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鯉に恋したストーカー

 今日も良い天気です。

 暑いけど。


 庭の池では亀さんが岩の上で日光浴しています。

 熱中症にならないかしら。


 その池では鯉がゆったり泳いでいます。

 涼しそうで羨ましい。


 あら、金魚も涼しそうですわね。


 金魚もね......。


 本当、なんでここにいるのよ。

 ああ、そうね、金魚鉢が手狭になったものね。


 ......。


 ねえ、何でそんなに大きくなっちゃったのよ。


 私わざわざコーナー選んで掬ったわよね、小金魚コーナーで。


 なのにどうして今のあなたは、大金魚なのよ~。


「池に向かって何をぶつぶつ言ってるの?」


 ああ、旦那様~、この子どうしてこんなに育っちゃったんでしょう。


「アンジェリークは大きくするの得意だからね。」


 それは鉢植えのお花の妖精さんのことですか。

 あれは大きくと言うより、太くなっちゃいましたけどね。

 成人病にまでなっちゃいましたしね。


 でもこの子には適量の餌をあげてましたわよ。

 ちゃんと金魚屋さんに聞いた通りしましたもの。


「う~ん、多分、大金魚が小金魚の水槽に混じってたんだろうね。小さい頃は見た目ではわかりにくいからね。」


 まあ単純に考えて、それしかないのでしょうが、これは当たりなのか外れなのかとなると......外れでしょう!

 この子は残念ながら外れですわ。


 だって......。


「何でこんなに狂暴に育っちゃったんだろうね。」


 そうなのですよ、暴れん坊なんですよ、もの凄く。


 金魚鉢に一匹でいたときはわからなかったのですが、狭くてかわいそうだと池に放したら、周りの鯉に突撃ばかりするんです。


 そのせいで元々いた鯉たちがボロボロ。


 ただ、不思議なことに一匹だけ攻撃されず綺麗なままの鯉がいるのですよ。


 あの鯉と他の鯉と何が違うのかしら。


「ブニャー!」


 バシャッ、バシャッ!!


 あっ、こらっ、メグミちゃん止めなさい!


 しかも今まで魚好きなのに鯉の池だけは絶対襲わなかったメグミちゃんまでも、金魚を池にいれてからというもの、襲いに来るのですよ。


 よく見ていると、鯉ではなく金魚を狙ってるみたいなんですけど。


「ん~、小金魚なら一飲みだからメグミちゃんが襲いたくなるのもわかるんだけど。」


 メグミちゃんに直接聞いてみますか。


 いつもの《いろはかるた》を持ってきて(最近メグミちゃん専用になりつつあるわね)なぜ襲いだしたのか聞いてみると。


「さ、く、や、の、こ、い、い、し、め、る」


 ああ、虐められた鯉の敵討ちなのね。


 なるほど。


「す、と、か、た、め」


 すとかため?

 はい?意味がわかりませんわ。


「なんだろう?何かが固いの?ストってなんだ?」


 さすがの旦那様も困惑顔です。


「す、と、お、か、あ」


 あ、ああっ、ストーカーですか。

 でも、誰がストーカー?

 今、鯉と金魚の話をしているのですが。


「き、ん、き、よ」


 えっ、大金魚がストーカーですの?

 では、被害者いや被害魚は誰?


「い、け、め、ん、こ、う、は、く」


 イケメン紅白~!?


「錦鯉の種類だよ。大正三色と昭和三色と並んでご三家って呼ばれてるんだよ。この紅白は赤と白の割合が絶妙だし、つやもいいからイケメンさんなんだね。」


 ほお、イケメン鯉ですか。


 つまり、あれですか。


 大金魚は池に移ってイケメン鯉に出会って恋をしちゃったわけですか。


 鯉に恋......寒い......。


 でも、追い回す相手が違いませんか。


 紅白の鯉ではなく、それ以外の鯉を追いかけ回してるんだけど。


「ら、い、は、る」


 ああ、ライバルを蹴散らしてるわけですね。


 それで自分が選ばれるとは限らないのにね。

 恋する乙女の暴走ですか。


 あれ、でもオスも攻撃されてますわよ。


「ほ、も」


 ......。


 全部?

 紅白の鯉以外のオスは全部?


「だから、なかなか増えなかったんだぁ。」


 いやいや、何納得してるんですか。

 そんなことあるの?

 鯉のホモって聞いたことないんですけど。


「鯉には鯉の人生があるのさ。」


 なんか渋いこと言ってるようですが、全く説明にも解決にもなってませんわ。


 そもそも紅白の鯉は金魚のことどう思ってるのかしらね。


「二匹だけにして試してみようか。」


 棒に網をつけ、池を一部囲い、二匹だけにしてみると。


 逃げる逃げる逃げる!!


 凄い勢いで逃げる鯉!


 それを上回る速さで追いかける金魚!


 ああ~、追い付かれるぅ~!


「はい、そこまで!」


 旦那様が鯉を抱き上げ、他の鯉のもとに。


「どう見ても嫌がってるのに追いかけ回すなんて、本当ストーカーみたいだね。池をもう一つ作るかな。」


 ですよねぇ。


 これは一緒にはできませんわ。


 見てる私たちも手に汗握るほど、凄い逃走劇でしたものねぇ。


 仲間のもとに戻った紅白の鯉は、今は優雅に泳いでいます。


「ノーマルなオス鯉も買わなきゃ、メスたちがかわいそうだね。紅白の鯉だけじゃ相手するのが大変だよ。」


 そ、そうですわね。


 ハーレムとか言って喜んでるようには見えませんものね。


 どこの世界もいろいろ大変ですのね。



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