表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/48

フンドシと、例のお買い物品

 今日は商会をお休みして皆で「海開き」に来ました。

 これはヤポナの夏の恒例行事の一つだ。特にカキノウチ家では毎年の大事な行事なんだそうで。


 オランシアでは海でも川でも湖でも、何時でも好きな時に入っても良く、もちろん冬場は泳ぐことはまずないけれど、釣りとか氷取りとかスケートとかに行く。

 その代わり、事故などはそれぞれの責任でもあり、流石に子どもだけで行くことはほとんどない。


 ヤポナは島国で海に囲まれ川や湖も多いからか、水に馴染みが深い反面、悲しい事故も多いとか。

 そのため、国をあげてそれらに対応されており、水辺の整備がきちんとなされていないところなどを中心に、立ち入りが禁止されたり制限されたりするところがある。


 海も基本的に自由に入れるのは暖かい季節の一時期だけで、その他の時期は申請を出さなければならない。

 要するに、この「海開き」は今日から海に入ってもいいですよ、回りの設備も使えるようになりましたよということを知らせる日であり、なおかつ、海水浴をはじめ、船の運行や海産物の取得など、海に関することでの安全を祈願する日でもあるらしい。


 カキノウチ家は商会という商売柄、船による貿易もしており、また扱う商品の中には、当然ながら海産物もあるので、この「海開き」はカキノウチ家にとっては大事な行事の一つなのである。


 では具体的に何をするのかというと......私とお義母様は基本見てるだけ。頑張るのは旦那様とお義父様。


 今、沖の方に大きな筏のようなものが見えているのだが、十数人の参加者がそこまで競争するのだそうだ。

 筏の上には海の神様に捧げる数種類のお供え物が置かれており、一番になった人がそれを海の神様に捧げる名誉を勝ち取るということらしい。


 誰がやったって良いじゃないと思わないでもないが、「そんな見も蓋もない、楽しみなさいよ。」とお義母様に言われ、それもそうかと始まるのを待つ。


 とりとめのない話をしているうちに、旦那様やお義父様を含む参加者たちが用意できたのか、臨時に建てられた建物からぞろぞろ出てきた。


 キャーッ!!!


 何あれ~!


 前の大事なところは、ヒラヒラしたもので辛うじて隠されているが、後ろは......Tバーック!!


 私の旦那様が皆の前でTバーック!


 お義父様もTバーック!


 もちろん、全員Tバーック!


 お尻、お尻、お尻~! !!


 なにごと~!


「アンジェちゃん、落ち着きなさい。初めて見て驚くのはわかるけどね。あれはフンドシと言って、昔のヤポナの男性用下着なのよ。昔は水着なんてないから、下着で泳いでいたのよ。要は昔のパンツよ。パンツ。」


 わ、わかりましたから、そんなパンツを、連呼なさらないで~。


 私がお義母様の説明を聞きながら騒いでいると、旦那様とお義父様がやって来て、「アンジェリーク、頑張ってくるから応援よろしくね。」と、声をかけてきた。


 旦那様とはいえ、何となく目のやり場に困る。少し赤面しつつも、「お気を付けて。頑張ってくださいね。」と声をかける。


 隣ではお義父様とお義母様がにこやかに話しているが、見、見れない。お義父様のお尻が気になって、そちらに顔を向けることができない。


 昔のヤポナ人って大胆だったのね。


 よく見ると、旦那様たちは手にリボンのようなものと扇子を持っている。ハチマキと言うんだそうだが、それを頭に巻き広げた扇子をそこにさす。


 あ~っ!その扇子、この間のお買い物デートで買った、赤丸の扇子!


 見ると、お義父様も同じものを。回りの方々も同じ赤丸の模様の扇子を額のところにさす。


 これは古代ヤポナの国旗の模様で、それを水に濡らすなんて無礼なり!という発想から、筏までこの扇子を濡らさず落とさずに一番早くたどり着いた人が栄誉を受けるのだとか。


 なるほどね~だから実用品ではなく必需品だったのね。あおぐために買ったわけではなかったのね。


 ちなみに、本来は他の準備品と合わせてお義父様の分と一緒にカキノウチ家でまとめて買うのが普通なのだけど、たまたま、百貨店で見た旦那様が百貨店で買い物をしてみたいという理由で、勝手に買っちゃったんだそうな。


 まあ、腐るものでもないし、来年買う数を変えればいいだけなんだけど。旦那様も百貨店デート楽しんでくれてたのね。


 そうこうしているうちに、いよいよ始まる。筏に向かって参加者が並んでいるので、私たちの方から見ると、お尻、お尻、お尻! !!


 なんか、慣れてきちゃったわよ。改めて見ると、大きいのやら小さいのやら、垂れてるのやら、蚊に刺されたかのような痕のあるものやら、様々。


 旦那様は身びいきではなく、ぷりっと引き締まった、なかなかのお尻。


 ウフフ......はっ、やばい、顔がにやけてたかも。自重しなさい、アンジェリーク、と気を引きしめて。


 さあ、いよいよ。


「サクヤさ~ん、お義父様~、頑張って ~!」


 よ~い、パンッ!!!



古式泳法のイメージです。

あくまでイメージです。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ