娘から父への手紙 その二
「愛しのお父様、お元気ですか。」
可愛い娘から手紙が来た。
本当に筆まめな孝行娘だな。
どれどれ。
「夏祭りで金魚すくいをしたのですが、金魚が最近すごく大きくなり池に放しました。」
おいおいおい、大きくなるのはいいことだが、池に放してはいかんだろう。
あんな小さな魚、すぐに他の魚や鳥や蛙らに食べられてしまうわ。
いくら大きくなったからとて、なんてことを。
すぐに金魚鉢に戻すよう言ったところで、間に合うだろうか。
一応は、書いてはおかねばな。
「従兄弟のトシゾーさんたちの薬作りのお手伝いに行きました。薬草刈りは叫び声が凄くて心が萎えました。」
叫び声!?
何か事故でもあったのか?
誰か刃物で怪我でもしたのだろうか?
アンジェリークは無事なようだが、気を付けるように言っておかねばならぬな。
「キュウリ畑の様子を見に行くと、ヨキチさんが倒れていてお皿が空っぽで危ういところでした。助けが間に合い、ほっとしました。」
おお、人助けをしたのだな。いい心がけじゃないか。
さすが我が娘だ。
お皿が空っぽというのは何だろうな。
ひもじい思いをして飢え死にしそうになっていたと言うことかな?
助けが間に合って良かったな。
「ホウシ君が小さくなり、親指姫しか相手がいないかもと、旦那様が脅して可哀想でした。」
ははは、ずいぶん大袈裟だな。
しかし、小さくなるというのはどういうことかな?
痩せたということだろうか。
童話の話との関係がわからんな。
痩せたら、架空の娘でなくとも相手はおるだろうに。う~ん?
「猫のメグミちゃんがダイエットをして筋肉痛になってしまい、カキノウチ家の売り上げが落ちて大変でした。」
ほう、猫のダイエットか。
最近はペットも甘やかされて太ったのが多いからな。
ほどほどが大事だよな。
しかし、筋肉痛とは……。
運動をさせたのだろうが、猫が筋肉痛にはならんだろう。
アンジェリークめ、自分がそうなるからって、可愛い想像を。
だが、なぜそれでカキノウチ家が危機に陥るのだ?
皆が可愛がりすぎて、仕事がおろそかにでもなったのか?
いや、さすがにそこまではないだろう。
相変わらず、アンジェリークの手紙は所々わからんところがあるなあ。
もう少し、読み手の立場にたって、分かりやすく書くように言わねばな。
私だから良いものを、大事な相手だと困ることになるからな。
しかし、やはり手紙だけではもの足りんな。
ヤポナ行きを王に打診しても、何だかんだと延ばされるし。
そもそも、私はただの辺境領主なのに、ヤポナ関係者になったというだけで、自由が減った気がするぞ。
領地も金も増えてないのに……。
くそ~、やっぱりヤポナへ行こう。
アンジェリークに会いに行こう。
待ってろよ、娘よ~!




