関わるな、と本は言った
見てる方が面白いのは事実だった。
けれど、断った理由はそれだけじゃない。
レンに誘われたとき、違和感があった。
引っかかるような感覚。
理由は分からない。
ただ、少しだけ気になった。
ふと思い出す。
今日の朝。
気になって、とうとう机の上の本を開いた。
ページをめくり、見慣れた筆跡を目で追う。
一文に、目が止まる。
――参加するな。
――関わるな。
「……」
短く、それだけ。
説明はない。
でも、はっきりとした言葉。
――参加するな。
思い出した。
感じた違和感。
「どした?」
「やめといたほうがいいかも」
レンに誘われた時、気がつけば、そう言っていた。
「?」
「え、なんで?」
「……なんとなく」
マリナに聞かれたが、うまく言えない。
二人とも首を傾げたままだ。
でも、確かにそう思った。
「そっかー。まあ、それなら仕方ないか」
レンは少し考えるそぶりをした後、笑って言った。
「どうしよう。俺も参加しないでおこうかな」
「レンーっ! 早く来いよーっ!」
「……」
「呼ばれてるよー」
「……」
「呼ばれてるよ」
「はいはい。なんか俺への当たり強くない?
もうちょっと引き止めてくれたっていいじゃん……」
軽い空気になる。
レンもマリナも、それ以上私の言葉について聞いてくることはなかった。
それが私にはありがたい。
「なんか早く行けって空気出されてるから行くわ。参加しない分、倍楽しんでくるな!」
「後から来てもいいからな。じゃあ!」
「感じ出してないしー。行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい」
マリナと私の言葉を聞いて、レンが走っていく。
人の輪の中へ入っていき、一瞬で沢山の人に囲まれる。
その後ろ姿を、ぼんやりと眺める。
外はより一層賑やかになり、とても楽しそうに見えた。
でも。
本の言葉が、頭に残る。
――関わるな。
未来への注意。
そう考えれば、今まで本に書かれていたことにも納得がいく。
これから起きる何かを避けるための言葉。
あるいは、何かを得るための道標。
もし、そうだったら。
家に帰った瞬間、母に声もかけず、自分の部屋へ向かう。
扉を閉め、机の上に置かれた本を開く。
朝と変わらない位置に、それはあった。
参加するな。
関わるな。
その言葉から少し離れた場所に、また新しい文字が書かれていた。
――騒がしくなったら離れろ。
――そうすれば助かる。
「……」
これが何を意味するのかは分からない。
だが、もしこの言葉通りに動く機会が来て、それが正しい結果に繋がるのなら。
今日感じた予測は、もっと確かなものになる。




