第311話 白老の宿
賑やかな町だった。物も人も溢れている。ここにはもう戦争の跡はなかった。
露店も多く、生活品から食料品まで、多種多様なものが売られていた。
以前なら資金稼ぎに働いていたところだが、今は充分な資金がある。好きなものが買えるだろう。
と言っても欲しいものはないんだけどな。収納の鞄には食料が入っているし、服も下着もこの時代では最高のもの。宿暮らしになるので生活品もあおらない。見るだけで買うことはなかった。
そのまま道を進み、いい匂いをさせる串焼きを買った。
たぶん、ウサギの肉だろう。大陸は違ってもあまり味は変わらない。露店ごとの塩加減の違いだろう。
「悪くない」
「タレが欲しいわ」
すっかり味覚が贅沢になったハラーシ。塩では満足出来なくなっているようだ。
ボクはまだ贅沢になってないのでこの味で満足。もうちょっと食べたいので追加で二十本を買って、なんかの葉に包んでもらった。
「おじさん。この辺に宿屋はある? 安い宿じゃなく高い宿」
串焼き屋のおじさんに尋ねてみた。
「それならこの先のハーゼン通りにあるよ。黄色い幕が掲げられている通りだ。中の上の宿が何軒かある」
上客には口が軽くなるのはどこでも同じのようだ。
おじさんの言うとおりに向かうと、確かに黄色い幕が掲げられた通りがあった。
商店街、って感じでもなく普通の通りだ。小さな店が並び、大小様々な宿屋が左右にあった。
どこがいいかなんてわからない。なので、食堂もやっている宿屋に決めた。
時間的にまだ早いが、これと言って見るものもないので宿て休むとする。まっ疲れてもいないんだがな。
綺麗な店構えで、中も綺麗だった。カウンターには十歳くいの少年が立っていた。珍しいこと。
「ようこそ、白老の宿へ」
白老の宿? 随分と変わった名前だこと。白髪の老人が始めたのか?
「とりあえず、五日ほどお願い」
それくらいあればかなりの情報が集まるだろうよ。
「あと、二部屋も取ってくれる? 男三人、女二人。いや、一人は体格がいいから三部屋で」
サザンの町は小さな町だったから男と女にわかれていた。ここなら部屋もあるだろうからゆっくり使うとしよう。
前金として金貨を一枚出した。こまけー計算はいいんだよ、だ。
「はい、わかりました」
金貨の威力はかなり高いようだ。少年の顔が輝いている。
少年が奥に走ると、女将さん的な人を連れて来て、この宿で一番高そうな部屋を用意してくれた。ボクが考える以上に高い宿屋だったか?
まあ、お金の心配はないのだから構わないか。もうダニとかいそうな宿屋とか二度と泊まりたくないしな。
チップ制とかないが、快適に過ごせるよう少年に銅貨を二枚、握らせた。
「ありがとうございます!」
とても喜ぶ少年。お小遣いとかもらってないんだろうか?




