表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/129

東の辺境へ

 ロデルとともに東国を出立しゅったつした魔王は、辺境入口の国で一泊したのち、本格的な探索行たんさくこうに入った。

 秘境発見の大スクープからずいぶんと経過していることもあり、鬱蒼うっそうたる土地のそこここに冒険者たちの足跡そくせきが見て取れた。

魔族ならではの鋭いアンテナとタフさを武器に、ふたりは未開の地を恐れず進んで行く。

「情報の湖はどのあたりであろうな」

「すぐには着かないとは思いますが、そう苦痛なみちともならぬものと」

 見上げる空はうるわしく晴れ、雨が降ったのだろう、木々は名残なごりしずくを落としている。北方の『魔境』にも似た森には、所々に極彩色ごくさいしきの花が狂い咲いている。

派手だが決して毒々しくない、魔族の持つ『美』と通ずるところのあるうつくしさであった。

「少し速度を落とすか」

「はい、せっかくの旅です」

 今度はスゴロクから手を繋いだ。いつ繋いでも同じあたたかさがある。

 ロデルは照れっぱなしで、帆帆を染めつつもゆっくりと歩む。ぎゃあぎゃあわめく何かも気にならない。

「ロデル、上を見てみろ」

 ぎゃあぎゃあの発信源が居た。空中で旋回せんかいしつつ喚き散らすくちばしは、下からでも巨大に見えた。

 敵意もないようなので暫く眺めていると、飽きたのか南の方角へ飛び去ってしまった。

「何だったんでしょうね……」

警笛鳥けいてきちょう、またはホイッスルバード。そのままだが、古代の人々や魔王が使った番犬のようなものらしい」

見かけに反して利口りこうであり未知の事物や魔物、人などを見つけ次第騒ぎながら飛び回るので、当時の人々に好んで用いられた――と、ものの本に書いてあった。

「南の方に飼い主がいると」

「そう考えるべきだな。楽しみが増えた」少年のように、魔王が笑む。世界に謎あれかしと望む冒険者の顔だ。

王が旅立つ日には正直ずいぶん迷ったし、寂しい日もあったが、やはり送り出してよかったとロデルは思った。追いかけてよかった、とも。

 彼の望みをかなえる何かを探すべく、充満する匂いを分類してみた。半狼族や半犬族ほどではないけれど、わりかし鼻がく。

 むせ返るような緑の香り、湿った土、水とコケ。花の甘ったるい匂い。頭がくらくらしてきそうなほど多彩な匂いの中に、「煮炊にたきの匂いがします」

「このあたりの集落か」

 勢力分布図みたいな古来の地図によれば、南大陸と東大陸をへだてる辺境には魔族のほかに、少数民族の集落もいくつか存在するらしい。

 ぞんざいな記載しかないマップを出し抜き、ふたりは辺境の密林を進む。

 やがて木の葉を敷き詰めた小道を抜けると、小さな村に入ることができた。

2016年 01月08日 11時40分 公開

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ