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世界樹の下、現実の暮らし  作者: のた。


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3/3

3



世界樹の下は太陽光が入りにくい。

だから、この下だけで生活をしていると心が不安定になる。

それもあって、観光のための冒険というのがヴァロベルスでは流行っていた。ラクヨウも、その仕事を請け負うことがあり、今日はそのために国の外までやってきていた。




仕事を頼まれたのは、四人の家族連れだった。

両親、長男、長女という家族構成だ。

子供はどちらもまだ小学生程度の年齢であった。

一番上である長男は、勇ましくも家族を守ろうとする。

が、当然ながら、子供である彼は守られる立場だった。



しっかりと守ってあげようとした。冒険によって大事な人を亡くす辛さが誰よりもわかる彼は、例え小さな怪我だとしても許さないような気持ちで四人と一緒に冒険をしていた。





「ここまで来ると臭いもないんだな。いや、こんなに綺麗な空気を吸ったのは何年ぶりだろうか」

「そうね。空も綺麗」

「パパ!ママ!見てこれ!カッコいいでしょ?」



青空の下、彼は落ちていた枝を拾う。

それを振り回して、冒険者の真似事をしていた。

ここには臭いがない。

吹き抜ける風が、世界樹の呪縛のような臭いから、家族を解放した。どこまでも高い空を見上げて、別のところへ引っ越したくもなるのだった。




引っ越したくなってもそれは絶対にしない。

なぜならば、彼らも宗教によって縛られているからだ。

魔法が上手になってもメリットなどほとんどない家庭だ。

それでも、世界樹の下で生活したいと思っていた。




四人家族が楽しく会話をしている最中、ラクヨウは索敵をしていた。

そして、無事にそれを見つけると、まず、弓矢を射った。

それは大きな狼のような見た目をしたモンスターに命中する。その矢を受けて、家族の方へと視線を移動させたそのモンスターはいつのまにか目の前に来ていた彼に驚く。



彼は移動速度が異常に速かった。

そして、そのまま、火属性の魔法で狼の全身を燃やす。

体に火が着いたモンスターは悶えながらに死んでいった。

この程度の敵であればなんの問題もなかった。





モンスター討伐を終えたラクヨウはまた家族の近くに移動する。すると、みんなから感謝をされることになる。それが仕事だとわかっていても、感謝してしまうものだった。




「ありがとうございます!おかげさまで助かりました!」

「それはよかったです。でも、これが俺の仕事なので」

「そうですよね。でも、それでも助かりましたから」

「スゴいカッコいい!俺もそういうのやりたい!」

「別に、冒険者になってもいいことばかりじゃないよ」




ラクヨウはそんなことを言った。

それは本心からの言葉だった。




それから、五人はしばらく世界樹の外を歩き回った。

そして、依頼を受けていた分の時間が終わると帰宅することになる。普通の冒険者であればもっと厳密に時間を区切るところ、ラクヨウは少しだけ甘くした。




あまり国の外に出ない人にとっては貴重な時間だった。

それを中途半端な形で終わらせたくないと思っていた。




「それでは、今日はここまでですね。ご利用ありがとうございました」

「いや、本当に楽しかったです。また機会があったらいいですか?来年になってしまうかもしれないんですけど」

「来年、来年なら、まだやってると思います」

「『来年なら』?ということは、もっと先だと辞めてるかもしれないんですか?」

「年齢の問題もありますし、それに、ちょっと軍から誘われていて」

「それは素晴らしい!軍人さんになるのですか?それなら、仕方がないですね」

「いや、まだ決まってないんですけど、まあ、おそらく冒険者を続けることになるとは思います」

「それはもったいない。せっかくなら軍に入った方がいいのに」




彼はここでも同じようなことを言われた。

そんなことを言われると自分が間違っているのかと思えてくる。

もはや、本当に軍に入ってしまおうかとも思っていた。

が、やはり、それはできないのだった。

それをするだけの気持ちの整理がまだできていなかった。どれだけの時間が過ぎても、気持ちの整理ができていなければどこへも進めないままだ。




結局は、自分でもそれをよくないとラクヨウは思っていた。

乗り越えなければならないと彼は思っていた。

が、どうしても乗り越えることができないのだ。

そんなに簡単にできることならば、話はもっと単純だった。






彼は四人家族を見送る。

もはや嗅ぎなれた異臭の側で、何かを思う。

どうしたら戦争を止めることができるのか。

もし仮に自分がその中に入ったらそれをするために必要な何かを見つけることができるだろうか。彼は自分という存在の矮小さをわかりながらも、そんな夢のようなことを思った。






一人になった彼はもうしばらく冒険をすることにした。

まだ体力が余っていたのだ。

だから、自分の気持ちが落ち着くまではそれをすることにした。




一旦終了です

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