第30話 収納の鞄
防具屋に入り、ジージーに合う防具を選んでもらうとする。
その間、ボクは店主と交渉だ。お金ではなく、錬金鋼術士としての腕で防具を安くしてもらうために、ね。
「グランジック家のお嬢様がこの町にいるとは聞いていたが、あんただったのかい」
「家宝の魔剣を折って勘当されちゃったけどね」
「……魔剣って折れるものなのか……?」
「そこは錬金鋼術士としての才と集中力だね。盾があるならボクの腕を見せるけど」
それならと、変形した丸盾を持って来た。
片手剣を使う者が使う丸盾。木に鉄板を打ち付けた、よく見るものだ。
「作業場を借りていい?」
「あ、ああ」
と言うので店の奥にある簡素な作業場を借り、丸盾を修復、変形、構築、硬化を施した。
他所から見たら素材鉄を溶かして張り付けたように見えるだろうが、ここはファンタジーな世界。魔法がある世界。ただ鉄を打っているようでも錬金鋼術士にしたら魔法詠唱しているようなもの。血筋と努力と好奇心で極めた魔法なのだ。
理屈? そんなもの考えるな感じろさ。ボク、天才なんで、とか言っちゃって~。深く追及しないでくださいませ~。
「どや?」
修復させてさらに強度を増した丸盾を店主に見せた。
「……す、凄い。なんかミスリル並みに輝いている……」
「さすがにミスリルみたいな効果は出せないけど、火の矢や火球程度なら余裕で弾くよ」
ボクは火の矢や火球を放てないので試すことは出来ないけどな。錬金鋼術士は戦闘型じゃないんでね。
「これで防具代を安くしてもらえる? 万が一、質が悪かったらマリュード工房に持って来てよ。損害金を払うからさ」
「いや、質のいいのらわかる。伊達に三十年も防具屋はやってない。お前さんの腕を信じるよ。お代はタダにするよ」
そうでしょう、そうでしょう。見る目がある店主でよかったよ。
「他にもやって欲しいものがあるならマリュード工房に持って来て。収納の鞄が欲しいからさ」
「それならうちにあるぞ」
あるの!? 貴重なものだよ!
「冒険者を引退するヤツにお願いされてな、店の金を出し切って買い取ったんだよ。お陰で数日分の金しかない。売れるかわからんものよりお前さんに売れるものをこさえてくれたほうがこちらとしてもありがたいのさ」
「任せて。その分の働きはするから」
宇宙船を手に入れられて、収納の鞄も手に入れられるとか、ボク、どこまで運がいいんだ? なんか逆に怖くなってきたよ!
「ああ、期待しているよ」
なにはともあれ、収納の鞄を手に入れるためにがんばりますか!




