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ⅡLive ≪セカンドライブ≫  作者: 工藤 遊河
一章 異世界
28/56

開花

 目の前で変なことを見た。

 人の、優奈の体が無数の血のアーチによって塗られていく様を。

 床には血の線画が描かれた。

 晄には花が咲いたと感じられた。飛び散った血が綺麗に花弁を象っていたからだ。


「優奈?」


 晄は一度呼び掛けた。花の中央で倒れている優奈に向かって。


「優奈ッ!!」


 晄は二度目に叫んだ。悲鳴だった。

 柱から飛び出て優奈のいる柱へ駆けた。だが、


「うわッ!」


 突風のようなものが晄を襲い、突き飛ばした。


「随分と変わってるね、どういうカラクリだい?」


 アルバロが何事もなかったように晄へ話しかける。だが晄はそんな事に構いはしなかった。

 立ち上がってまた優奈の所へ向かおうとした。けれども二度目の突風が襲いさらに離される。


「ぐうぅ……」

「ユウナさん!コウさん!」アルダは柱に手をやった。


 アルダも同じように優奈の所へ向かった。同じように突風が放たれるが晄のように生身で受けるということは無かった。

 それは氷の壁を柱と柱の間に設けて防いだからだ。

 到達できたアルダが優奈を脇に抱えて座らせた。

 誰かの支え無しではそのまま倒れてしまう彼女をアルダは肩を持って支える。


「傷一つ一つは浅い……、箇所が多いっ!」


 浅いと言ってもアルダが想定していたものよりと言う事である。

 皮膚を突き破ったものは空気だということは察している。

 骨諸共では既に死んでいただろう。それでも傷の多さが問題だった。

 早急な治療を必要とするがこの場所と現状では難しく、一秒が事を争う。裂傷まみれの体からは血が溢れている。


「何やってるんです!?貴方は!」


 柱越しにアルダはアルバロに怒鳴った。


「だから言っているだろう、もう善のある人間ではないってね」


 次の瞬間、柱と柱に張った氷のカーテンが突如砕け、破片が飛び散った。それに便乗して風が流れる。

 そしてその風が氷の破片を絡めて渦巻いた。


「なッ!!」


 アルダは優奈への被害を抑えるために停滞していた旋風の前に塞がった。魔法を張ってさらに防御を固めた。 だがそれを意に返さず、アルダ自らが作った氷の破片が風力に後押しされてバリアを貫いた。


「ぐぅぅッ……」


 貫いた氷はアルダの四肢を掠め、幾つかは食い込んだ。

 氷の感触が傷口から伝わってくるが、傷口の細胞の活性化による熱で何とも言えない気色の悪い感じが襲った。

 アルダはそのまま膝を突くがまだ終わっていなかった。両手を突いてから顔を上げるとまだ風が氷の破片を巻き込んで旋風していた。


「まだ……」


 思わず呟いてしまう。弱気になっている。

 どうにかして魔法を練ろうとするがそのたび魔力の流れが傷を刺激して痛みを生み出す。痛みが阻害して魔法が練られなくなった時、アルダは直撃を覚悟した。

 この直撃は渦巻いた風がミキサーのようにして体を裂くだろう。当たれば死が待っている。

 アルダはそれを見つめることしかできなかった。

 甘かったか……、そうアルバロに対して後悔したとき視界の端から人影が立ち塞がった。

 晄だった。

 黒い剣を大胆に振り払って旋風を消し去った。

 魔力のコントロールを失った風はフロアに逃げ回り、氷がさらに細かく散る。

 何をした……?

 アルダはそう思わずにはいられなかった。

 晄はこの前に二度直撃を受けた。だがその二回ともが無傷という奇跡で終わっている。

 今もそうだが何の変哲もない剣で振り払っただけだ。なのにそれだけで魔力が散った。


「大丈夫か!?」


 晄は何事もなくアルダに無事を問う。


「え、ええ」


 なんとかと返してしまったが、そんな状態ではない。


「今すぐ、優奈を連れて出て行ってくれないか?」


 唐突にこんなことを言い出した。


「貴方一人でどうするんです?」


 そう訊いたのは晄の顔に不安の色が浮かんでいたからだ。恐らく彼は戦闘を一つ二つしかこなしていないと察した。


「いいから、コイツを何とかしてみる」

「できるわけないでしょう!?」

「さっさと行けよッ!」


 晄は怒鳴った、と同時に再び突風が晄を襲う。だがこれも何の効果も持たず分散した。

 はためくコートとそれを消し去った剣から赤い靄のようなものが浮かび上がり、晄に威厳を纏わせていた。


「早く……ッ」

「わ……分かりました」


 アルダは気押されて痛む体で立ち上がり、優奈を背負った。体に刺さった氷は既に溶けていた。

 この体でこの部屋から出られるかどうか不安に駆られたがそこは提案した本人がどうにかしてくれるだろうと期待した。

 アルダも軽傷ではないが動けないわけではない。鞭を打てばまだ動けた。


「頼みますよ……後ろは」

「ああ……」


 どういう表情をしていたのかは見えなかったが晄は優奈の右手首を握っていた。心配なのはアルダも同じだった。


「それでは」


 そう言ってアルダは部屋の出口まで走った。背後から来る殺気は全て何かに防がれてアルダには届かなかった。


☆☆☆


 アルダは優奈を担いで出て行った。その間アルバロの追撃を防いでいたのはデザイアの乗り移った晄ではなく、本人だった。

 数回の攻撃を受けてみて分かった事がある。それは剣とコートが魔法を消し去っていること。

 アルダと優奈には攻撃とした風になっていたにも関わらず、自分への攻撃だけが只の強い突風だけだというのがそもそもおかしい。それでも数回当たってみて確信を得たところだが……。


(なんだよ、このコートと剣は)

『悪くないだろ?これでどんくさいお前も少しは生きられるってもんだ』

(あの赤いオーラもか?)

『イエス』


 一度目、デザイアに意識を乗っ取られた時に晄は完全に気を失っていたため、あのオーラの事を知らない。


『本当は俺が乗り移った時だけの演出のつもりだったんだけどな。お前がどうしてもあの二人を退かしたかったみたいだから……、演出でな』


 ありがたいと思っておこう。晄はそう思った。

 アルバロの攻撃は二人が出て行ったとともに止んだ。

 晄は急いで柱の陰に隠れる。

 それから先ほど優奈からコッソリ拝借した変換式記録インベントリを左手首に付ける。


『おーお、ちゃっかりしてやんの』


 デザイアとて意外に思う。そんな風に見えない優男が内容量八割を武器で占めている腕時計を借りるなどという事を。

 そもそもどういう心境の変化なのか?

 晄の心を何時でも覗き見出来るデザイアでも分かり辛かった。


(使い方は知ってるさ、武器のほうは知らない)


 腕時計からの呼び出しは分かる。教えてもらった。だが晄はその中身の使い方は一切知らない。


『そうだな、拳銃くらいなら相手の距離的に下手でも当たるだろう』

(片手でも大丈夫か?)

『片手で撃てるから拳銃って言うんだろ』


 エアガンの遊び方くらいしか知らない、ましてやミリタリーに興味のあったわけでもない晄は拳銃とはそういう物と決めつける。

 彼にはそれだけで十分な説得力だった。


「そろそろいいかい?逃げた二人を追いたいのだけど?」

「たった三人でいるわけないだろ!」

「それはそうだよ、青軌道がいるんだから。相方はいるだろう?」

『残りをあぶり出す為に中途半に生かしたんだな。リスクを負うねぇ』


 デザイアが推測する。

 晄を此処で殺せなければ外へ向かったアルダがこの有様を何処かしらへ報告する。そうすればアルバロも名実ともに終わる。だから此処で晄が時間稼ぎを行う事が出来れば此方の勝ちになる。だがアルバロは未だ余裕で焦りを見せないのはすぐにでも殺せるからか。


(どうにかして時間を稼げないか?)

『俺がか?』

(いや、俺が戦う)


 そう言うなり晄は腕時計から空中に収納リストを出力してアレやコレやと選別しだす。

 なるほどとデザイアは察した。

 デザイアは少し呆れたと共に少しの好意を抱いた。晄にもそういった感情があったことが救いだ。

 今はまだ怒りで戦っても悪くは無い。


(これなんだ?)


 晄は空き缶ほどの大きさをした筒について訊いた。


『ん?あー、グレネードだ。こんなもん持ってたのかあの女』


 少しホビーなデザインのグレネードだった。


(どうやって使うんだ?)

『上のピンを抜いたら時間でドン。使いやすいと言や……って聞けよ』


 もう晄はそれを取り出して左手に納めていた。


「うん、静かじゃないか。今になって怖気づいたかい」


 アルバロは仕掛けることなく、じっと待っていた。


(舐めやがって……)


 晄は剣を持った右手でグレネードのピンを抜いた。それを自分の足元に置く。

 デザイアは何をしていると思ったが、晄はすぐに柱から隣の柱まで走った。


「ふんッ!」


 アルバロの前に姿を現す。晄へ更なる一撃が放たれるが、構うことなく受ける。勿論、ただの風となって晄を抜けた。

 晄はグレネードとアルバロの陰になるような位置に移動した。要は柱と柱の間に。


(デザイア、拳銃は?)

『向けるだけでいい。スライドを一回引け、それでゆっくりとトリガーを引けばブレも少ないだろ』

 

 デザイアはそう教えた。

 デザイア自身生きてる間に銃を撃ったことがないわけではないが、数える程度しかないと言うのが本音だった。

 そして人の話を聞く前からインフィニティを取り出していた晄の目は柱越しにアルバロを射ようとしていた。

 柱を背に左手の銃のスライドを一回ひっそりと引いた。利き腕ではない一抹の不安とともに自分は今、人に銃を向けて命の駆け引きをしようとしている緊張を覚える。気がつけば汗も掻いている、息も上がっている。そう自認するとみるみる頭の思考が繋がらなくなった。

 次、何をしようとしていたんだ。


(マズイ、考えるな)


 自分に言い聞かせ、一度息を止め一回深呼吸をした。

 そして終えたと同時に仕掛けたグレネードが起爆した。床を震わせる衝撃を耐えて、晄はアルバロへ姿を見せる。

 晄はこの時を予想していた。

 相手が慢心ならば、此方が今のような爆発を仕掛けることを疑わない事を。

 晄はそう発想して、大掛かりな囮を作った。その甲斐あってアルバロは面白いように爆発に反応していた。この一瞬が欲しかった。

 左手でインフィニティをアルバロへ向ける。拳銃の反動を片手で備えるために、ゆっくりと引き金を引いた。スライドがバックし、手を叩き付ける衝撃が伝わり、腕が大きく上に揚がる。

 

「ッ!」


 そして晄は構わず、我慢して撃ち続けた。二発、三発


「な……に……」


 驚きを露わにしたアルバロに一発目が左腕に当たる。二発目は右脚を抜き、三発目は左のこめかみを掠めた。


「うぐぅぅぅッ!」


 血が飛ぶところを見て、晄は優奈から教わったあることを思い出した。


『晄、何でこんな拳銃があると思う?』『どういうことだよ?』『魔法はね、拳銃くらいなら防げるのよ。でもそれだと撃つ意味がないじゃない?』『そうだな……、瞬間的な火力とか?』『手っ取り早い火力と言えばそうよね、でもそうじゃない。どこに利点があるのか、それは速さよ』『速さ……?』『そう。魔法を張るって言ってもずっと張ってるわけじゃない。相手の出方を窺ってから張るの。そこには人の反射神経がものを言うし、拳銃の弾速に反応することは至難だし、そうそうできる人なんていない。だからこれで先手を取るためにあるのよ。反応できない速度で先手をね』


 というこの世界における銃の存在価値を聞かされた。

 中にはパワーで突き破るタイプもあるらしいが、基本は優奈の通りの行使だと言う。

 そして当たってしまえばそれだけで致命傷だ。

 晄はそれを踏まえて今、銃を撃っていた。

 一発目は腕、二発目は脚、三発目は掠めた。

 それでも晄は撃ちつづけたが、四発目からは当たらなかった。アルバロは撃たれても魔法を張って弾いたからだ。


「チィッ!」


 アルバロは欄干に手を伸ばして体を支えた。

 キンキンと弾かれる弾丸。この後どうする?

 晄はこの後の事を考えていなかった。というより、出来ることが一つしかないのだ。

 それは接近戦に切り替えること。

 コートと剣が魔法を無意味にするというのならばそれを前面に押し出せばいい。

 剣の腕は上がってなどいない。皆無だ。だが今のアルバロの状態を考慮すれば、脚を患っているのだから大きな移動は出来ないはず。魔法で補正したって追い回せば追い付けると晄は算段した。

 近づく方法は普通に近づけばいい。晄は魔法を使うことが出来ないのだからコートと剣の阻害を受けることもない。それに確かめたいこともあった。

 日ごろ廻りの悪い頭をフルに回して展開を考え終えた時、トリガーを引く指に空振った感覚が伝わった。


「切れた……?」


 何発撃ったかは知らないが遂に来たというところだ。

 自分の変な汗にまみれた体を歯を食いしばって動かす。

 インフィニティを腕時計に戻す。

 そして……一回息を吸う。硝煙の臭いが擽る。

 息をグッと止めて晄は決心した。

 剣を下げて、アルバロの立っている足場へ走った。

 丁度いいところまで来ると晄は機械の出っ張りへ片足を掛け足場の欄干まで手を伸ばす。そこから跳んだ勢いで足場まで伸びあがった。

 

(やっぱり……!)


 晄が一つ確認したかったことは自分の素の身体能力の限界。

 初めに変だと思ったのが教会で黒騎士に襲われた後だ。

 落ち着いたころに頭に浮かべてみると、黒騎士の一撃を回避した時に自分は一回の跳躍で五メートルは跳んでいたと思った。助走もなくその場の脊髄反射だけで五メートルとは少し異様に思える。

 それから何回か朝の鍛練で優奈の木刀をかわしたりする時にも紙一重でかわそうとして失敗したのか、後ろへ体を持っていかれることもあった。

 要は体が軽く感じるのだ。

 今もそうだ。足場と床の高さは晄の身長以上だ。こうして欄干に足を引っ掛けることなく足場へと跳べたのも今の自分ならば出来ると思えたからだ。

 何故なのか……そう思った時、あの金髪天使の言葉を思い出した。

 『そうだな……武器もそうだが服装もだな。あとその世界についての少ない知識と身体能力云々』

 何の前触れもなく運動神経が発達するはずがない。その原因は天使の特典だ。

 その割には知識についてはからきしだったような気もするが……、何より今はありがたい。

 こうして戦えるのだから。

 両足で足場を捉えると片手では少々重い剣をアルバロへ向けて振りまわす。

 アルバロはそれを半身になっては反らしてはでかわす。

 縦横に出鱈目に振り回しただけでは負傷したアルバロにも当たりもしなかった。

 振り切った剣が欄干と機械に当たる。配線を引っ掛け引っこ抜きして火花を散らした。

 

「ああッ!」

「チィッ!」


 アルバロは足場の上を後退しながら魔法壁を張って、晄の攻撃を防いでいたがどれも意に反さないように斬り裂かれている事に苛立っている。

 少しずつ距離を詰めて行き、アルバロを壁際へ追いやる。

 あと少しで追いつめられるというところでアルバロは体の向きを変えて欄干に跳び乗った。

 晄がまさかと思った矢先、アルバロが跳び退いた。晄も追い付こうと欄干に手を掛けた時、突風が邪魔をした。


「くそぅ……」


 アルバロを見るとかなりの距離を跳んでいた。顔は苦痛の色を浮かべて、焦りのようなものが見受けられた。


(届けッ!)


 晄はすぐさま欄干を足場にしてアルバロへ向かって跳んだ。

 向上された身体能力は剣を振れば届きそうな所まで体を運ぶ。

 無意識の内に剣を振り被っていたようで、晄は思い切って剣を振った。

 けれど……何も伝わらない。当たった感触も掠めた感触も……。晄は焦る。

 アルバロは着地を考慮した回避だ。しかし晄の追撃は考慮していない。

 そのまま落ちると確実にアルバロにやられる。万能のコートでも覆われていない顔や手にはカバーしないはず。

 スローモーションになった視界で晄は出来ることを考えた、でも何をどうしていいのか階目思いつかない。

 まずい、死ぬ……。

 死ぬとも分からぬがそうなった方が自然だ。考えることを止めてしまう、だが……。

 絶対の危機を感じた時、不意に左足が接地したような感触が伝わる。目に白色光が散らばり、体から何か大量に抜けだした、というより塞き止められていた何かが脈動するように溢れたような感じが晄を包んだ。

 けれどそれは気持ち悪いというものではなく、力を貰った様な心地良いもの。希望へと体を運んでくれるような力。

 晄は左足を完全に落して、無理矢理に膝を曲げて少しだけ……蹴った。

 振り切った剣を、手首を捻り水平に薙いだ。同時に手には何かが引っ掛かる感覚が支配する。

 剣を振った慣性に引っ張られて晄は空中で一回半ほど回った。

 何が起こったか理解できないが剣先に赤い液体が付いているのを見て


(やってやった……ッ!)


と思った。

 そして足に感じていた固定感は唐突に無くなり、そのまま下に吸われるようにして晄は落ちた。


「うぐぅッ」


 浮遊感も何も跳んでいたのは二メートル弱の高さなのだから直ぐに床へ打ち付ける。

 剣を放り捨てて大の字になった。だが悠長に寝ているわけにもいかなく、晄は痛みを我慢して起き上がった。

 自分より先の方に落ちたアルバロをみる。しかしアルバロは寝転がったままで胸には横一直線に裂傷ができ、血が溢れていた。


「大丈夫なのか……?」

『斬った本人が言うかね』


 デザイアが冷やかす。


「何がどうなったんだ……、それにコレ……?」


 晄がそう言って手の平を広げて受け止めたのは先ほど視界に散らばっていた白色光だった。

 火花に近い光は床に落ちるまでに消えてゆく。

 

『魔力だ。魔法が使えない間は魔力管には何も通っていない、でもそれが不図した拍子に流れると勢い余って体から抜け出すんだ。ま、これが開花ってヤツだ』

「魔力……、俺の?」

『やっとらしくなってきたんだよ、お前は』

「じゃあ、あの跳んでたときのアレって……」

『ああ、魔法だ。普通なら注ぎ込んだ魔力を使い切るまで持続すんだけどお前が一回転したおりにコートの裾が足に触れて魔法式が吹っ飛んだ』

「魔法ならお構い無しか?」

『無いね』


 しばらく魔力を眺めていると自分の体の中に何か流れを感じた。それと同時にアルバロが息をしていることに気付く。


「なっ!?」


 晄は慌てて剣を拾って構えた。

 けれどもアルバロは仰向けのまま右手を左右に振って降参の合図を送ってきた。

 そのまま右手がパタリと倒れる。


(信じていいのか?)

『いいんじゃないか、魔法主体で戦う以上アイツに勝ちはねーよ』


 そうかと晄は腰を抜かして座り込んだ。

 色々補助が大きく働いていたが晄が判断して、自分で戦った事に変わりはない。

 アルバロを負かした事と人を斬った事を未だに信じられないがこの世界で生きて行くのならば通過儀礼だったのかもしれない。

 それは大きな一勝と一歩だった。



 



 




 





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