番外コラボ話 余所者、霊斗 ②
ついにコラボ話、完結! と言う大袈裟な事態になるほど長らくお待たせしてしまったような気がしますが別に待ってる人なんて居ないからそんな事は無かったと言っておこう。
腕の骨に亀裂を入れられた霊斗はもう防御が行えない状態になってしまい、これから来る想刃の攻撃を『全て避ける』しかない……
「さぁ、第2ラウンドと行こうぜ、博麗 霊斗」
鋭い目付きに僅かに緩んだ口元、それは明らかでは無いが、しかし微弱に伝わる嘲笑の笑みだ。と、想刃は服の右袖口から『何か』の柄を出し、左手で静かに引き抜く。
引き抜かれた『何か』の正体は『剣』、緑色の柄、湾曲した刃、刀身の長さ約1メートル。その『剣』の正体は遥か東方より伝来した片刃の剣、名をTALWARL────
扱いこそ難しいものの、その斬れ味と威力は非常に優秀で、特に想刃の手に掛かればターワルは『断』と『絶』を司るようになる。想刃はターワルの尖端を霊斗に向けると、右眼の『翠』をより一層強く光らせた。
「来い、あんたも剣を使うんだろう。格闘の次は剣で負かす。そしてあんたの命を『絶つ』。『あの時』と同じだと勘違いするなよ?」
刹那、霊斗は自身の背後から"尋常ならぬ殺気"を感知する。腰に納めていた愛剣『王武』を右手で引き抜きつつ背後に体を振ると、霊斗は目前の光景に目を見開いた。
自身の背後から感じた"尋常ならぬ殺気"の正体は、何と驚く事に想刃だったのだ。先ほどまで正面の数m先に立っていた彼が、いつの間にか自身の、霊斗の背後に居る。
驚いている霊斗など構い無しに想刃は右の逆手で持ったターワルを霊斗に向けて振るう。直後に我に返った霊斗は咄嗟に王武を自身の顔の横にまで持って来てターワルの刃を凌ぐ。
刃を凌いだ瞬間に衝撃を受けた王武が直ぐに軽くなった。変に思った霊斗が王武に目を移した直後、王武のある左側の反対方向から超高速の"煌めく刃"が押し迫る。
想刃が右の逆手で振るったターワルの一振り目はただ"防がせる"為に放った攻撃。素手勝負の時と同じように、単なる『振り』に過ぎない。二振り目こそが"本命"の攻撃にして殺人の一手。
反射的に目は追い付いた霊斗だが、肝心の身体が反射反応を出来ずに留まったままになってしまった。このままでは首を刎ねられてしまう、そう思った霊斗は反射反応を身体の『駆動』では無く能力の『発動』に回した。
「改造上昇1000倍!」
最速で能力が発動を行い、それにより無理矢理だが身体が駆動可能状態となり、霊斗はその場で跳躍をした。跳躍した高さは体を丁度膝の辺りに刃が来るくらいだが、このままでは折角能力を発動した意味が無い。
故に霊斗は全身を空中で上手く傾け、背中から腰までを刃が水平に過ぎて行くのを待ち、再び空中制御で横になった体を右に半回転させる。半回転の勢いを活かしたまま更に半回転を足し、続けて王武を袈裟に振るう。
すると袈裟に振るった筈の王武の軌道に想刃のターワルが瞬く間に阻み、攻撃を止める。想刃は右に振り切ったターワルの勢いに逆らうのでは無く、勢いを下方向に逸らし、且つ従って円を描くように剣を自身の右肩付近にまで動かしていたのだ。
すると霊斗は王武をターワルから離し、想刃も合わせるようにしてターワルを王武から離し、二人は少し離れて仁王立ち状態へ移行。そこから互いに睨み合いながら静かに円軌道を描くようにして横に歩く。
「剣でならあんたは結構やりあえる。それで良い、本気で来い、そうでなきゃ──あんたを潰す意味が無い」
「それはまた御挨拶な、頼まれたら断れないだけに──後でどうなっても知らないぞ?」
二人は刃の如く鋭い目付きで互いの右手に持つ剣を左一杯にまで引き、想刃は袈裟に、霊斗は右斜め上に振り上げる。だが、二人が剣を振ろうとした瞬間、既に剣の位置が振り終わりまで移動していた。
途端、剣が届きはしない筈の二人の間合いに風とも衝撃とも取れない何か『高密度の圧力』が発生した。二人の超神速の振り抜きによる真空の直撃も有るには有る筈だが、そんな一瞬の出来事では無い。
恐らく……いや、絶対『高密度の圧力』とは、達人の剣客ならば誰もが持ち得る『剣気』なるモノだ。『剣気』とは剣客が放つ『闘気』だが剣気とは本来全身から溢れ出る『気力』であって、飛ばしたりするモノでは無い。
だからこそでは無いが、この二人は達人以上の実力と技術を持っていると言う事になるのでは無いだろうか。いや、既に"達人"なんて表現すら生温いのかもしれない。
────否、温い、確実に断言出来る。
一撃、二人の放った『高密度の圧力』が触れ合った瞬間、接触した圧力同士が激しく火花を散らした。唯の『高密度の圧力』が、唯の『剣気』が、本物の剣の刃でも無いのに火花を散らす、地を削る、皮膚を切る。
大気を空間ごと捩じ切る程の斬撃、それ等が『あの一瞬』の内に放たれたとも言えるだろう、だが二人は離れた間合いでたった一回、たった一回だけ剣を振るったのみ。剣風が、剣圧が、剣気が巻き起こったのみ、だのにこの威力……
斬撃の次に、二人は剣を持つ構えを変えて振りかぶる。霊斗は精確さと一撃の威力に重点を置いた両手持ちに、逆に想刃は機動性と速攻に長けた逆手持ちに変えた。
先手は霊斗、王武を掴んだ両手を頭の頂点の位置まで上げ、真っ直ぐに振り下ろす。それに対して想刃は剣の軌跡が中間に達したタイミングで跳躍を行い、霊斗の頭の位置まで跳び上がって王武の振り下ろしを回避。
だが霊斗は振り下ろした直後に王武の刃先を上に返し、直ぐに振り上げの動作に移行した。しかし想刃が跳び上がった時に畳んでいた脚を伸ばして王武の刀身を踏み付け、振り上げを止めた直後に右手に持つターワルを順手に持ち替え、腰より後ろに、肩と同じ高さにまで引き込む。
ターワルを引き切った後に左手の平を前に出し、まるでビリヤードで球を突く時と同じ構えを王武の刀身に乗ったまま執る。瞬間、霊斗は"死の直感"を察知、咄嗟に顔を左に動かす。
察知した直感のまま顔を動かしたら、何故かさっきまで"目前に在った"ターワルの尖端が、いつの間にか自身の顔の右横を通過していたのだ。それだけでは無く、右頬と右肩がターワルに触れてさえいないのに表面が切れて血が出ている。
瞬間に突き出されたターワルにこれ程の斬れ味を持たせる程の使い手、しかも扱いにくい湾曲刃なら尚更想刃とは脅威なる人物である。湾曲型の刃は本来の剣や刀で"押して斬る"のでは無く、鋸のように"引いて斬る"動作が正しい使い方なのだ。
想刃は湾曲刃の正しい使い方を理解してるのみならず、彼の後天的に備わった『能力』とも相俟って最強の鋭さを持った攻撃と化している。また彼はターワルの刀身に剣気を纏わせ、『能力』の作用を広げている。
故に霊斗の右肩や右頬が切れたと思われる。剣気を纏ったターワルが空気に触れた事で『能力』が作用し、空気すらも"鋭い刃"と化した事で切断力を高めている、と霊斗は推測する。
「────ならッ」
霊斗は王武を右に払うように引き戻しながら左手のみに持ち替え、大きく素早く外側に向けて横に振るう。足場が刃から地面に切り替わり、片足が付いた瞬間から想刃は動体視力で剣の軌道を見極め、『縮地』にて神速後退を行って回避した。
「お前の能力がどんなモノか、試してやる、想刃! 王武零式『皇帝の大聖剣』……!」
緩やかに立ち上がりつつ懐からスペルカードを取り出して王武を正面に構える。そして構えた王武に取り出したスペルカードを近づけ、静かに詠唱を行うと突如スペルカードが光に変わり、王武と一体化し始めた。
スペルカードと一体化した王武の刀身を自身の目の前まで持って行きながら瞼を閉じて直ぐに開眼。王武を一度右に振り切る。すると王武の刀身が光と化した直後に何十mにも伸び出し、そこから右に一回転して右薙に王武を振るう。
十数m程の距離を於いている筈の想刃にも容易く届いてしまう光の刃、それが想刃に容赦無く迫り来るのだが、これを想刃はやや前方に向けて高く跳躍する事で躱す。だが霊斗の動きは止まっておらず、今度は横一閃から更に一回転を加えて縦一閃に王武を振り下ろす。
決して速くは無い一閃だが、光の刃の範囲と大きさ、更に想刃が"空中に居る"と言うこの条件により、回避は絶対不可となっている。ここからどうするか、その行動の全てを見極めんと霊斗は想刃から目を離さず集中力を高める。
「フンッ──無駄だ」
一瞬、鼻で嘲笑すると光の刃は先端から刀身の終わりの切羽までが真っ二つに割れ開き、自然と想刃を避けて消失した。行く先に障害が無くなった想刃はそのまま跳躍から自由落下を経て霊斗の目の前に着地を果たした。
着地早々、気怠さを含んだかのような想刃の立ち上がる姿に霊斗は一時茫然とした。瞼が半分ほどしか開いてない想刃はその眼で、特に『右眼』で霊斗を睨みつつ一瞬で懐まで迫る。
予め攻撃の構えを執っていた霊斗は右手の王武を内側に引き、居合の要領で振り抜く。だが剣の動きだけを見ていたのか、想刃は体を大きく使っていつの間にか左手に持ち替えていたターワルを逆手に構えて右に振るい、王武の攻撃を払い除ける。
これに止まらず、逆手持ちでターワルを右に振るった勢いで体が右に捻られた為、捻る勢いに任せて下半身を右に回転させつつ右脚を霊斗の足の後ろにまで廻す。勢いを殺す事無く続いて上半身を右に捻り、今度は逆手のままターワルを右手に持ち替え、剣の尖端を霊斗の背に向けて振るう。
流れる想刃の動作に"流され"かけた時、霊斗は直ぐ背後に迫り来る『刃』を察知して高速で真上に跳躍する。霊斗が跳躍を行った事で想刃が振るったターワルは右に振り切られて空振りに終わり、勢いのまま上半身の捻りに合わせて全体の姿勢が少し下がって静止した。
空高く跳躍した霊斗は後方に宙返りを一回転行って落下を制御、想刃から少し離れた場所に着地した。着地直後、捻ってた状態から想刃が身を翻してこちらに向かって来る素振りが垣間見得たので、霊斗は次の攻撃の為に"突き放す"攻撃を繰り出した。
「ふぅッ!!」
両手持ちの構えを諦めて完全に片手持ちに切り替え、右手に持った王武を後ろ一杯まで引き、地面ギリギリの下段から大きく掬い上げるようにして思い切り振り上げる。王武の尖端が地面を擦る様を目にした想刃は霊斗の動作を先読みし、円軌道で霊斗の右側に神速で回り込む。
振り上げ動作中、想刃に右側に回り込まれた霊斗だが、王武が垂直になった瞬間に力一杯真下に引き降ろして、剣の軌道に無理矢理の変化を加えて更に右薙に振るう。ところが剣の軌道が急変化したのにも関わらず、想刃は突然霊斗に背を向けた。
瞬間、右足で地面を蹴り込んで跳躍を行い、背面跳びで躱した。背面跳びの回転力に乗せて右逆手に持ったままのターワルを思い切り振るう。ならばと思い、霊斗も右に剣を振るった勢いを活かして頭と背中を下げ、想刃の背面跳び斬りを避けた。
想刃が背面跳びから着地するまでに霊斗は振り返りながら二枚目のスペルカードを取り出す。今度は左手の人差し指と中指の間に挟んだまま左手を想刃に向けてハッキリと唱える。
「霊符『夢想霊砲・極』!」
スペルカードが光となって消えると、スペルカードを持っていた左掌に"七色の光"が集束し始めた。瞬く間に"七色の光"は霊斗の胴体程の大きさとなり、その力を解放する時を待っている。
背面跳びから体を上手く動かして足で地面に着地した次の瞬間、霊斗の左掌に集っていた七色の光は一瞬増幅してから溜め込んでいたエネルギーを真っ直ぐに解き放った。
現在の想刃と霊斗の距離は約3m、解き放たれた七色の光は秒を刻む前に想刃の体へ到達するだろう。しかし、だとしても、彼には七色の光が届かない、その理由がある。
「無駄だっつってんだろうが」
その一言の末、想刃が行った行動は唯一つ、『立ち上がって七色の光に向かって振り向く』、ただそれだけ。ただそれだけなのに、想刃の目前まで迫る七色の光は縦一閃、左右に分断されて自ずと想刃を避けて行き、徐々に消滅していく。
だが七色の光が消滅し切った直後、霊斗が突然想刃の目の前に現れて右手に持つターワルを王武の左斬り上げで上空に弾き飛ばした。実は『夢想霊砲・極』は先ほど想刃が執った『振り』と同じように"そうする"、"そうさせる"為の攻撃でしか無かったのだ。
つまり、霊斗の放った『夢想霊砲・極』は単に"ターワルを弾き飛ばす"為だけの行動、動作でしか無かった。でも何故、霊斗は想刃の武器『TALWARL』を弾き飛ばしたのだろうか。
「お前の武器は手元から無くなった、これで肝心要の『能力』は封じた!」
そう、霊斗の推測はこうだ────
物理外の力ですら容易に断ち切ってしまう能力は、常に想刃が剣を持っている時に発動される。ならば、あの剣さえ取り除いてしまえば、物理外の攻撃が通用するようになるのでは、と……
ターワルを弾き飛ばして直ぐに霊斗は想刃の片腕を掴み、十数m先へと投げ飛ばした。剣を弾かれ、その上投げ飛ばされた想刃だが、空中で体勢を上手く整えて着地する。
投げ飛ばした直後に霊斗は三枚目のスペルカードを取り出して王武を納刀。それからスペルカードを右手で力強く握り潰すと、手の中のスペルカードが光と化して自身の背後に飛ぶ。
「これで決まりだ! 全能神技『スーパーノヴァ』!」
宣言をした途端、背後に飛んだ光が6つの光球へと形を変えて左右と斜めに展開された。背後に展開された6つの光球は其々が光を集束し出し、膨大な量の力を溜め込み始める。
「これで回避も切断も出来ないだろ、悪いがちょっと痛い目に遭ってもらうぞ」
光球に最大まで力が溜まった直後に6つの光球全てから想刃に目掛けて極大のエネルギー波が押し寄せる。しかし、だとしてもだ、彼には絶対に霊斗の"この攻撃"は届かない、その理由があるのだ。
「霊斗、あんた俺がいつ『剣が無ければ能力が使えない』なんて言った?」
一瞬、その一瞬、ホンの僅かの刹那の時だと言うのに、霊斗は目の前の『事実』に自身の目を疑わざるを得なかった。何故なら、唯立ってこちらを睨むだけの想刃に迫るエネルギーが全て細切れに、粉々に、粉微塵に切断されていっているのだ。
それだけに止まらず、光球すらも復元出来ない領域にまで細かく切断され、『全能神技』の"意味"すらも容易く『絶』たれてしまった。更に超神速で霊斗の眼前に接近し、静かに呟き掛ける。
「少し教えてやる、俺の能力は『全てを断ち切る程度の能力』だ。現象と概念には、動作など過程に過ぎない。だから剣など無くても、斬れるんだよ!!!」
感情を露わにした想刃は左拳を高速で振り上げて霊斗の右頬を殴り抜く。殴られた直後、拳であるにも関わらず、霊斗の右頬は頬骨の下から鼻の頂点にまで掛けて深い切創が走った。
そこからまた拳をぶつけ、蹴りも織り交ぜて行き、攻撃を連続化させる。想刃が次々と放つ一撃一撃のタイムラグが徐々に縮まっていき高速化、一撃自体の威力が少しずつ上がり激化していく。
数秒が経過する頃には超高速で繰り出される究極の無酸素運動による"攻撃の嵐"と化していた。これぞ想刃が最も得意とする高速の絶技、有無言わせる事無く攻撃を与え続ける、普通の人間には"不可能"な動き。
霊斗の体に拳や脚が直撃して怯んだり仰け反ったりしても、そのタイミングでまた次なる攻撃に見舞われ、休む暇無く全身に最速の乱打を浴び続ける。何より、この攻撃に寄って一番疲労ダメージを負うのは想刃では無く、攻撃を受けている側の霊斗である事。
滅茶苦茶な攻撃の嵐の前に途中で怯む事も、仰け反る事も、倒れる事すらも決して許されない。そして思い切り足で霊斗の顔面を蹴り上げた直後、弾き飛ばされたターワルが落ちてきて、想刃はそれを"最初からわかっていた"かのように掴み取り、同時にスペルカードを取り出した。
「翔翅『翼の影飛』……!」
嵐の如き連続乱打を一時的に止めて両足を地面に付けた後、片足は地面を、もう片足は霊斗の喉を力一杯蹴る。想刃の地面側の足は芝生だの土だのを容赦無く抉り取り、霊斗の喉側の足は呼吸器諸共を蹴り潰して霊斗を押し出す。
霊斗を押し出しつつ高速で水平に飛翔する想刃は右眼の『翠』をより強く光らせて剣を握る手にも力を込める。そして、想刃はまるで誰かの『死』を憂うかのように左眼で涙を流し、右眼で怒りや憎しみを滾らせて呟く────。
「朧刹『滅天沙門』……」
スペルカードの名称が口にされた瞬間、周囲の木々は全て根元から切断され、幻想郷の全ての自然が"泣き声"を上げた。想刃は既に霊斗の真後ろに居り、霊斗は全身のありとあらゆる全てを斬り刻まれ、分断され、塵々になって肉片と血の飛沫をバラ撒いた。
細切れになった眼球、脳味噌、脊髄、骨、毛髪、筋肉や細胞の隅々が飛び散り、霧散し、粉々になって────なって────────────────
「ハッ!!?」
横に倒れていた霊斗は、ふと起き上がると目の前には石に座って霊斗を見下ろす想刃の姿があった。さっきまで闘っていた筈の想刃が、嫌悪を抱かれていた筈なのに、平然と向こうは何気無い顔で出迎えた。
「いつまで寝てんだ、さっさと起きろ。いちいち他人の世話をしてやる程暇でもお人好しでも無ぇんだよ、俺は」
冷たい態度の言葉を言い放って立ち上がると、想刃はあらぬ方向へと歩き出した。状況が全く呑み込めない霊斗は頭の整理がまるで追い付かず、言葉すら痞えてしまって訊きたい事すら訊けない。
「あんた、まさか覚えてないのか? あんたが言ったんだろ、『宴会をするから来ないか?』ってよ。行くんなら早くしろ、取り敢えず行くだけだ」
時間も昼間、黄昏時では無い上に想刃から感じる筈の悍ましい殺気も一切感知出来ない。それどころか逆に想刃から僅かな優しさすら感じるほどだ、何がどうなっているのか。
「待て、待ってくれ! 整理させてくれ! 何がどうなってるのかサッパリだ……確か俺は想刃に会いに来て、でも闘うハメになって、そんで俺はバラバラに斬り刻まれて殺されて」
「いつまで寝ボケてる? 早くしろっつってんだ。それと────」
想刃は少し溜めてから気怠く、そして重苦しく口を開いて呟いた……
「あんたが見た夢、強ち嘘でも無いかもな。俺は『その気』になればあんたを有無言わず殺してた。勿論、"バラバラ"にな……」
その一瞬、凍ったのは背筋だけでは無かった。手も腕も足も、全身が凍りついてしまい、金縛りにあったかのように意識だけがハッキリとして物事を見事に片付け、判断をしていた。
「嫌な夢だったなぁ……本当に…………」
霊斗は自身の腕を摩り、想刃の後をついて行くようにして想刃を宴会の場に案内した……とさ。
終わり
気が付いた時、それは全てが『夢』だった。しかし、一歩違えば『現実』のモノとなっていた、かもしれない
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