言ったので、坂田は前に顔を向きなおした。

 敵はシールドと長く光った板状のレーザーハンドを持った生徒とレーザーガンを持った生徒の二人である。向こうもこちらに気がついたので攻撃してきた。

 坂田と戸宮はそれを交わして、互いに離れた。坂田が銃の引き金を引いたが、どちらにも当たらない。

 くそー外した

 坂田は体勢を低くして、再び攻撃したがまた外した。

 何で当たらない。確かに距離はあるが、当たるはずだ。ちきしょう

 坂田がイラついている間に、戸宮がレーザー銃を持った生徒を倒した。

「当たった、やったー」

 それを見た坂田はとても悔しかった。

 何であいつのが当たって俺の攻撃が当たらない。銃が壊れてるのか

 そんなことを考えている間にもシールドを盾にして体を守っているもう一人の敵生徒が迫ってきていた。

「この、くそやろう」

 坂田は自分への苛立ちを敵にぶつける形で叫び、銃口を敵に向けて引き金を引いた。

 しかし、肩幅全体に広がっているシールドが邪魔で攻撃が生徒の体に当たらない。

 坂田はもう一度攻撃をしたが、それも阻まれた。

 何て邪魔な武器なんだ。待て、敵の足元はがら空きだから、そこを狙えばいいじゃないか。よし。

 坂田は狙いを足に向けたが、先に敵がレーザーハンドで坂田を切りつけてきた。坂田は間一髪で後ろに下がってそれを回避したが、敵はシールドを盾にしながら攻撃を繰り返してきた。

「戸宮、手伝え」

 坂田が戸宮に顔を向けると、戸宮は他の生徒と交戦中であった。

「くそー、ちきしょう」

 坂田は、レーザー光線を連射したが、いすれもシールドに阻まれてしまい、意味がなかった。

 何で俺がこんなやつに苦戦してるんだ。こんな偏差値の低いやつに負けたくない。やべー、負けそうだ。嫌だそんなこと。絶対にあるもんか

 坂田は後ろに下がりながらも敵の攻撃を交わしながら、銃の引き金を引いていた。坂田は、この戦闘が放送部の中村に撮影されていることなど知る由もなかった。

 すると、坂田が足を滑らせて、腰を下ろしてしまった。けれども、坂田は引き金を引き続けたが、敵の生徒に当たることはなく、レーザー光線を出すまでのタイムラグがある間に倒されてしまう。

 俺が負ける。今まで、どんなことがあっても、負けることはなかった。一番にはなれなくても、絶対にビリにもならなかったし、対戦のテレビゲームだって負けたことはない。

 敵の生徒がレーザーハンドを突き刺そうと、右手を前に突き出したその瞬間に、その生徒は消えてしまった。

 え、どうして、何で消えたの?

 坂田は戸宮を見た。しかし、彼が助けてくれたとしたら、あの唖然振りはなんだ。違う、戸宮じゃない。じゃあ誰が助けた?

 坂田は起き上がり、しっかり辺りを見渡すと、上田と竹井のグループがこちらに向かってきているのが分かった。

 もしかして、俺はあいつに助けられたのか。そんな、あんなやつに。くそー、あいつに助けられるぐらいなら戸宮に助けられた方がよっぽど良かったぜ。

 上田はチームの指揮を取りながら、坂田と戸宮の所まで来た。

「何、手こずってんだよ。坂田。マジダサいし」

 上田の調子に乗った態度に坂田は怒りがこみ上げてきたが、必死になって抑えた。

「さあて、これだけ集まれば敵を倒せるでしょ」

 上田は自信満々に言った。


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