祝勝会あるいは赤面合戦
「お久しぶりです、スゴロクさん」
「このたびは本当にありがとうございました」
同時に礼をするのを、最大限の笑顔で受け取る。「万事、うまく運んだようであるな」
はにかんで頷くふたりに席を勧め、自身は転移術で何かを運んできた。「今すぐに食せるのはこれだけであるが……」
薄切りの生ハムを盛った見事な金箔の皿、スープで満たされた平たい大杯。見るからにパリパリフワフワの焼きパン。おまけの果物までを配り終え、「たんと食え」
微笑んで自らも席に就いた所作は、魔王というより優しき賢者のそれである。
少女は歳に似合わないほど丁寧な物腰で歓待に礼を述べ、生ハムに口を付けた。「うわぁ……おいしい!」子どもらしく頬を赤らめて笑み、パンやスープを次々と口に運ぶ。途中で運ばれてきた料理にも二人して舌鼓を打ちまくり、歓談と食事を楽しむ。
「いやぁ、お酒が進みますねぇ。よかったよかった」
シェリー=シュヴェアートは可愛い顔して酒豪である。
今も冒険旅行の土産らしい酒を陽気に飲んでいるが……。
「あ……アルコール度数97……シェリーさまってすごい」
「あら、ニーナもお酒には強いはずよ。年齢的にまだ飲めないでしょうけど」
「え」
「軍のお給料の殆どをお酒に費やす私のようにはならないようにね。貴女に限ってそれはないか……良い奥さんになりそうだもの」
「あ……は、はぃ……」
奥さん、という言葉だけで赤面し、少女は俯いてしまった。
「こらこら、あまり幼子をからかうでない」
「兄上だって、さんざかジェシー君を煽っていたじゃありませんか」
「あ……あれは後学のためにだな」
「何の学習だか……ねえロデル?」
「え!? あ、は、そ、そのぉ……」
「ふふ、真っ赤になっちゃって。早く婚約発表しちゃえばいいのに。皆喜ぶと思うけどなぁ」
しれっと知らされた新事実(結果的にそうなった)に驚いて、少年と少女は素っ頓狂な声を上げた。
「何で早く言わないんだよもう……」
「ぜんぜん気づきませんでした……」
二人して押し黙ってしまった。甘ったるい空気に気まずい沈黙が落ちる。
「ぐ……余の不徳の致すところである」
「うー……恥ずかしいですぅ……」
魔王と側近までが赤面してしまい、
「何だこの雰囲気わ」
「愛よねぇ……」二人の龍族は苦笑を浮かべるのだった。
2015年 09月14日 10時12分 公開




