宴会と子守とバザー
数十分後。
『ふむ。南方へな』
「『ええ。戦乱の残り火くすぶる地と聞き、少々気がかりなのです――余計なお世話だろうとは思うのですが』」
ジャングルに生えるイモ類や畑の野菜、大型獣の干し肉などを用いた豪華な膳をかこみつつ、魔王と酋長は話し込んでいる。
『いかにも、彼の地は人間界の中で、最も戦闘とその被害が激しかった。われらの父祖は南より戦火を避けて、『橋』を渡った』
「『すると、貴殿らはもともと人間界に?』」
『左様。もっとも、入植したのは戦役よりも随分昔だ……。放浪の中でわれらの血脈は、この人間界に枝分かれして行った』
魔王は膝を打つ思いであった。
世界各地に散らばった『戦闘民族』と呼ばれる人々は、もともとは魔界の住人であり、この地より拡散し血を薄めて、その流れを保ってきたのだ。
酋長は少し不思議そうな顔をしつつ、その妻の酌で酒を楽しむ。『なぜ、そこまで人間界のことを知りたがる。といって侵略など片時とて考えていぬと見えるし……』
「『わが望みはこの世界の全貌を掴むこと。他方、人間という種族にも興味がありましてな』」
酋長は腕を組み、深く嘆息する。呆れたと言うわけではなさそうだ。
『おもしろい場所がある。明日、連れて行ってやる。それと南方の伝手に連絡を取ってやろう』
「『ありがたき。何か返礼をせねばなりませんが』」
『子ども等と遊んでくれただけでも充分だが、そうだな。何か珍しいものなど持っていないか』
魔王と妻は宴会の間じゅう、まだ酒を飲めない子ども達の相手をしていた――といっても、ロデルは今度は彼らを寝かしつけにかかっているのだが。
「『承知。子ども等が寝る間に、我が社の商品をご覧あれ』」
ある子には手品感覚で魔法を見せてやり、ある子にはオルゴールを聞かせてやったりと、生意気でやんちゃな怪獣達に手を焼いているようだ。
酋長が苦笑する慌てぶりを見て、スゴロクは救援要請に応えるのだった。
2016年 01月14日 11時48分




