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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
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1、城塞都市アイアンゲート

よく晴れた空の下、草原の道を進むローブ姿の三人がいた。


丘を越えた先、遠くにそびえるのは彼等の目的地――城塞都市アイアンゲート。


「ようやく見えてきたな」

「そうだね、もうすぐ任務完了だね。」

大きな影が小さな影に声をかける。



城塞都市アイアンゲートは大陸東部、アルカディア王国に属する都市である。

公爵ファルコンハート家が治める豊かで堅牢な都である。

三人が見据えるのは、その威容を誇る城塞だった。



「ソフィア様、疲れてませんか? 休憩しますか?」

「ありがとうございます。大丈夫です。このまま向かいましょう」

ソフィアの返事に二人は頷き、歩みを進めた。



――一時間後、三人は城門に到着する。


「来訪の目的と人数をここに記してください。身分証を提示して下さい。」

城兵が三人に告げた。


今回の任務は、アルディア教のシスター、ソフィア・グレースフィールドを

城塞都市アイアンゲートの教会《鋼の契約堂》へ送り届けること。


同行者は二人の冒険者――

オーガの戦士ガルムと、ハイエルフの魔法使い、ソレンディル・シルバーレイン。

彼等の身分は冒険者ギルドカードで確認された。

シスター、ソフィアは信徒証と紹介状で身元が証明された。


この都市の兵士たちは規律正しく、応対も丁寧だ。

オーガであるガルムに警戒を示すことも、ハイエルフである美貌のソレンディルに軽口を叩くこともない。


城塞都市アイアンゲートは二重の城壁を持つ。

外壁をくぐれば畑や牧場、村落が広がり、さらに数キロ進めば第二の城壁に至る。

その内側には石畳の道が走り、高楼が並び立つ城下街が築かれていた。


昼を少し過ぎた頃に丘を越えた三人だったが、城下街に入る頃には時刻は夕刻へと差しかかっていた。


「ソフィア様、街にお詳しいのですか?」

ガルムの問いに、ソフィアは微笑んで頷く。


「生まれてから最近まで住んでいました。

 右手に宿屋街があります。食事を取るなら宿でもよいですが……

 街の情報を得るなら、居酒屋が良いですね。」



「もしや、シスターも酒を?」

「いいえ、お食事だけです。」

「ガルム、ばかだね!」


ソレンディルが呆れたように割って入る。

三人は宿屋シールドアームズ・ホステルに宿を取り、賑やかな居酒屋通りを歩いた。

屋台が並び、明るい声と香ばしい匂いに満ちている。


「随分活気があるよね。」

「そうですね。ここは領主様が衣食住を保証していただけるので、人々は毎日を楽しんでいます。

 ……今日はあそこにしませんか。」

ソフィアが指差したのは、三階建ての大きな建物。


”ストロングホール・サロン”と掲げられた看板が魔法灯に照らされて輝いていた。

入口に立つ緑のエプロンを掛けた青年がソフィアに声をかけてきた。


「こんばんは、シスター。ここ最近お見かけしませんでしたが、出張でしたか。」

「こんばんは、アラン。他の教会で研鑽を積んでいたから、少し開いてしまったわね。

 お子さんはお元気ですか?」

「ええ、もう三つになりまして。お時間があればぜひ、お顔を見せてやって下さい。

 本日はお連れ様がいらっしゃるようですね。

 少しお待ち下さい。お席をご用意します。

 まもなく一階のダンスホールでは歌姫セレスティア・ヴァイスによる《星空の調べ、夜想曲》が始まります。

 どうぞそちらもお楽しみください。」


ガルムは不思議に思った。

身長2メートル50センチもあるオーガの自分に、誰も驚いたり、騒いだりしていない。

珍しくないのか?それとも亜人を見慣れているのだろうか。

普通ならオーガの冒険者は珍しいので、何処に行っても大体騒ぎになる。

今日は誰も奇異な眼で見てこない。


「ご用意出来ました。ご案内致します。」

三人は二階の奥にある円卓の席に案内された。


メニューを読んでもどんな料理か想像が付かないので、お店のおすすめをお願いした。

エールを二つ、アイスティーを一つ頼のんだ。


「シスター、無事に街に到着しましたね。」


「そうですね。明日教会に向かいます。旅の護衛任務お疲れ様でした。」


「魔物に遭遇しませんでしたから、思ったより早く付きましたよ。」


「ありがたい事です。女神の加護があったからでしょう。」


「ハルヘルム連合国から、このアルカディア王国まで来られる理由を聞いても良いですか。」

ソレンディルがソフィアの表情を見ながら問いかける。

ソフィアは笑顔で快諾してくれた。


「この城塞都市アイアンゲートにはアルディア教会”鋼の契約堂”があります。

 ”鋼の契約堂”にて治癒、解毒、呪いの解除といった魔法の習得します。

 この先、私がシスターとして派遣される際に必要な魔法技術です。

 ここ城塞都市アイアンゲートは、鉱山を所有し鍛冶も有名な場所です。

 付与魔法を施す魔法師が常時在住している珍しい場所です。

 そこで武器、防具の付与魔法も一緒に習得出来ればと考えてます。

 将来的に私の使命は、アルディア教のシスターとして、魔獣討伐に同行して、討伐に貢献する事です。」


「魔獣討伐の同行もするんだね。」


「はい、教会では冒険者組合に拠出金を出せない村や街から、魔物討伐の依頼があります。

 その場合、教会がパーティーを組んでクエストに臨む事があります。

 私は攻撃参加出来るように、モンクの修行しています。治癒師として後方支援で同行することになります。」


「それは大変な道のりですね。」


ソレンディルはまだ若いのに、困った者の為に献身しようと考えているソフィアが健気に見えた。

ガルムはソフィアの話を聞きながら、美味しい料理と大ジョッキのエールを楽しんでいる。


「ソフィア様、下の階で演目が始まるんですか?」


「歌とダンス、演劇、皆で踊る時もあります。

 何度か来ているけれどいつも何かやってます。」


ガルムはオーガだが、歌やダンス、演劇等が好きなので、ソフィアの返事に、楽しみだと思った。


「ちょっと観に行ってきてもよろしいですか?」


「ご自由にどうぞ、ぜひ楽しんでいって下さい。」

子供のようにはしゃぐガルムを見ながら、ソフィアは微笑みながら見送った。

ガルムはジョッキを片手に階下へ降りていった。


「そういえば移動中に聞きませんでしたが、オーガの戦士とハイエルフの魔法使いが、どうして組んでいるのか聞いてもいいですか?」

ソフィアがソレンディルに尋ねる。


ソレンディルは大陸北端のエルフが治める、エルメリオン王国にある"エフェメロスの谷"の集落で生まれた。

エルメリオン王国の王都エルムウィンドの王立魔法学校で魔法を学び、首席で卒業した。

彼女の研究テーマは古代の歴史、魔法であった。王国には古代語ハイエイシェントで書かれた石板が、多数存在する。

何百年と世代を受け継がれて研究されているが、解明が進んでいない。

彼女は王国にいる限り研究は進まないと考え、国外に出ることを決めた。


彼女は将来を期待させる逸材であったので、国を出るのに大変惜しまれた。

彼女の外見は金髪の長髪で、エメラルドの様に美しい緑の瞳の美しい女性である。

父のグレンディルは息子を希望し、名前は男子のような名前となってしまった。

美しく、賢者候補の彼女が国を去ることを王族も惜しんだ。


彼女は冒険者として、パーティーに参加したり、討伐に参加したりしながら、答えを求めて大陸を彷徨った。

その最中、大陸中央部の火山地帯にあるオーガの村に辿りついた。


村がある山岳の山頂付近にドラゴンが住み着いた。

ドラゴンは戯れで村を襲って来る。その度に死傷者を出していた。

オーガの村にとって炎を吐き散らかすドラゴンは"厄災"でしかなかった。


オーガの村長は冒険者のソレンディルにドラゴン討伐の協力を申し出た。

ドラゴンの素材は魔法の触媒に使え、危機に瀕した村を「経済的、ドラゴン被害から」救えると彼女は考えた。


ドラゴンは火属性のファイヤードラゴン。

ソレンディルは村で戦える戦士を二十人と共にドラゴン討伐を開始した。

ドラゴンは皮膚が固く厚い、爪が鋭く、炎のブレスが危険だ、必殺の尾による一撃がある。


ソレンディルは氷槍フロストランスを連続でドラゴンに打ち込んだ。

火炎のブレスで氷槍に対抗してきたが、意識をソレンディル側に向けると、オーガ達がバスターソードで四方から斬りつけて来る。

前脚の爪でオーガを薙ぎ払おうとするが、オーガ達は打ち合わず爪を躱す。

その隙にオーガ達は尾を斬りつける。ブレスを吐こうとしている開いた口に目掛けて氷槍フロストランスを打ち込んでブレスを封じた。

そして体全体を氷結させてから火炎魔法で強固な鱗にヒビを入れた。

オーガの戦士たちはヒビを斬り裂いて傷を広げ、ソレンディルは傷口から血流を凍らせてドラゴンを打ち倒した。


ガルムはまだ若く、戦いに参加させて貰えなかった。

しかし、自分より大分小さいハイエルフがドラゴンを討伐した。

村を救った。森や自然を魔法により元のように取り戻し、村に平和が戻った。

ドラゴンの素材を売り、村の経済危機からも救ってくれた。

彼はその光景を見て感激した。自分も戦士になって"厄災"から人々を救いたい。

強くなりたい。その一心でソレンディルについて村を出立した。


それから数十年2人で冒険してきたとソレンディルが教えてくれた。

ソフィアは二人の出会いが情緒的だと思った。


「この次はどこに行くんですか?」


「目的地が珍しい鉱石で強い武具が有名な、城塞都市アイアンゲートについたので、良い武器や防具があるといいなと思ってます。

 なので冒険者ギルドで登録して、少しこの街で過ごそうかと思ってる。」


ソフィアはソレンディルの言葉を聞きながら、それは良いことを聞けたとほくそ笑んだ。


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