第10章 告白現場
「……おい、マジかよ。またか?」
教室に戻ってきた花沢くんの背中に、クラスの男子が呆れたような声をぶつけた。
「今日で何回目だよ、今月だけで3回目かよ」
「さあね、覚えてない」
花沢くんは面倒そうにバッグを肩にかけ直すと、茶化す友人たちを視線だけで軽くあしらう。その仕草すらかっこいいから、女子たちが放っておかないのも無理はなかった。
「『ごめん、今はそういうの興味ないから』――ってか? 贅沢な悩みだよなぁ」
「とりあえず付き合ってみればいいだろ?案外それでうわいい女だってなるかもだろ!」
「考えたことはあるよ。でも中途半端に付き合いたくないしさ。」
「でまた断るのかよ、鬼だよなあお前、」
「まとりあえず行ってくる(めんどいけど後々行かない方がめんどうだからなー)
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「でさー昨日のアニメのシーンやばかったよね?」
「わかるわかる、香苗ああいうの好きだよね、」
「あれ好きじゃない女の子いる?あれはやばいって」
「まあね、てか待ってあれは、花沢くんじゃない?」
花沢くんと、あれは隣のクラスの結構可愛くて割とモテてる女の子だ。珍しい組み合わせだ。なにしてるんだろうか。
「あれさ、告白シーンじゃない?うわラッキー!見よ見よ!うわーでもうちあと少しで委員会だわ、香苗ちゃんと見届けといてね、じゃ!」
「えまってよっていっちゃった、」
とりあえず見届けるか。花沢くんがどんな風に断るのか興味あるし。
「私ずっと好きなんだよ、そろそろ付き合おうよ、ね?」
「……ごめんけどホント無理なんだよ、」
顔は笑っているのに目は笑っていない。だけど、もっと冷たく突き放すのかと思ってた。昔一回見た時はもっとかなりこっちが引くくらい酷い振り方してたのに。
「私と付き合ったら色々いいこときっとあるよ?」
かなり可愛らしい顔立ちの子にあんなに迫られても動揺しないなんてなんてことだ。ある意味尊敬してしまう。
「ほんといい加減にしないと俺きれるよ。」
「……!わかったわ、もういい!」
泣きながら彼女は走っていった。そんな一部始終を見届けていると、急に目の前に花沢くんがやってきた。
「おい、お前勝手に盗み見してたろ。」
「うわ!び、びっくりさせないでよね!」
「お前なー、ほんと、」
「いやいや、勝手に私のいる所で告白されるあんたが悪い!てかあんな可愛いのに、いいの?」
「責任転嫁するな、いやかわいけりゃいいのかよ、お前はかっこよければいいこか?」
「うーんいや、まあそういう訳じゃないけど、ちょっとは揺らぐかも?だってうちそんな告白されないし、」
「…そうかよ、じゃあな。」
「部活?」
「いや、塾だよ。少しでも気を抜いたらやばいしな。」
「そうだよね、すごいよほんと」
「なんかみんな俺の事すごいって言ってくれるけどある意味なんもねーんだよな俺。」
「どういうこと?」
「たしかに勉強も運動もそこそこ出来るかもしれないけどなんつーかなにかに夢中になったりやってて面白いって思うことがないんだよな、」
「……バスケは?」
「まあ普通に好きだけどそこまでかな。だからさ、山下からいつも惚気メール来る度に少し羨ましいんだよな、あいつずっとさやかに、倉川に夢中だったろ?」
「いやー花沢くんがその気になればすぐいい人見つかると思うけどね、」
「……ま、妹ことあるしそういうのは後回しだけどな。そもそも興味ないし」
「そうだよね。」
花沢くんはずっと1人で何でもやってきた、っていうかやってこなければ行けない状況にいたからなんでもできちゃうんだろうなあ。そして誰かを頼るやり方も知らないんだろうなあ、きっと。




