博士の小さな野望(2)
「おおっ!」
さすがの魔王も驚嘆を声に出した。ずらりと並んだ巨大なカプセルには、魔界でも見たことすらない姿の魔物が浮いているのだ。
「『杖』がもたらした力と月が生み出す魔物との関係を調べてた時期があってね。怖い思いもずいぶんしたが、価値のある研究だったと思う」
「これらは、未だこの地域の地表を闊歩しているのか?」
「ねえな。キュラがぜんぶ、海より深い地底湖に封じ込めちまったし」
「また『湖』か」
「不思議とな。『湖』が重要な役割を負うことが多いらしいぜ、この世界じゃよ」
まあそれは置いといて、とか何とか言って話を切り替えるイズマは、相当わくわくしているらしい。
彼女の研究も表に出せるものではないのだろう。間違いなく理性で動く者の一人だが、小さい子供みたいな笑顔をしていた。
その顔が証明する通り、カプセルの中の魔物たちはどれもが異質な形状だった。しかも皆、ちゃんと生命を維持しているからたまらない。
美しい金属の光沢を持つ虎、木でできた象、ねじ曲がったハサミの巨大蟹。鎧のような外骨格をまとうサイ。
不気味に発行する球体やら泡に包まれて動き回る小さな全身甲冑、カプセルを通しても聞こえるバイオレンスな声のセミなどなど。
そんな大胆かつ暴力的な連中が居並ぶのと反対の棚はと視線を巡らせてみれば、「こっちのはやたらと愛らしいな」
「うん。なんかな、直接の害はないらしいんだけど。生態とかもっと研究してやんなきゃ外にゃ出せねぇ」
宝石を抱え込んでかじるでっぷり猫や、ぷぅぷぅとコケの胞子を吹き出しつつ眠るウサギ。
『無機物?』と書かれている棚には、球体の中にえもいわれぬ色の花が咲き乱れているものが多種類あった。
かくのごとく、消し飛ばせと言われても誰にもできないような外見をしているから、害がないというのも本当だろう。
「スゴロクさん。あたしはさ、コイツらも認められるべき『多様性』だと思ってる。ろくでもねぇ実験の結果なんだろうけど、すげぇ害があるようなのは極一部なんだよ。どうにか地上の『結界』もぜんぶ取っ払っちまえねぇかとか考えてるくらいでよ……」
2016年 02月13日 11時34分 公開




