第32話 収納箱
工房に帰ったらすぐにお風呂の用意を始めた。
錬金鋼術兼鍛冶工房なら炉の熱を利用して湯を沸かせようなものだが、熱気が満ちる工房から熱いお風呂に入ろうとする職人はいない。水を被るのがほとんどだ。
「毎日入って欲しいものだ」
汗臭くて嫌になる。これだから工房での生活は長続きしないんだよな。
井戸から水を汲み、三十分掛けて湯船を満たした。ふー。
「レイって力があるのね」
「その細い体のどこに秘めているの?」
「これは身体強化魔法だよ。騎士とかがよく使っている魔法だね」
「あるとは聞いていたけど、難しい魔法じゃないの?」
「うーん。魔力があればそう難しくはないよ。まあ、魔法に頼るより体を鍛えたほうが早いんだけどね」
レベルアップはないが、成長力は前世の世界より五、六倍は高いと思う。極めたヤツは二、三百キロのものを持てたりもしている。人間の形をしていても人間じゃないんだよ、このファンタジーなワールドではな。
……ジージーでも勝てないだろうな、極めたヤツには……。
手を湯に入れ、熱魔法で沸かした。
「よし。入ろうか」
四人ではちょっと狭いが、まあ、女同士、裸の付き合いをしましょうか。
服を脱いで、お湯を何度か掛けて表面の汚れを流してから入る。
「レイの魔法、便利よね」
「風呂とか何年振りだろう? やっぱいいわ~」
二人はお風呂の経験があるようだ。この時代では盥にお湯を溜めて入るのが精々だからね。
「これで水魔法が使えたらいいんだけどね」
身体強化魔法があっても湯船に水を溜めるのは一仕事だ。町だと水を引くのも大工事になる。山での暮らしがいいってなっちゃうんだよな。
「それか、収納魔法だね。金属製の収納箱があるなら複製出来るからさ」
金属に掛けられた魔法ならボクの錬金鋼術で解析出来る。そして、再構築させれば同じものを複製出来るのだ。
「……それならわたしが持っているわ」
「マジで? ボクに言っちゃったりしていいの?」
普通、金属製の収納箱なんてない。いや、貴族ならあるか。この時代でも金庫はある。財産を隠すために収納箱を使っていると聞いたことあるわ。
「あなたなら構わないわ。わたしたちに害を与えそうな人に見えないしね」
「槌に誓って約束する。このことは誰にもしゃべらないと。ジージーも収納箱のことは内緒だよ」
「わかったわ」
うんと頷いてくれた。
「金属製の収納箱があるなら水筒が作れる。その収納箱の容量次第だけどさ」
「巻物が三十本は入るわ」
巻物? 魔法習得書か? 魔法を記したものが実家にもあったっけ。
「三十本か~」
物にもよるが、巻物三十本なら十リットルはイケるか。魔法を改築させたら倍はイケそうね。てか、なんか益々仕事を増やしてんな、ボク!




