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互いの気持ちが言葉に溶けて、静寂が落ちた。
千沙の唇が小さく震え、大地はそれを見つめながら息を呑んだ。
「……千沙」
名前を呼ぶ声が、夜の空気を震わせる。
次の瞬間、自然と距離がなくなった。
触れた唇は、確かに互いを確かめ合うためのものだった。
最初は優しく、けれど次第に強く――
押し寄せる想いが、二人の境界を溶かしていく。
千沙の指先が大地のシャツを掴む。
大地の手が頬に触れまた口づけされるたび、千沙は何かが溢れだすように涙がこぼれそうになる。
ずっと誰かを求めていた。
でも違った。――“誰か”じゃない。
“この人”じゃなきゃ、駄目なんだ。
もっと。
もっと近くに――。
指が絡み、互いの鼓動がぶつかり合う。
切なくて、焦がれるように求め合う。
理性なんてとうに消えていた。
千沙は震える声で囁いた。
「……大地さん…好き」
大地の腕が、彼女をさらに強く抱き寄せる。
ゆっくりと首筋…胸に腕に太ももに口づけされる。
「……っん…やだぁ…」
甘く漏れる吐息に大地の理性は崩れた。
何度も何度も口づけする度千沙の身体が仰け反るように反応する。
そしてゆっくりとまた唇を重ねると共に腰を落とした。唇の端から吐息が漏れる。
二人の肌はゼロ距離…全てが溶け合う夜を月が照らした……




