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19 ディアナ来襲

「お・・お久しぶ・ぶ・ぶ・ぶ・・ぶりね。ディアナ。」


オリヴィアは久しぶりに会う妹に挨拶しようと懸命に口を開いたが、妙な緊張のせいで思いっきり噛んでしまった。


「きゃはははっ。お姉様ぁ、今なに言ったんですのぉ?あんな湖しかない田舎に引っ込んじゃったから言葉も不自由になってぇ。ていうか、まだ生きてらしたのねぇ。」


オリヴィアがその()()に引っ込むことになった一因である、一見儚げで妖精のように美しい妹は久々に会う姉を軽やかにディスってきた。


忘れていたはずの怒りが沸々とわいてくる。けど、ここでディアナの挑発に乗ってしまったらポーション事業の話どころじゃなくなるかもしれない。オリヴィアはぐっと言いたい事を我慢する。


「まあディアナ、オリヴィアはお姉さんなのよ。その言葉遣いはいけないわ。」


母がディアナを嗜めた。

あの天然のお母様がまさかのフォロー?!そうよ、もっと言ってやって!

オリヴィアは縋るように母を見る。



「そういう時は、静謐な土地にお住まいになって会話がご健忘ですが存命のこと嬉しく思いますって言うのよ。」


「そうだぞ。オリヴィアはまだピっチピチの若い娘なんだから生きてるに決まってるじゃないか。」


両親の斜め上すぎる会話にオリヴィアはぷるぷると肩を震わせた。


・・意味わからない・・・あの天然夫婦の口を今すぐ糊でくっつけて塞いでも良いですか・・


兄フレドリックは同情の目をオリヴィアに向け、壁際に控えていたレオは涙目になって肩を震わせていた。


「あらぁお父様。オリヴィアお姉様は出戻りだしもう大年増のオバサンよぉ。セイウチな田舎で一生喪女なのよねぇ。プッ、賢いお姉様にはすごぉくお似合いよぉ。それに、その手ぇ。なんですのぉ。包帯までお姉様と同じで野暮ったいんだからぁ。そんなの取ったらどうですのぉ?ダッサぁ。」


セイウチじゃなくてセイヒツよっ!それにまだ大年増まではいってないわ!

もう、我慢の限界かも。オリヴィアが堪え切れず口を開こうとしたその時。



「ディアナ様、お茶を準備いたしますのでまずはお召替えをされてはいかがですか?」


混沌とした場の空気を変えたのは白髪の老執事の穏やかな声だった。

ディアナは老執事の言葉に、今までの緊迫感がまるで無かったかのように、それもそうだわぁデザートも出しといてぇとダニエルに言いつけホールに背を向けた。


す、すごい。あのディアナをコントロールできるなんて。さすがはダニエル。


オリヴィアは老執事の熟練の技に感心する。そのスマートさと巧みさに拍手を送りたいわ。


「・・そういえばオリヴィアはさっき何か言いかけたよね。」


「そういえばそうだったね~。何の話だったんだい?」


フレドリックお兄様がうまく会話を戻してくれた。ありがとう、お兄様。


オリヴィアは深呼吸をして気持ちを落ち着けると、一気に言葉をはき出した。


「そ、そうなのよ。実はお父様とお兄様にとても大事な話があるの。領の収益にも関わるわ。だから明日、2人の時間をください。」




「はあ~本当疲れた。お兄様とダニエルがいなかったら早々にリントラムへ帰る荷物をまとめてたわ・・。」


あの後、お父様とお兄様に新事業について話す時間を貰う約束を取り付け、ディアナが戻る前に早々に部屋に逃げ・・引き上げたオリヴィアは椅子に腰かけぐったりとしていた。


テーブルに載せた、ポーション事業の草案をまとめた書類を見直す。掛かる費用、場所、形態、販売対象となる顧客などなど。3日でまとめたにしては我ながら良くできてると思う。


自領の収入になって、ポーション自体の材料費はほぼタダ。しかもどうやらかなり価値が高く需要もあるだろう事業。やらない理由はない。けどインブリー領で先に事業展開してる理由や、辺境伯領へ行くことになった事を説明するのが面倒くさい・・。なんでまだインブリー家と付き合いがあるのかとか順番が違うとか突っ込まれるのは目に見えてるし・・あ~~やだやだ。なんてぶつぶつ言いながらオリヴィアは手の厚巻きの包帯を解いているとトントンとドアがノックされた。


「入っていいわよ~。」


寝る前のお茶を持って来たレオかと思ったら、ドアを開けて入って来たのはお兄様だった。


「妹とはいえ女性の部屋に夜分にごめんね。久しぶりにゆっくりオリヴィアと話したくて。」


突然の兄の訪問に一瞬驚いたけど、そういえばここ何年もゆっくり話す機会もなかったし、と思い直す。


「いいえ、嬉しいわ。私もたまにはゆっくり話したいと思っていたの。」


やや後にお茶を持ってやってきたレオにもう1人分のティーカップを持ってくるように頼み、テーブルに向かい合う。


「こうやって二人きりで話すのは本当に久しぶりだね。」


お兄様はそう言って目を細め穏やかに微笑む。オリヴィアが小さかったころの話から始まり、今は王都にいる次兄の近況、お父様とお母様の相変わらずな話など色々な話をしてくれて気分が和んだ。


そして最後に、お兄様はディアナのことを謝ってきた。


「今回のディアナの件、本当に申し訳なく思ってる。あの娘は昔からああいう性格だから、いつもオリヴィアが我慢してたよね。インブリー侯爵もうちの領からの金銭的援助だけが目的でなく、オリヴィアの能力の高さを評価しての婚姻だったのに。今でも侯爵はオリヴィアとジャックの離婚を非常に残念がっているそうだよ。」


「お兄様が謝ることじゃないわ。私もショックは受けたけど、正直、離婚して気持ちが楽になったし。それにお義父、、侯爵様がそう思ってくださっているなら私も浮かばれるわ。」


お義父様の気持ちを聞いて、自分のやってきたことが無駄じゃなかったと本当に少し浮かばれた気がした。


「そういえば、ディアナとジャックは上手くいってるの?前聞いた予定だとあと数ヶ月で挙式でしょ。」


アーサーの話を思い出して聞いてみると、お兄様は非常に微妙な反応をした。


「う~ん、、、結婚、して貰わないと困るんだけどね。」


オリヴィアはいやーな予感がした。そしてそういう予感は往々にして当たるのだ。




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