↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
66/129

魔王と勇者と(2)

「ふむ。善人ぶるつもりもないが……なぜか余の行く先には困っている者が多いのだよ。お人好ひとよしの性分でな、放っておけんのさ」

「うん、ロデルっちから聞いた」

「もうあだ名で呼び合っておったか」

「ふふん。僕だってけっこう人には好かれるんだぜー?」自慢げにニカッと笑って見せ、ふと真剣な目をする。

「ねえ? スゴロクさんはすごいね。肩書きに縛られないで、通った道が誰かの道になって」

「重いかね、『勇者』の名が」振り向いて問うスゴロクに、小さな勇者は頷いてみせる。

「僕はスゴロクさんみたいな大人じゃないし……エルヴェさんやファルチェさんみたく、強くもない。ハッキリした目標だって、今の『勇者』には決められていないでしょ?」

「当代『勇者』の事情は正直判りかねるが。貴公の才覚や勇気や実力は、『霧の森』にも公的機関にも認められている。それは揺るがない――貴公自身への評価である」

「うん。冒険は楽しいし、力とか武具の扱いにも慣れたよ」

 言葉の割に、成長できている実感が伴ってこないようだった。最初に持っていた力が大きく、大きすぎたが故の少々贅沢ぜいたくな悩みだ。

「自由すぎるのも考え物であるな」

「そうだね。貴方は、最初からすごい人だったみたいだけど」

「一応、『魔王』とかいう肩書きも持っているしな。魔界の一国の王にしか過ぎんのが実態だが」

「そっか……そうなんだ」

 スゴロクの期待に反して特に驚くこともなく、シオンは実感を込めて呟く。「貴方は、『魔王』。魔界の王たちの、ひとり」

 戦わざるべきか――良き友である事を約束し、見守り見守られる奇妙な間柄の二人である。

 戦うべきなのか――世界がいにしえより持つ一側面の法則にのっとれば、まさしく敵同士の二人である。

 小さな勇者はわずかに目を伏せて逡巡しゅんじゅんする。

彼は『魔王』だ。そう名乗るだけの能力がある。由来がある。理由がある。資格がある。

そして僕は『勇者』だ。僕にはあるだろうか。『勇者』と名乗り、呼ばれるだけの資質が、自信が。

大きな力を扱いかねていたり、仲間に頼ったりしているだけなんじゃないだろうか。もしも、今この人と全力をぶつけ合う事ができたら……分かる事もあるのだろうか?

「魔王ならぬ貴方御自身――冒険者スゴロク殿にご依頼します」緊張した面持ちで問う。

「今から、お相手願えませんか?」

 一瞬の沈黙が平原を渡った。

2015年 12月29日 10時43分 公開

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。