表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
236/236

#231

ジェラートは慌てて蹴りを放った。


だが、間に合わない。


トランス·シェイクで身体能力を向上させたバニラのほうが速い。


タイミングが遅れ、ジェラートの長い足が伸びたときにはすでに、白髪の少年は彼女の背後へと回っていた。


「マチャが教えてくれた……」


背後に回ったバニラはジェラートの背中に飛び乗る。


二人の身長差があるせいか。


その図は、まる大人の背中におんぶされた子供のようだった。


背中に飛び乗ったバニラは、ジェラートの首に両腕を回して思いっきり締め上げる。


「ガァァッ!?」


「頭を使えって……いつも言ってた……。ダークレートも……。ストロベリーもオレをいつもバカだから考えろって言ってた……」


ジェラートは締め上げてくるバニラの腕に両手を伸ばして解こうとするが、呼吸ができなくて力が入らない。


ジタバタと身を震わせながら苦しそうにしているだけだ。


「あと、やりあってみてわかったよ……。あなたはレカースイラーより弱い……」


「こ、こ……」


「さよなら、ジェラートさん……。愛してます……」


「こんなぁぁぁぁぁぁッ!!」


ジェラートが咆哮(ほうこう)した瞬間――。


彼女の首は強引に胴体と引き離された。


その誰もが引き込まれる綺麗な顔が鬼の形相のまま転がり、すべてを包み込むかのような大きな身体はドサッと倒れる。


「けど、ごめんなさい……」


もぎ取られた部分から噴き出る血を浴び、血塗れになったバニラは顔を拭うと、遠くからエンジン音が聞こえてきていた。


――その後、決戦の場に駆け付けたクリムによって、バニラは治療された。


スラム街にあるクリムの診療所で、しばらく間、小熊のカカオと共に過ごす日々を送る。


「この後どうする?」


身体の傷が癒えた頃に、クリムがバニラに訊ねた。


煙草を吸って紫煙(しえん)を吐き出しているクリム。


彼女の腕の中には抱かれているカカオがおり、小熊もバニラの今後を気にしているようで、心配そうに「ガウゥゥ」と鳴いている。


「クリムはどうすんの?」


「私は元々島を出るつもりだったからな。お前のせいで遅れてしまったけど」


「そっか、そいつは悪いことしたなぁ……」


ボケッと答えたバニラは、診療所の窓から外を眺めた。


スパイシー·インクが無くなってからのテイスト·アイランドは、今日も変わらずに暴徒が好き勝手に暴れている。


力無き者が(しいた)げられる世界が続いてる状態だ。


「オレはここに残ろうかなぁ」


「なんだ? こんな島で何かしたいことでもあるのか?」


「いや、別にないんだけどさぁ。もしマチャが生きてたら、島の秩序(ちつじょ)を守るとか言いそうだから……」


「お前はそれでいいのか? ダークレートから聞いてるぞ。お前、音楽がやりたかったんじゃないのか?」


「音楽は島にいながらでもできるだろ。それに……」


「それに……なんだ?」


オウム返しして訊ねるクリムに、バニラは答える。


「島を出て、どうするか考えるのめんどくせーし」


「お前なぁ……」


バニラの言葉に呆れるクリム。


カカオも彼女と同じように、「ガゥゥ」と大きくため息をついていた。


クリムは吸っていた煙草を灰皿に押し付けて消すと、抱いていたカカオを床に置く。


すると、カカオがバニラの胸に飛び込んでいく。


そして、ガウガウと鳴き続ける。


どうやら自分も島に残ると言っているようだ。


「しょうがないなぁ……。私も残るよ」


「え? いいのか?」


「お前とカカオだけじゃ心配だ」


からかよう笑みを浮かべ、クリムがそう言うとカカオがさらに大きく鳴いていた。


バニラはそんな小熊を抱きながら、クリムに言う。


「なあクリム、髪を染めたいんだけど。どうやるの?」


「色を入れたいのか? それともワンポイントのメッシュ?」


「あぁ、たぶんそれ。緑、黒、赤……あと金髪ってオレの頭でもできんのかな?」


「なんか凄まじく下品な頭になりそうだな」


「あとホワイト·リキッドの制服って手に入る? ウエストコートって言うんだっけ、あれ?」


バニラに次々と訊ねられたクリムは笑っていた。


突然笑い出した彼女を見て、バニラは不思議そうに小首を傾げていた。


一体なにがそんなにおかしいのかと、彼にはクリムが笑っている理由がわからないようだ。


「なにがおかしんだよ?」


「だってお前、ハハハァッ!」


そんな二人を眺めていたカカオも、どうしてだが、いきなり嬉しそうな鳴き声をあげた。


〈了〉

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ