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~海と風の伯爵ツインズ~

黒色の薔薇の情報を得る為、王国最大の貿易港であるサン・ポート(太陽の港町)へと向かう。そこで待っていたのはウミ・ネプトゥリートとウミ・リーフィーヌ。2人から明かされる黒色の薔薇の情報とは。

のどかな高原を馬車がゆっくりと走っている。黒色の車体に夜空に輝く星みたいに見える小さなアメジストの宝石が散りばめられている。母様が特注で頼んでくださった馬車に乗り、俺達は今王国の貿易港を兼ねた町である”サン・ポート(太陽の港町)”に向かっている。


「はぁ、早くサン・ポートに着かないかしら。」


「お姉ちゃん、行儀が悪いわよ。まったく。じっとしていられないの。」


「だってぇ。」


相変わらずこの姉妹は元気がいいものだとため息が出てしまう。その時窓の外に海が見えた。どうやら目的地着いたようだ。

ここは古くからの港町であり、貿易の要の地でもある。

漁業はもちろん、各国からの要人や荷物が入室国する為様々な商会や商店がある。王都に次ぐ賑わいのある所だ。


「到着致しました。」


「やっと着いたわね。んー!お腹すいちゃった。何か食べに行かない。」


「お姉ちゃん。いいから早く荷物降ろしてよね。荷解きしてからゆっくり行けばいいでしょ。」


「えー。今から行こうよぉ。リエルも行きたいよね。」


「遊びに来たんじゃないぞ。」


「はーい。」


やれやれと呆れながら御用達にしている宿の中に入って行った。あらかじめ爺やが手配を全て済ましておいてくれたお陰ですぐ部屋に向かうことが出来た。部屋に入るやいなや俺はすぐベットへと横たわった。旅の疲れを感じながら天井を見つめた。そう。ここにはあの黒色の薔薇の情報を求めに来たのだ。あの日俺を包んだ黒い薔薇。この国のどこかに生息しているか、もしくは他国にあるという情報も得られるかもしれないからだ。そんな事を考えていると、


---コンコンコン---


「坊ちゃん。お客様が御越になっておりますがいかが致しましょう。」


と爺やが部屋へとやって来た。もしやと思い


「2人が来たの?」


と尋ねると、


「はい。」


早い到着に驚いた。会うのは明日だったはずだが。と思ったが


「んー、とりあえず部屋へ通してくれる。あと何か飲み物を持って来てくれるかな。」


「かしこまりました。」


そうして爺やが2人を呼びに行っている間に着ていたコートを脱ぎ、ソファーに掛けて腰掛けた。しばらくして再びドアをノックする音がした。


「失礼します。ウミ・ネプトゥリート伯爵様とウミ・リーフィーヌ伯爵様をお連れ致しました。」


爺やに案内されて来た2人。水色の長い髪に海のように美しい青色の瞳をした女性。海上貿易や漁業系の商いを行っているネプトゥリート家の当主。もう1人が桃色の髪に優しく草原に吹いている風のような緑色の瞳を持った男性。酪農や農業系の商いを行っているリーフィーヌ家の当主だ。2人とも王国に使える侯爵でそれなりに権力も持っている。


「やぁ、リエルン。久しぶりだね。」


「ここまで来れたなら体調の方も良さそうね。リエルン。」


そう言いながらソファーへと腰掛けた。


「まさかツインズが揃って来るとは思わなかったよ。会うのは明日のはずだろ。」


と言うと、


「いいじゃない。久しぶりなんだし早く会いたかったのよ。そ、れ、に。そのツインズって呼び方やめなさいよね。」


「まぁ両方ウミだしね。両家の親が決めた名だからこればかりはね。でもツインズってなんかいいよね。俺達もツインズってもう公言しちゃう。」


「絶対嫌よ。恥ずかしいじゃない。」


そんな冗談などをして、爺やが持ってきた紅茶を飲んで一息ついた時に本題に入った。


「2人に聞きたいことがある。」


そう切り出した途端、


「黒い薔薇の事だよね。リエルンの聞きたいのは。残念だけどこの国にはない。生息すらしていないんだ。この国は光魔法が主に使用されている。だから栽培は愚か生息も出来ない。ただ。」


と言葉を詰まらせた。


「ただ、どうした。」


「この国にはないけれど、隣国のダクネシア王国にならなあるのよ。」


その国の名前に部屋の空気が重くなった。

ダクネシア王国。闇魔法が主に占め、どの国とも交易を持たない王国だ。その王国を治める女王リリアン・ルシファーも民どころか側近にでさえ顔も声もしっかりと見聞きしたことがないという。謎の多い国。だか1度だけリリアン女王がこの国に訪れたことがある。詳しくはわからないがその時女王の馬車に黒色の薔薇が飾られていたというのだ。


「ダクネシア王国は知っての通り交易を行える国じゃない。だから簡単には手に入らないのが現状なの。」


「また面倒な所にあるもんだ。少ない可能性で入手もしくは情報が得られる方法があるとすれば。女王陛下、か。」


「そうだね。確かに女王陛下にお願いするしか。でも簡単にお許しは出ないと思うよ。相手はなんせあのリリアン女王だしね。それなりの手立てなんかがいると思う。」


ソファーにもたれて3人とも考え込んでしまった。打てる手立てが女王陛下に謁見をしてお願いするしかない。だがそれは断られる可能性が大きいからであり、他に打つ手がないのだ。しばらく考え込んでいると、


「まぁ今は考えても多分いい策は出ないだろうし、折角久しぶりに会えたんだから今夜はうちの屋敷で夕食を楽しむってことでどうかな。」


とウミ・リーフィーヌが立ち上がり言い出した。それに合わせるようにウミ・ネプトゥリートも立ち上がり、


「そうね。私も一度屋敷に戻って食材なんかを持って行くわ。着替えもしたいしね。」


さっきまでの重い空気を消すかのように2人が話し出した。いきなりの事に少し力が抜けたが有難く誘いを受けるとことにした。まったく、このツインズは。こういう切り替えの良さはいい所だよなと思いながら俺も立ち上がり、


「ありがとう。お言葉に甘えさせてもらうよ。一緒にバニとウブも来てるから連れて行くけどいい。」


「もちろんだよ。皆で夕食なんてほんと久しぶりだね。」


「そうね。じゃあ沢山食材を用意しないとね。」


と話しながら宿の入口まで送った。


「そしたらまた夕刻あたりに屋敷に来てね。」


「わかった。」


そうして一度解散して、夕方リーフィーヌ邸へと向かった。夕食は王国の海の幸や野山や田畑の幸がふんだんに使われた豪華な料理が並んだ。食事中は昔話や最近の出来事などの話題で盛り上がりあっという間に時が過ぎていった。案の定ニコリエス姉妹は誰よりも食べていた。やれやれ。


夕食を終え、屋敷でツインズと別れた後、宿へと戻った俺達は入浴などを済ませ各々の部屋へと戻って行った。俺は部屋に戻り灯りをつけずに窓際の椅子に腰掛け、窓から満点に輝く星空を見上げた。あの黒い薔薇を知るためには女王陛下の助けが必要だ。拝謁してお願いするしかない。そんなことを考えていたらドアをノックする音が聞こえた。


---コンコンコン---


「坊ちゃん。温かい紅茶をお持ち致しました。」


爺やがそう言って部屋へと入って来て、目の前のテーブルに置いて紅茶をカップへ注いでくれた。カップから優しく立ち上る湯気に乗り紅茶のいい香りがする。その香りを楽しみながらそっとひと口飲み、爺やにお礼を言った。


「ありがとう。」


「いえいえ。今夜はお疲れでしょう。ゆっくりお休み下さい。」


そう優しく微笑んだ。微笑み返し、また窓から空を見上げる。ふと爺やに、


「ねぇ爺や。俺は知ることができるのかな。埋めることも。ほんとに出来るのかな。」


とボソッと聞いた。


「坊ちゃんが知りたい、埋めたいと思い願い続けて諦めなければ必ず。」


とまた優しく微笑んで答えた。


「そうだよね。そう願うよ。」


と、またひと口紅茶を飲み再び空を見あげた。紅茶の温かさを感じながらもまだ見えず知りえない未来への不安を滲ませながら。










黒色の薔薇は隣国のダクネシアにあるとわかった。だが入手はおろか情報すら手に入れるのが難しいとわかる。残る最後の手段。それは自国のヴィスコンティナ王国の女王に拝謁しお願いをすることだった。しかしそれも簡単な道ではない。リエル・アルテミアがとる選択とは。

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