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酔っぱらいと契約

「やられたな。」


「メグミちゃんが不調な時を狙われたね。」


「代わりを探しませんと。」


 またまた、お義父様と旦那様と番頭さんが難しい顔で話し合っています。


 先日、デブミ......じゃなかった、メグミちゃんが贅肉痛......ではなく筋肉痛で商売繁盛ポーズができずカキノウチ家が売上を落としていた頃、その隙を狙ってライバル商会が貿易船の横取りをしたのです。


 国内はもちろん異国との交易も船がないと始まらない。


 カキノウチ保有の船はありますが、商会が大きくなると取引も増え、自分のところの船だけでは足らないのです。


 そこで、船会社と契約するのですが、カキノウチがバタバタしている隙にライバル商会が契約を横取りしてしまって、動かせる船が減り、ただ今ピンチ!


「すぐにあるかな。」


「厳しいね。」


「心当たりがなくもないのですが......。」


 何とか解決法はあるみたいですが、番頭さんは言い出しっぺなのに乗り気ではなさそう。


 しかし、急にはなかなか見つからず他に手がないと言うことで、番頭さんの伝でやって来ました、サケノミ水運。


 船室で契約と聞いて、好奇心から私も旦那様と番頭さんに付いてきたのですが。


 なんか酔っぱらいそうな名前ですわね。


 早速、頭領のシュテンさんに挨拶をと案内された部屋に入ると、酔っぱらいが一人と真面目そうなおじさんが一人。


 やっぱり酔っぱらいがいるわ。

 捻りのないことですわね。


 この酔っぱらいが頭領のシュテンさん。


 番頭さん曰く、


「酒が入っていなけりゃ、凄い奴なんですよ。きっと海の上はサケノミ水運が牛耳ってたでしょうな。酒さえ飲んでなけりゃねぇ。」


 そ、そんなに凄いんですか。


 あの番頭さんがここまで認めるなんて。


 ......酒さえなけりゃ......あるわね。


 空いた酒瓶ゴロコロあるわね。


 酒さえなけりゃということは、酒があったら駄目駄目ですか?


 でも他にいないので仕方ない。


「おお、よう来たな。ようこそ、我が〈幽霊船〉へ。」


 そうなんですよ。


 この船の名前が幽霊船。


 なぜ商売用の船をこの名前にしたのかと

小一時間問い詰めたい。


 気持ち悪い、怖い、縁起が悪いなどの理由で利用者がなかなか付かず。


 そりゃそうでしょうよ。


 私たちだって普段なら避けちゃうわよね。


「がっはっはっ。良い名だろう。幽霊のように、身軽にどこへでも早く動けるという意味だ。」


 確かに幽霊はどこにでも現れそうではあるけど、早く動きましたっけ?


 なんとなく、ふわ~、ゆら~といった印象で、むしろ遅い気がするのですが。


 オランシアの幽霊とヤポナの幽霊は違うのかしら。


「バビュッーンと走る幽霊って見たことないなぁ。」


 ですよね。やっぱり。


 ヤポナでも早い印象ではないのですよね。


 そもそも、幽霊を、見たことがないのですけど。


 旦那様はゆっくり動く幽霊なら見たことあるのかしら。 あとで聞いてみよう。


「いや、走るんじゃなくて瞬間移動するだろ。」


 そうきたか。


 確かに幽霊が隣町まで走って移動とか、なんか違う気がしますわね。


 でも、この船は瞬間移動はできませんでしょ.......まさか、できるのかしら?


「船旅の醍醐味ないじゃない。ま、観光じゃないからいいけどさ。」


 で、できるのか?


 それなら幽霊船でもありですわよ。


「で、真面目な話、費用と日数どれぐらいかかるかな?」


 なんだ、やっぱり冗談でしたか。


 できるかもと思っちゃった私はヤポナに毒されてる気がしますわ。


 旦那様と番頭さんが、細かい条件をおじさんと話してます。


 シュテンさんは......相変わらず飲んでるだけ。


 大丈夫かしら。


「わしは事務方は苦手でな。船さえ操れりゃ良いんだよ。」


 現場派ですね。

 見た目も肉体派ですもんね。


「部下が優秀だと楽だわい。はっはっはっ。」


 丸投げですわね。


 でも優秀な方を探す目はお持ちのようですし、そういう方達が従う度量があるのでしょうね。


 酔っぱらいだけど。


「わしはなぁ、鬼なんだ。ハーフだぜ。はっはっはっ。」


 は?鬼?


 角ないけど鬼なの?


 そもそも鬼っているもんなの?


「わしはよ、人と蛇の間に生まれたんだわ。」


 なにその無理な設定は。


 蛇と恋愛どうやってするのよ。


 いや、でも、好みは様々だからありとしましょう。


 でも、どうやって子ども作るのよ。


 コウノトリさんが~とかキャベツ畑で~とか言わないわよね。


 一万歩譲ってできたとして、なんでその子が鬼なのよ。


 人と蛇の遺伝子どこいった。


 鬼の遺伝子どこから来たのよ。


 本当に鬼なら浮気ではないですか。


 私が目を白黒させていると、 打ち合わせを終えた旦那様たちが、


「なに酔っぱらいの言うこと本気にしてるのさ。」


「子どもの頃のあだ名がオニワラシだったそうですよ。小さい頃から身体が大きく強かったそうです。」


「父親は真面目な役人で、母親は蛇使いで学園が休みになるたび、シュテンさんを連れて各地を回っていたそうで。その頃に船に興味を持たれたと聞いています。」


 ああ、そこから人、蛇、鬼ですか。


 私はまた、ヤポナだから蛇と結婚とか鬼がいるとか普通なのかと思いましたわ、うふふ。


「いくらヤポナでも、普通ではないですよ。とっても希ですね。」


 ......。


 あるんですね。


 希だけどあるんですね。


 人と蛇の結婚とか、鬼とかありなんですね。


「シュテンさんは違いますよ。」


 もう、どっちでもいいです.....。


 契約も恙無く終わり、


「では、これからよろしくね。まずはオランシアまでバビューンと行っちゃってよ。」


 ん、オランシア?


 ええ~、オランシア行きでしたの?


 そうと知っていれば手紙を託しましたのに~。


「行き先は盗み聞きしてなかったの?」


 盗み聞きではありませんわ。


 堂々と扉の裏に立って聞いておりましたわよ。もうっ。



《酒呑童子》からのイメージで。

酒好きで、生まれは《ヤマタノオロチ》と近江の富豪の娘との子どもとか、絶世の美少年で女性をふりまくり恋煩いで死んだ女性たちのラブレターを焼いた煙で呪われて鬼になったとかありますが、《ヤマタノオロチ》が酒好きなので遺伝的にこっちかなと思いまして、こういう話に。



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