鉄の箱とお肉の関係
お昼休み、旦那様が難しい顔をして、新聞を読んでいます。
何か事件かしら。
「なんかね、異国では燃やした石で動く車が出来るんだって。」
ほお~、燃やした石ですか。
熱いんでしょうね。
車が燃えませんかね。
「そこは、まあ、色々工夫してあるんだろうけどさ。」
どうしてそんなに怖い顔をしてらっしゃるのでしょう。
「石で動くんだよ。今までの馬車はどうなるの。要らなくなっちゃうよ。」
馬より石のほうが便利でしょうかね。
馬は餌もいりますし、疲れもしますしね。
結構費用がかかりますわよね。
「でしょう。つまり、馬車は廃業。馬はクビだよ。」
ま、まあ、いずれはそうなるでしょうね。
「食べていけなくなったら最後は体を売るしかないじゃない。」
へ?
馬が体を......?
メスなら......いや、ないわ。
「かわいそうに。美味しい馬肉にされちゃうよ。」
あっ、そっちね。
旦那様、悲しい顔が余計な一言で残念ですわ。
ちょっと本音が入ってますわよ。
でも、馬が体をってなると、そうなりますわね。
あながち間違ってはいないかも。
飼育されてる方たちは、泣く泣くお肉屋さんに売ることになりかねませんわね。
「でしょでしょ。それに、人力車も商売あがったりだよ。」
ああ、確かに。
人件費も馬鹿になりませんわね。
馬車が廃業なら、人力車はなおさらかもしれませんわ。
「かわいそうに。体を売って美味しい人『やめて~!!』......。」
ないから。
絶対ありませんから!
「でもさ、この間は海を潜る鉄の箱ができて、今度は道を走る鉄の箱。今に、空を飛ぶ鉄の箱でもできるんじゃないのかな。」
まっさか~。
海は鉄の重さで沈むでしょうし、陸は力一杯引っ張れば動くでしょうけど、空は持ち上がりませんよ。重すぎて。
「それもそうだね。あ~あ、オランシアみたいに空を飛べる箒があればいいのにな。」
そんな箒ありません!
「本で読んだよ。」
どんな本よ!
「黒い服来て黒いとんがり帽をかぶったおばあさんや、大きなリボン着けた可愛い女の子が飛んでたよ。」
いません!
それ子供のころに読んだ本でしょうが。
「先月読んだんだけど。」
大人の本を読んでくださいませ。
「......。アンジェリークったら大胆!」
意味ちが~う!
馬鹿なことを話しながら、まったり昼休みを過ごしていると、トシゾーさんがやって来ました。
先日、河童衆から迷惑かけたお詫びとして桃を譲ってもらう話で、自分でとってみたいと桃狩りに行ってきたんだとか。
うちにもお裾分けを持ってきてくれたのだそうで、ありがたいことですわ。
桃大好きですから。
「おう、そういやよ、異国で鉄の箱を繋げたもんが走り回るようになるんだってな。すげえよな。」
ええっ、一つじゃないんですか?
いくつか繋がってるの?
「おうよ、ひとつの箱に十数人は乗れるってよ。そんな箱が三つ、四つ繋がってんだとよ。一気に何十もの人が運べるんだと。」
「うわ~、もうだめだ!馬も人も、ああ、牛車もじゃん。美味しい牛肉がたくさん出回って価格崩壊起こして、お肉たくさん食べられて、回り回ってうちも終わりだぁ!」
旦那様......。
旦那様、所々に願望が混じって、全然困ったように聞こえないのですが。
そもそも、ちょっと飛躍しすぎではないですかね。
「馬車や牛車の馬、牛は肉用じゃねえから不味いんじゃねえか?」
「え、そうなの。」
「なんでも食用の肉は、餌や運動時間とか美味しくなるように工夫されてるとかなんとか。普通の牛や馬は食べたら固いんだとよ。」
「へぇ~、じゃあ牛馬が市場に増えても労働用かな。お肉の価格崩壊はないんだ。よかった~。うちも潰れずに済むね。」
......馬車や人力車の廃業問題について話してたのではなかったかしら。
お肉の適正価格やカキノウチ商会の話でしたっけ。
難しい顔が笑顔になってますが、人力車や馬車で糧を得ている方たちのことは、もうよろしいのかしら。
なにも解決してませんけど。
ま、もともと問題が起こった訳でもないので今は良いか......。
話の流れについていけず、桃をパクパク食べるアンジェリークだった。




