お似合いの二人
僕の親友は女装男子だ。
わがままで、女王様気質も許されちゃうかわいい女装男子。
口答えは許さない、……僕以外は。
僕以外の喧嘩の仲介も許さない。
そんな彼? 彼女? の本質は……。
僕に依存し、家族と僕以外の人間には心の介入を許さない、人見知りで臆病者で、ネガティブでかわいいものが好きで尚且つ、女子力高め男子である。
「藍ちゃん可愛いんだからさ、自信を持って良いと思うよ? 行き過ぎてたら、僕が止めてるし、気にするほど女王様じゃなかったよ?
藍ちゃん? 藍ちゃんがどんなに女装すると性格変わろうと、僕は藍ちゃんのこと嫌いならないよ? だから、出ておいでよ、そうじゃないと僕困るよ。
藍ちゃんが体力くれないと乙女ゲーが進まないんだよね〜。藍ちゃんくらいしか進めても乙女ゲーしてくれないし、藍ちゃんは僕に対してはわがまま聞いてくれるでしょ? 僕は嫌いになったりしないよ?
……それとも、藍は俺だけじゃ物足りないって言うの? 俺以外にも好かれたいのかな、藍?」
こうして、毎日俺……じゃなかった、僕の部屋に来て、僕の布団に引き込もって反省会をしている訳です。
それを、こうして慰めてあげてるんだよね、毎日。ネガティブな藍ちゃんも僕は嫌いじゃないから。
僕さ、本当は一人称は俺なんだよね。
なのに、藍……じゃなかった、藍ちゃんがモテちゃうからダメって言うんだ。平凡顔なのに、藍ちゃんはおかしなことを言う。
そんな藍ちゃんのわがままは可愛いから言うこと聞くけど。
藍ちゃんの前では素でいるのは良いんだけど、ボロが出そうだから、こうしていつもこの口調で統一してるんだ。たまにこうしてあまりにも手が余ると、素の喋りで話しかけると効果テキメンでね、布団から飛び出すように出てくるんだ。
可愛いよね、小動物みたいで。
「……心くんだけいればそれでいい。心くん以外は僕の世界に入らないでほしい。心くんだけ側にいてくれれば、それだけで僕は生きていける」
……こんな依存、させちゃいけないのはわかってる。でも、そうさせたのは僕のせい。
僕、長野心太郎がしてしまったことのせいで、藍ちゃんは僕に依存するようになってしまった。
……まるで薬物のような依存を、抱かせてしまったのだ。
僕は本来なら、二学年上の学年にいるはずだった。僕は、階段から落ちそうになった藍ちゃんの身代わりに転落し、二年間昏睡状態に陥った。
二年間の年月の勉強を巻き返すことは出来た。家庭環境も悪くないし、塾にも行ける金銭的な余裕もうちの家庭にはあったから。
それでも、僕は二学年下の学年から受けることを選んだ。側にいなければ、今度こそ藍ちゃんの心が壊れてしまうと思ったから。
共依存は危険だ。どちらか片方が崩れて仕舞えば、総崩れになってしまうことを知っている。
だけど、それでも良いから、僕は藍ちゃんの側にいると決めたんだ。
「藍ちゃん、もうあんな風にならないように気をつけるから、そんなに苦しまないで」
藍ちゃんの性格がネガティブになってしまったのも、僕のことがキッカケで。
喜んではいけないのに、藍ちゃんにとって、僕はそこまで影響力のある人間だと思うと嬉しく思う自分がいる。
そんな僕は、……俺はずるいやつだ。