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エーテルリウムの黄昏  作者: お茶どうぞ
1/41

1、城塞都市アイアンゲート


 よく晴れた天気の元、草原の道をゆくローブを羽織った3人の姿があった。


 丘を超えて遥か先に見えるのは目的地である城塞都市アイアンゲート。


 「ようやく見えて来たな。」

 「そうね、もうすぐ任務完了かしら。」


 大きな人影が小さな人影に話しかける。


 城塞都市アイアンゲートは大陸の東側にあるアルカディア王国

 公爵ファルコンハート家が治める大きな都市である。


 彼らが見ているのはその城塞である。


 「ソフィア様お疲れでは?休憩致しますか?」

 「ありがとうございます。大丈夫です。このまま向かいましょう」


 3人目が返事すると3人は歩きを進めた。


 それから1時間後、3人は城門に辿りついた。


 「来場の目的と人数をここに記して下さい。身分証明証を用意して。」

 城兵より告げられる。


 3人の目的はアルディア教のシスター、ソフィア・グレースフィールドを

 城塞都市アイアンゲートの教会”鋼の契約堂”へ送り届ける事。


 3人の内訳は2人が冒険者、種族はオーガの「ガルム」、同職のハイエルフ

 「ソレンディル・シルバーレイン」身分証は冒険者ギルドカードにより

 確認した。シスター、ソフィア・グレースフィールドはアルディア教

 徒の証と紹介状により確認が取れた。


 ここの城兵は公爵エドガー・ファルコンハートの規律が良いのか対応が良い。

 特にオーガであるガルムにつっかかったり、美形のソレンディルに無駄口を

 叩く事もいなかった。


 城塞都市アイアンゲートは城壁が2重になっており、1重目の城壁を通ると

 畑や牧場、村落部が広がり、そこから数キロ行くと2重目の城壁に到達して

 中に入ると石畳の道路が広がり高い建物が連なる。城下街が広がる造りに

 なっている。


 丘の上に居たときは昼を少し過ぎた位だったが城下街に入る頃には時刻は

 もうすぐ夕刻になりはじめた。


 「ソフィア様ここにはお詳しいので?」

 ガルムがシスターソフィアに尋ねる。

 シスターソフィアは少し微笑みながら頷く。

 「私はここは何度も訪れているので分かりますよ。

  入ってすぐ右手が宿屋街です。宿屋でお食事も取れますが街の情報を

  手に入れるには居酒屋が良いですよ。」

 「居酒屋ってシスターソフィアはお酒がいけるんで?」

 「いいえ、お食事は一緒にいただけますわ」

 「バカね!」

 ソレンディルが呆れたようにガルムに答える。


 3人は宿屋「シールドアームズ・ホステル」に宿を取り、居酒屋通りを

 歩いた。居酒屋通りには沢山の屋台が出ていて非常に明るくて活気がある。


 「外から見た景色とは違って中は凄く活気があるんですね。」

 「そうですね、ここの人達は凄く明るくて毎日を楽しんでます

  今日はその先のストロングホール・サロンにしましょう。」


 シスターが指を指したのは3階建ての大きな建屋。

 表に”ストロングホール・サロン”と大きな看板が掲げてある。

 まるで白熱球のようなランプに照らされている。生活魔法による明かりだ。


 入口に立つ緑色のエプロンを下げた若い男性がシスターを見て声を掛けた。

 「こんばんわシスター、お久しぶりですね。」

 「こんばんわアラン、お子さんは元気?」

 「家の息子ももう3つになりましたよ。

  お時間ありましたら我が家に起こし下さい。

  今日はお連れがいらっしゃるのですね。それではお席をご用意致します。

  もうすぐ1Fのダンスホールでは歌姫セレスティア・ヴァイスによる

  ”星空の調べ・セレスティアの夜想曲”が開催しております。

  お楽しみ下さい。」


 ガルムは不思議に思った。身長2メートルあるオーガの自分に誰も驚いたり

 騒いだりしない。珍しくないのか?それとも亜人等見慣れているのだろうか。


 普段オーガの冒険者は珍しいので何処に行っても大体騒ぎになるが、ここ

 では誰も奇異な眼で見てこない。居酒屋でからまれるなんて最低だ。


 3人は2階の奥にある円卓の席に案内された。

 メニューの内容は分からないのでお店のおすすめをお願いした。

 2つエールを頼む。


 「それにしてもシスター無事に到着しましたね。」

 「そうですね。明日教会に向かいます。旅の護衛任務お疲れ様でした。」

 「シスターはかなり健脚でしたので思ったより早く付きましたよ。

  それに強い獣や魔物に襲われませんでしたからね。」

 「ありがたい事です。健脚なのは普段から鍛えてるからですよ。」

 「アウレリウス連合国からわざわざこのアルカディア王国まで来られる

  理由をお聞きしませんでした。

  よろしければどういう任務なのかお聞きしてもよろしいでしょうか。」


  ソレンディルがシスターソフィアに問いかける。


 「お答えするのに問題ありませんよ。この城塞都市アイアンゲートには

  アルディア教会”鋼の契約堂”があります。

  アルディア教は愛と癒しの女神アルディア女神を崇めます。

  そこで”鋼の契約堂”にて修練して治癒、解毒、呪いの解除といった

  魔法を修練して身につけます。

  冒険に出るシスターやモンクの装備品に付与魔法を施す事も出来ます。

  ここ城塞都市アイアンゲートは鉱山を所有し鍛冶でも有名な場所です。

  そこに付与魔法を施す魔法師がいる珍しい場所です。

  その上公爵エドガー・ファルコンハート様のご助力により”鋼の契約堂”

  運営がなされいる場所なんです。

  私の任務はアルディア教のシスターとして独り立ちするために、この地

  にて魔法の修練する事。魔法を習得したら各国の教会に派遣されます。

  その為にここに来ました。」

 「魔法の習得、そういう事なんですね。」

 「何年で習得出来るかは人により違います。私は20歳まで体力を鍛え、

  魔法習得の修練に耐えられるように準備して来ました。」

 「だから一般人より健脚だったんですね。」


 ソレンディルが得心している。

 ガルムは美味しい料理と大ジョッキのエールを楽しんでいる。

 「この店では演目があるんですか?」

 「歌とダンス、演劇、皆で踊る時もあります。私が初めてこの地に連れて

  来られたのが15歳でした。依頼何度か来ているけれどいつも何かやって

  いますね。」


 ガルムはそれは楽しげだと思った。

 「ちょっと観に行ってきてもよろしいですか?」

 「ご自由に楽しんで」

 シスターソフィアは微笑みながら返答する。

 ガルムは下へ降りていった。


 「護衛の依頼をした時には聞かなかったけれど、どうしてオーガの戦士と

  ハイエルフの魔法使いの組み合わせになったの?

  聞いてもよろしいかしら?」

 シスターソフィアがソレンディルに尋ねる。


 ソレンディルは北のエルフが治めるエルメリオン王国にある

 "エフェメロスの谷"の集落でシルバーレイン家に生まれた。

 生まれてから保有するマナの量が多く、エルメリオン王国の王都エルム

 ウィンドにて魔法を学び、素晴らしい逸材となった。

 ソレンディルは魔法を学ぶうちにさらなる未知の魔法を求め、外の世界に

 出ることを決めて冒険の旅に出た。


 ソレンディルの外見は金髪の長髪が美しい女性である。

 父のグレンディルは息子を希望し名前は男子のような名前となってしまった。


 エルメリオン王国の吟遊詩人は彼女の事を

 "金の泉に髪を梳し、エメラルドの星が宿るその瞳、ソレンディル。

 彼女の髪は太陽の光を纏い、その輝きはまるで黄金の瀑布。

 翠の宝石、エメラルドの瞳は、深い森の奥深くに秘められた秘密の扉。

 夢見心地に見つめられるその瞳は、まるで魔法の扉が開かれたよう。

 彼女の美しさは、まさに花々の儚さと重なる。

 風に舞い散る金の花びら、エメラルドの葉のような姿。

 彼女はまるで自然そのもの。

 少女のようなソレンディル、君の美しさは、まるで夢の中の詩。

 風に揺れる金の髪と、星のような瞳が、物語の始まりを告げているか

 のよう。"


 このような謳われ方をしたものだから王族も彼女が国を去ることを

 惜しんだとか。


 彼女はやがて大陸中央の山岳火山地帯にあるオーガの村にたどり着く。


 村は”厄災”とされていたファイアードラゴンの被害にあって多くの

 死傷者を出していた。


 ドラゴンは皮膚が固く厚い、爪が鋭く、得意のブレスで圧倒してくる。

 強力な尾の一撃がある。


 しかし火炎のブレスを吐くファイヤードラゴンは氷系との相性が悪く、

 ブレスを吐く時に踏ん張る為に地上に降り立つ。

 空中では踏ん張れないのでブレスは威嚇にしかならない。


 ソレンディルは氷の槍を空に張り巡らしファイヤードラゴンの制空権を

 取りに行った。


 ファイヤードラゴンは冷気に弱く、氷系の攻撃には劈くような激痛を

 ダメージとして受ける。


 地上に降りて両翼で氷の槍を薙ぎ払いながらブレスを吐くしかない。


 オーガ戦士がブレスを盾で相殺している、ソレンディルはピンポイントに

 盾をブリザードで覆いブレスの熱を低減させる。


 ガルムが"イグニスソード"で皮膚を裂きダメージを加える。

 ソレンディルは氷の槍を地面からドラゴンに突き立て気を散らす。

 "イグニスソード"は刃に炎の紋章が浮かび上がり、握り手には灼熱の石が

 埋め込まれている。剣身が赤光に輝き、切り裂いた部分から炎が立ち上がる。

 魔法が込められた剣でありドラゴンの皮膚を裂くことも出来る。

 裂けた傷口からファイヤードラゴンの血流が燃え上がる。


 戦いは優位に進み見事ファイヤードラゴンを倒した。

 ソレンディルは村の負傷者の傷を癒やし村に滞在した。

 ガルムは関心していた。

 オーガである自分は戦士として十分な力があると自負していた。

 それがこんな少女のような魔法使いに助けられた事を。

 又柔軟な魔法の使い方を。

 ガルムはソレンディルの旅に同行する事を申し出た。

 ソレンディルと組めばもっと強くなれる。強くなりたい。

 彼はそう思った。

 それから数十年2人で冒険してきたとソレンディルは答える。


 「この次は何処に行かれるの?」

 「今回任務先が城塞都市アイアンゲートだって聞いていたので新しい

  魔法や、装備等を探しについでに立ち寄れたら良いなってガルムと

  話してたんです。

  明日冒険者ギルドに立ち寄ったら街を散策してみます。

  しばらく滞在する予定です。」


 二人はそう言葉を交わした。


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