方針決定
「ロデル」
「は」
「『上』やイズマ殿の都合待ちだが、結界内部の調査をしてみようと思っている」
「いかにスゴロクさまとて、単独では危険です。方々に手を回した方が宜しいかと」
「であるな。まずは対汚染草稿を借りねばならん」
草稿については地表の街に問い合わせるのが早いだろうと目算をつけているし、古代兵器に詳しい知り合いが魔界にいる。
ついこの間、東方の一件で世話になったばかりだが、
「デュマ様に連絡しておきますね」
「いつも済まんな」
「王の後顧の憂いを断つが、わたくしの役目。スゴロクさま……まだ『風』は吹いていますか?」
前へ、前へ。急がせる苛烈さはもう感じないが、微風のイメージが離れない。
「ああ。だがお前のおかげか、穏やかな追い風に変わったよ」
ベンチから立ち上がり、首をコキポコキと鳴らす。
「さぁ、行くか。露店に寄って食べ物でも買ってみよう。装甲はその後だ」
「はい!」
買い食いをして回りつつ、装甲に身を包んだ人々の話を聞いて回る。
イズマの影響で『滅びの杖』の研究をずっとしているという人物の家を訪ね、無事に調査用の装甲も買い受けることができた。
「あっさりでしたね」
「ケンカでもしてみたかったのか」
「滅相もない。ただ……考えるべきことは増えたようです。やはり我が社にも研究部門を設けましょう」
老人の話を聞くうちに何かピンとくるものがあったのだろう。
「よかろ。が、今回の人選は余に任せよ。少ないが人脈はある」
「承知しました」
「その顔は、何か面白いことでも思いついたか」
「まだです、ですが胸が騒いでいるのです。熱い何かが……。ああ、これがスゴロクさまのおっしゃるイメージなのかしら」
意志ある生物に宿り、突き動かす何か――それは苛烈な風であり、熱烈な炎である。人によって形や大きさの違うそれらを敢えて言葉にするなら、心の奥底より湧き出る望み。
いまや『炎』の赴くまま、己の言葉を待たずに動く『娘』が、魔王は愛しくてならなかった。
「いったん魔界に戻ろう」
「よろしいのですか」
「ああ。確かめたいことができたしな。調査は『上』の都合がつくまで待つこととしよう」
方針は決まった。決めてしまえば即行動がモットーである。
スゴロクは短く詠唱すると、転移術を発動させた。
2016年 02月19日 14時26分 公開




