大暴れしてみた結果
何事にも原因と結果と言うものがあるらしかった。
「ロデル=カッツェ」3日間の静養を取った小父様もとい魔王は、賑々しい周囲の様相に目を見張る。「経緯を説明してくれるか」
「は、魔王さま。現在、各小国より移住した農夫たちがバリバリ畑を耕している最中にございます」
3日前の大暴れの結果できた平地には、早々と柵が建てられ、クワや鎚、斧なんかの音が響きまくっている。「やたらと手回しがいいな」
「スゴロクさま……どうかお気を悪くなさらないでくださいませね」そっと距離を詰めて囁いた事には、「どうにも勇者殿と事前に約束をしていたようなのですよ」
ナルタキとその父母の政権復帰を受けて、大荒原の開拓事業はいつでも再開できる状態ではあったが、もともと計画段階から資金面や工期などで大きな負担増となることが予測され、頓挫しかけていたのだ。
現在『東ノ都』が迎えている客人は、本来は絶対的な破壊者であるところの魔王と、それに対抗しうる勇者である。また彼の部下達であり、彼女の仲間達である。
皆々ことごとくが底抜けに明るく自由で、拘泥を持たない者たちである。これほど都合のいい事があろうか、反語。
「……そういうことか!」
「左様です」テントや仮の炊事場まで完備され柵で囲まれた開拓地を睥睨する。「まんまと利用されてしまった格好ですね、うふふ」
「そうなるか。だが、悪い気はせぬ。端から依頼という話であったしなあのケンカは。勇者殿は勇者殿で真剣に悩んでいたのだろうさ」
「殿方らしくて素敵です、いやぁ惚れ直しますネェ」
どこぞの女魔王の口癖がうつったのか、ロデルは少々妙なイントネーションでからかうように言った。
「よせよ」スゴロクは頭を掻き掻き応じる。「照れるだろうが」
周囲ではこれ見よがしに指笛を吹く者や様々にはやし立てる者が騒いでいる。絶対いるんだよなこういう奴ら……。
「ほらほら、見せ付けてあげないのー?」約束どおり3日間ノロケを聞いたはずのシオンまでニヤニヤしているからたまらない。
「するかっ! 古臭いと言われようが知らん、恋なんてな互いだけでするもんなんだよ!」
「ふーん……? 奥さんはそうでもないみたいだけどなぁ、ねえロデルっち」
半猫は顔を真っ赤にして俯いている。良人のローブの裾を引っ張って離さない。
「むぅっ……」
――魔王スゴロクの、見かけにも齢にも似つかわしくない照れぶりを擁護するとすれば。
正式な婚姻の儀まで取っておきたいのが本音だったのだ。もっと言えば、見聞の旅どころではなくなってしまいそうで恐ろしくもあった。
だが……今はそれをこそ捨て置くべきなのだろう。何処に在り何をしていようとも、この娘は可憐であり美麗であり魅惑的であるのだ。
ロリコンの謗りだろうが冷やかしだろうが受けよう。王たるもの、責任を負わねばならぬ。意を決して娘を抱きかかえると、出来うる限りの優しい口づけをした。
今日ばかりは頬や掌に逃げず、瑞々しい唇を奪ってやる。――やればできるものであるな。
初めてにしては少し長い唇への接吻を終えると、「うきゅ~……」ロデルは頭から湯気を噴いて目を回してしまう。
支えると丁度抱き締める格好になったので、周囲はますますどっと沸いた。
「言っとくが見世物ではないぞぉ~。この場は任せる、ではな!」
真っ赤な顔で言いたいことだけほざくと、魔王は問答無用で転移術を行使した。
勇者と姫君が「あいつやっぱりロリコンだぜ」とか確認しあったのはまあ、別の話である。
2016年 01月02日 15時14分 公開




