魔王の休日(2)
「スゴロクさま」
「ん?」
「わたくし、『勇者』について調べてみたのです」
「興味を持っていたものな。何かわかったか?」
「は。才覚ある冒険者をそう呼ぶ向きが多々あるようですが、『戦役』中とその直後における彼らは、いまよりもっと重要な役割を負ったようなのです」
魔物の排除しかり、探検を通じた新発見や資源確保しかり。まさに彼らは物語の主役となるにふさわしい存在であった。
「他方……『魔王』を描いた物語と言うのは、『勇者』のそれと比べるとずいぶん希少なものとなります」
「いかにも左様、当然だな――『魔王』とは『勇者』の壁、世界の敵たる者である」
「は。ですが、少々公平でないように思われるのです。人の王と同じく政を執る魔族の王であるはずなのに、一方的な『悪』であるというのは。
魔界の書物までが『魔王』を絶対的な破壊者であるとさだめている」
世の歴史家や創作者が皆、この娘のように優しかったならばと、スゴロクは思わずにいられなかった。
「よき魔王、か。ローレンスやヴォルフがもし余のあずかり知らぬ場所に生まれていれば、あるいはそうなっていたかもしれん。だが、奴等は余についた」
「は。わたくし、もっと知りたいのです。歴史を掘り返してみたくてたまりません」
「ぼちぼちやってみれば良い。余も協力を惜しまぬ」
「ありがとうございます。既に動いておりますが、これはまぁ内緒にしておきます」
「楽しみにしておこう」と笑って頷いた魔王は、
「『勇者』の力が気になるなら、シェリーを尋ねなさい」
不思議そうな顔をするのに、行ってみるまで内緒だと言い添えて片目を瞑って見せる。
2016年 03月08日 11時10分 公開




