1話 天を恨む
過去編から見るのも良きです。
今日は、審判の日である。俺にとっては心が穏やかとは言えないイベント、席替えの日だ。席は完全にランダム。これすなわち、俺の高校生活を天に任せると言っても過言ではないのだ。
女子が隣じゃありませんように。何度もそう心の中で願った。なんなら昨日俺は、それを願うためだけに神社に行ってきた。
くじ引きの順番がやってきた。唾を飲み込み、俺は箱の中に手を入れた。他のくじが俺の汗で全てとけてしまうんじゃないか、そう思うほどに俺は手汗をかいていた。俺は覚悟を決め、勢いよくくじを引いた。俺の新しい席は、一番左の窓際だった。そしてすでにもう隣は決まっていた。23番と書いてあった。名簿23、一体誰だったろうか?俺はクラスラインを開き、名簿を確認した。
ガタン
床に何かが落ちる音がした。そしてどうやらそれは、俺のスマホだったらしい。あまりの不運に、俺は抜け殻のようになってしまった。なんと俺の席の隣は、篠崎美結だったのだ。
彼女はこの学校で、ちょっとした有名人だ。理由の一つは、その可愛さである。認めたくはないが、顔に関して言えばかなり可愛い。そしてもう一つ、大の男嫌いとしても有名だ。多くの男子生徒が、彼女に告白し、玉砕してきた。それだけならまだしも、
今とても動揺している。隣は男がよかった。たとえ女だとしても、穏便に生活できそうな女子がよかった。
全員の席替えが終わった。各々がにぎやかに移動する中、俺は疲弊していた。彼女はすでに座っていて、机に突っ伏して寝ていた。俺は出来る限り彼女を起こさないようにゆっくり椅子を引き、静かに座った。
「はいそれではみなさん、軽く隣人と挨拶でもしてください」
この教師は何を言っているんだ?初対面の人間と話す難しさを理解して言ってるのか?ましてや俺の隣は女なんだぞ!?
「ん〜」
美結は眠そうな声を出しながら、むくりと起き上がった。
「確か、海晴くんだよね?よろしくね」
拍子抜けだった。自分の印象とは違い、美結の物腰はやわらかかった。まあだからといって、俺の女に対する苦手意識が消えるわけじゃないがな
「よろしく」
俺は目を合わせることなく、暗い声でそう返した。
流石に感じが悪すぎたか?
俺は罪悪感から美結を一瞥した。
美結はキョトンとした表情でこちらを見ていた。そして俺はあることに気がついた。指摘するべきか、しないべきか…..
女嫌いとか関係なく、人として指摘するかあ。
「……」
俺は結局無言でティッシュを差し出して、指で自分の口元を指し示した。美結はさらにキョトンとした顔を深め、数秒後に顔を赤らめた。そして口元を慌てて拭いていた。何があったかというと、美結の口周りに結構な量のよだれがついていたのだ。
「あ、ありがとう」
「おう」
なんだ。思ったより普通に話せそうじゃないか。
そんな曖昧な安堵は刹那にして砕かれた。
「前の席美結かよ〜。がち最悪だわああ」
そんな女子の声が、後方から聞こえた。
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