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牛頭馬頭対アスラ

6/22 本日投稿分です。

 自らの倍はあろうかという牛頭馬頭を見上げたまま、アスラは余裕の笑みを崩さない。

 一方の牛頭馬頭は、右手に巨大な矛、左手に鋭利な青龍刀を油断なく構え、四つの瞳でアスラを睨みつけていた。分厚い筋肉の鎧を纏った体から、尋常ならぬ闘気が溢れ出ている。


「どうした。かかってはこないのか?初手は譲ってやろうというのだ。その大層な矛と青龍刀はただの飾りか?」

 その瞬間、空気が震えた。

 ドン!

 足元の大地を砕く神速の踏み込みで、牛頭馬頭の矛の一突きがアスラの胸元を襲う。捉えたかと思われたその突きは、アスラの紙一重の見切りによって虚しく空を切る。

「速い!」善徳と刀自古が思わず声を上げる。

「兄さま!さっきよりも速さがあがっています!」

 牛頭馬頭は合体することで、もう一段、能力を高めていた。

「だが、アスラどのも対応できている」

 厩戸の目には、アスラにまだ余裕があるように見える。


「やれやれ、合体してもその程度か。まったく笑わせてくれる」

 アスラの冷笑に、牛頭は怒りで真っ赤に顔を染める。一方の馬頭はあくまでも冷静だ。刺すような視線でアスラの動きを見ている。


「なるほど、今の一撃を回避するとは、言うだけのことはあるようだな。では、我が渾身の攻めを受けた後も笑っていられるか、試してみようではないか。疾風走馬!」

 呪文と共に宙に浮いた牛頭馬頭は、疾風となってアスラの周囲を瞬間移動する。残像を残すほどの速度で移動しながら牙風破を連続発動、生成された風刃が四方八方からアスラに襲い掛かった。


「その術は、先ほど見た!火炎呪!」

 飛び交う風刃を火炎の槍で撃ち落とす。

 そのアスラの懐へ牛頭馬頭が風を巻いて飛び込んでくる。

 矛を高速回転させながら突き込み、青龍刀を上段から振り下ろす。

 それを躱すアスラに向けて、至近距離からの牙風破。

 迫る風刃さえも見切って、アスラが一気に距離を取る。


「ふむ。では、次はこちらの番だな」

 アスラはちらりと刀自古に目をやり、腰を落として拳を構えた。

「え?アスラが拳法?」

 驚く刀自古にアスラはにやりと笑ってみせる。

「むむむ。なんか腹立つ」

 アスラを睨む刀自古。だが、次の瞬間、それは驚きの眼差しに変わった。


 滑るような足取りで牛頭馬頭の間合いに入ったアスラが、牛頭馬頭に怒涛の連撃を叩きこむ。

 正拳、正拳、正拳、正拳、正拳。

 多彩で華麗な連続技?

 そんなものは必要ない。

 最短距離を最速で打ち抜く正拳の連打。

 奇をてらわぬ真っすぐな拳がただひたすらに、無慈悲に敵を蹂躙していく。

 まさに王道、覇王の拳法だ。


 その猛攻に、牛頭馬頭は為す術もなく後退していく。

 ようやく拳を収めたアスラが振り返り、再び刀自古に向かってにやりと笑う。

「むむむ。凄いけど、凄いのはわかるけど、やっぱり腹立つ」

 刀自古は負けず嫌いな女なのだ。


 アスラの猛攻に後退を余儀なくされ、思わず膝をついた牛頭馬頭であった。だが、もちろん勝利を諦めたわけではない。

 ゆっくりと立ち上がると膝の埃を払い、アスラを睨みつける。

 巨大な矛を地面に突き立て、青龍刀を横薙ぎに振るって低く唸り声をあげる。

「気に喰わぬ。貴様の見下すような目も、覇王を気取る物言いも、傲慢不遜な闘法も、何もかもが気に喰わぬわ」


「グオオオオオ!」

 天地を揺るがす咆哮を上げると、牛頭馬頭の全身から漆黒の業火が噴出した。深紅に染まる両眼が爛々と輝き、全身の剛毛が逆立つ。全身の筋肉が厚みを増し、溢れ出す闘気が大気を震わせる。


「ほう、ようやく本気を出すか。ならば覇王の力を存分に味わうがよい」

 印を結んだアスラが静かに呪を唱える。

「アハン・アスラハ!(我は阿修羅なり!)」

 刹那、まばゆく輝く黄金の光がアスラの全身を包みこむ。

 次の瞬間、三面六臂の六道の覇王、黄金に輝くアスラの姿が出現した。


「え?あれはアスラ?」

 目を見張る刀自古に頷く善徳。

「そうだ。あれがアスラどのの真の姿よ」


 一方、洞穴の奥の式神の眼を通して戦況を見つめる徐福。

「うむ、そろそろ頃合いであろうか」

 そう言う徐福の視線は、アスラではなく、闘いを見つめる厩戸へと向けられていた。


お読みいただきありがとうございます。

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明日も1話投稿予定です。

よろしくお願いいたします。

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