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44 斑鳩(いかるが) 燃ゆ

【登場人物】

 中臣鎌足(カマ様)

人間に転生した天魔の神『天狐(あまつきつね)』東国の獣神であり人間体でも魔物を圧倒できる身体能力を持つ。


 額田姫王(ぬかたのひめみこ)

中大兄皇子の妻であり、神の歌「言霊」を使う少女。

琵琶湖の龍王女の転生体である。


 葛城皇子(中大兄皇子)

女性と見まごう白く美しい外観に凶悪で残酷な内面を持ち合わせる。

額田姫王や倭姫王の夫であり魔族を率いる魔王でもある。


 チビコマチ(小野小町)

額田姫王に歌を学ぶため飛鳥時代に連れて来られた平安時代の少女。

巫女舞風の装束を身にまとい「言霊」を使う。


 厳 (ゴン)

春日の森で「鬼神の塚」を守る片目の野守。

なぜかチビコマチのお供をしている


 鈴鹿御前(倭姫)

天照大神の依代であり第六天魔王の一人。

なぜか高位天魔を人間に転生させて飛鳥の都に集結させている。

この時すでに五百歳を超えている美女。

 大伴細人(おおとものほそひと)は両手で「(オウ)!」と天を突き、天地の気を全身に満たし、足を蹴り上げてタタタタっと駆け出した。

 その気に相気(あいき)してゴンもスルスルと身を沈めたまま走り懸かる。


 相気(あいき)とは

剣道において相気(あいき)とは、自分と敵とが自然に気が同調(シンクロ)した状態。そう考えても良い。

 「こう来たらこう避ける。そしてこう打つ!」などと計算しようとすると自我が強くなり過ぎて、気の同調(シンクロ)は起こらない。


 相気(あいき)するためには自己を捨て去り、意識を働かせない事が重要となる。

 ゴンにはそれができた。

ゴンはもともと無欲であり無我であり無心な男であった。


 ゴンはスルスルと徐々に加速して大伴細人(おおとものほそひと)より早く水月(間合い)に迫る。

 その瞬間。

ゴンの足は相気(あいき)を外し、先にスルリと水月を踏んだ。


 ゴンの足踏みを見て大伴細人(おおとものほそひと)はハッと気づいた。

「これは罠だ!」と直感し、驚くべき身体能力で空中で身体をひねりながら、短刀でゴンの横顔を突いた。


 ゴンはフワリと短刀を両手で挟み上げ、身を転じて投げる。


 その動きを察した大伴細人(おおとものほそひと)は左脛でゴンの腹を薙ぎ払った。

 (すね)に仕込んだ(ハガネ)板が脇に食い込み、ボリッと数本の胸骨が潰れる音がしてゴンの両手が大伴細人(おおとものほそひと)から離れた。


 (もう腹に力は入るまい)

着地した大伴細人(おおとものほそひと)は蹴った手ごたえに勝利を確信してニヤリと笑った。

 素手の場合、投げるも打つもパワーの出所は体幹である。これほどの蹴りの直撃を喰らっては、どんな技を出そうとしても威力は半減するはずだ。


 だがゴンは両手を離すと、クルリと身を転じ、大伴細人(おおとものほそひと)の脇腹に入身して両手で胸と背中を手のひらでトン!と挟んだ。

 「なに?!」

 さすがの大伴細人(おおとものほそひと)も初めて見る技である。

 いや、これは技なのか?

 まるで力が入っている様に見えない。

 こんな形で相手を倒せるものか!!

大伴細人(おおとものほそひと)は素早く短刀をゴンの腕に突き刺さした。


  『…(らん)

 ゴンはストンと右膝を地面に着く。

大伴細人(おおとものほそひと)は、いきなり体勢を崩され、あおのけにゴンの左膝の上に倒れ込んだ。

 後頭部から逆さまに地面に衝突し、「ゴキッ!」っと(したた)かに背骨を打ち付ける。

「ぐっ…」大伴細人(おおとものほそひと)は目が(くら)(うめ)いた。

「バカな!なぜあのような形で投げ倒せる!」


  (らん)

 「起倒流 乱」

柳生家の門弟であった茨木専斎が編み出した柔術の術理である。

 柳生十兵衛の月之抄の記述によれば、茨木専斎はこの極意に「(らん)」と名付け、沢庵大和尚より起倒流の名を授かる。起倒流 乱。または乱 起倒流と呼ぶ。

 後にこの流儀を学んだのが嘉納治五郎であり、現代の講道館柔道「古式の形」が、まさにこの技である。

 力の強弱に頼らず、所作(しょさ)の変化により相手の「(たい)」を無拍子に倒す。

 その『(らん)』の技こそ、嘉納治五郎が仰ぎ見た柔術の理想形であったのだ。


 その精妙な術理により大伴細人(おおとものほそひと)は、訳もわからず宙を舞い、仰向けにひっくり返されていたのだ。

 ゴンは大伴細人(おおとものほそひと)の胸に、左肘を叩きつけ、首に腕を巻き付けてへし折る。

 ゴキっ!と鈍い音がして、大伴細人(おおとものほそひと)はダラリと動きを止めた。


 (……コマチ様の元へ行かねば)

血まみれのゴンは「フッ」と息を注いで立ち上がると数歩歩き出し、パタリと倒れた。


 激しい地響きが聞こえる。

ゴウ!と唸りを上げて巨木のような金砕棒(かなさいぼう)がカマタリの頭上に叩き込まれた。

 ドン!と、衝撃波と地響きが走り抜ける。斑鳩寺(法隆寺)の金堂や土塀がガラガラと倒壊した。

 飛び散った土砂がバラバラと空から降り注ぎ、金鬼の足元には巨大なクレーターが現れていた。 

 カマタリの姿はそこには無かった。おそらく直撃を食らって飛散したのであろう。


「やれやれ、やり過ぎじゃな金鬼よ」

赤毛のカッパ、水鬼が赤ヒゲを撫でながら苦言をこぼす。

「むう…」

金鬼はゆっくりと黒い巨体を起こす。


「後ろじゃ!金鬼!」

水鬼が叫んだ。


 振り向くと金鬼の背後にカマタリが待ち構えていた。


 カマタリは巨大な金砕棒(かなさいぼう)が振り下ろされて来るその下を、驚異的なスピードで走り抜け、金鬼の背後に回ったのである。

 金鬼は自分の武器の巨大さゆえに、手元を走り抜けたカマタリを見失ったのだ。


 カマタリは鎌を脇に構え、身を沈める。

シュッ!っと残像が見えた瞬間、金鬼の足首に獣身体の足が蹴り込まれる。

 金鬼の足首がへし折れ、脚は弾き払われて巨大な体躯がドウ!とひっくり返る。

 ドン!という轟音が後から聞こえた。

音速を超えていたのだ。


 カマタリは超音速のまま水鬼に鎌で斬り付ける。パン!と水しぶきが霧になって弾けた。

 「?!」

見上げるとはるか上空。噴水の上に水鬼が座って居た。

 水鬼は切られる瞬間に噴水を使って空中へとジャンプしていたのだ。


「ホッホッホッ。ずいぶん早いようじゃな、邪馬台(ヤマト)の獣神よ」

水鬼はクルクルと指を回すと、四方から水の竜巻が巻き起こりカマタリを軽々と巻き上げる。

「ぐあっ!」

 呼吸ができない。

カマタリは足を蹴りあげ鎌を振り回すが、全く手ごたえがない。

 水が相手では金鬼のパワーを凌駕する獣身体とは言っても分が悪い。

 水を吸い込みカマタリの意識が遠のいた。


   『(ころも)の関!』

空気の断層が水の竜巻を弾き飛ばす。

 カマタリは空中に投げ出されヒラリと着地する。


 「何っ!」

水鬼が声の主を見回すと、そこには閉じ込めたはずの額田姫王(ぬかたのひめみこ)とチビコマチが居た。

「どうやって抜け出した!」

水鬼があわてて先ほどの土石流の山を見回すが、コンクリートの山が破壊された形跡は無い。


「さあ、なんでかしらねぇ〜ふふふっ」

額田姫王(ぬかたのひめみこ)はニッコニコで答えた。


 そうか!地獄の井戸。

倭姫様の神殿の壁を通り抜けたあの術だな。

カマタリは直感した。


「ちょっと!あなた!」

額田姫王(ぬかたのひめみこ)は振り返るなり、いきなりカマタリを怒鳴りつける。


「は?」


「アンタ何度も同じ手に引っかかって!頭悪いんじゃない?」


「それ…今いう話か?」


「ふん、まぁ今は忙しいから続きは後にしてあげるわ」


「続くのかよ!」


 額田姫王(ぬかたのひめみこ)は水鬼の方を向いてニヤリと笑う。

「お前にもお返ししてあげなきゃ。ねえコマチ!」

「はい!」


 コマチは額田姫王(ぬかたのひめみこ)に向かって両手をかざし和歌を詠みはじめる。

 額田姫王(ぬかたのひめみこ)もまたクルクルと優美な舞いを舞いながら歌を詠んだ。


 おろかなる 涙ぞ袖に 玉は成す

  我は(せき)あへず たぎつ瀬なれば

   『激瀬(たぎつせ)!』


 秋の野の み草刈り 葺き宿れりし

  宇治の宮処(みやこ)の 仮廬(かりほ)し思ほゆ

   『尾花(おばな)刈り』


 コマチの全身が球型の水のボールに包まれ、激瀬(たぎつせ)の言霊を帯びた激しい水流が走り出す。

 額田姫王(ぬかたのひめみこ)はそのコマチの言霊が宿る水流をリボンの様に舞い取ると、クルリと回りながら無数の水の(ムチ)(はし)らせた。

 高速水流のカッター『尾花(おばな)刈り』である。


 言霊の魔力の加算。

高度な魔法術式を重ねて計算しなければ不可能な技である。

 同じ術を使う師弟であるからこそ可能な合体魔法といえる。

 「キーン!」と空気を切り裂く高い音が響くと、水鬼の身体は無数の言霊の水の刃を浴びてバラバラに吹き飛んだ。


 金鬼は巨大な金砕棒(かなさいぼう)を振り回し、頭上から打ち潰し、薙ぎ払う。

 カマタリは両手でその金砕棒(かなさいぼう)をガツリと受け止めた。

 ズドン!と爆発音が響いて地面が揺れ、斑鳩寺の金堂がガラガラと半壊する。


「む…!」

金鬼の動きが止まった。


 カマタリは額田姫王(ぬかたのひめみこ)に叫ぶ。

「雷雲を呼べるか!」

「当然でしょ!私を誰だと思って!」

「じゃあ一発デカいのを頼む!」

「まかせなさい!」

額田姫王(ぬかたのひめみこ)はクルクルと天地を繋ぐ巫女舞いを舞い始めた。


 三輪山を しかも隠すか 雲だにも 

  心あらなも 隠さふべしや


 み吉野の 玉松が枝は はしきかも

  君が御言(みこと)を持ちて通はく


    『(タマ)松が枝!』


額田姫王(ぬかたのひめみこ)が、二重、三重に言霊を重ねて詠めば、天空の暗闇にたちまち黒雲が湧き上がり、雷鳴が響き始めた。

 「今だ!」

カマタリが天空にジャンプする。

   『(ころも)の関!』

 空中に発生させた空気の断層を踏み台にしてさらに高く飛び、黒雲に向かって鎌を大上段に振り上げた。


   『(イカズチ)!』


 鎌が(ツルギ)の形に変形すると、雷雲から数十の稲妻が(ツルギ)に向かって落雷する。

 雷鳴の轟音が斑鳩に響き渡り、稲妻を受け止めた(ツルギ)が太陽の様に輝き出す。

 カマタリの全身は稲妻の電氣が帯電し、青白いプラズマアークが四方に飛び散る。


「うおりゃあああ!」

帯電した獣身体のカマタリは金鬼の頭上に光る(ツルギ)を振り下ろす。

「ぬっ!」

金鬼は金砕棒(かなさいぼう)を頭上にかざして防ぐが、帯電したカマタリに触れたとたん(まばゆ)い稲妻のアークが巨大な鉄塊(てつかい)を二つに溶かして折る。

 カマタリはそのまま金鬼の顔面に(ツルギ)を突き立てた。

 閃光とともに、雷鳴が轟ろき、黒雲から数百の稲妻が金鬼の身体に打ち落とされた。


 ドドン!と爆発的な爆音が疾り、斑鳩寺は倒壊し炎上しはじめる。

 金鬼の全身が青いプラズマの光に包まれ、粉塵と化して崩れ落ちた。


 風一つ無い真冬に急に雷が鳴り響き、爆音の響きと共に斑鳩寺が炎上を初めた。

 雷鳴は斑鳩の全域に轟き、青白い閃光に高空の積乱雲が照らし出される。


 斑鳩の周囲に待機して、火事見物を決め込んでいた軽皇子と取り巻きの豪族たちは、雷鳴の爆音に驚き、馬が竿立ちに飛び上がると、たちまち落馬した。

 軍馬は走り回り、陣形は崩れ、蘇我の兵士たちまで天地の終わりか神仏の祟りかと恐れおののいた。


 大臣蘇我イルカもまた必死に馬の立髪にしがみつきながら驚いて空を見上げた。

「何が起きている?!」


斑鳩寺の仏塔や金堂は炎上し、赤い炎に包まれた黒い巨体がうごめくのが見えた。

「何だ…あれは…?」


 その時、はるか遠く草むらの上を斑鳩寺の方角から異国の衣装を靡かせ褐色の異人の美女が歩いて来るのが見えた。


「何だ?……」

あの女は草むらの上を歩いている様に見える。これもまた山背大兄王が見せた夢か幻か?

 イルカは眉を(しか)めた。


 落雷を受けて斑鳩寺は炎上を始めた。

図らずも葛城皇子たちの思惑どおりに進んでしまったようだ。


「山背大兄王と上宮王(かみつみやのおおきみ)家の御一家を探さないと…」

カマタリは鎌を納めると人間体に戻った。

 まだバチバチとカマタリの全身から火花が散っている。


 …が、その時、斑鳩寺の庭先を爆風が「ドン!」と走り抜けた。

屋根瓦が飛び散り、紙切れの様に風に舞う。

 その突風に吹き飛ばされそうになったコマチと額田姫王(ぬかたのひめみこ)をカマタリがつかまえる。

「な?…何だ!」


 炎に包まれ斜めに傾いた仏塔のてっぺんに人影が見えた。

痩せこけた青白い顔の青年。白い髪が背中まで伸び、虚ろな眼でこちらを見ている。


 チビコマチが指差す。

「カマ様!あれは風鬼(ふうき)です!」

「なにっ?!まだ鬼神が居たのか!」


 強力な風で城郭ごと吹き破ると言われる風鬼(ふうき)か。まだカマタリも額田姫王(ぬかたのひめみこ)も余力はある。

三人がかりなら倒せるはずだ。


 仏塔のてっぺんの相輪宝珠の上で風鬼(ふうき)はバラバラになった水鬼の身体をジッとみている。

 すると地面に落ちた水鬼の首がクルリとこちらを向いた。

 風鬼の髪がフワリと浮き上がるとビュウと突風が吹き出してバラバラになった水鬼の身体を空中に巻き上げる。

 水鬼の身体は風に乗りながらペタペタと組み立てられると、復元した水鬼がピョンと地面に飛び降り、再び動き始めた。


「何っ!」カマタリが叫んだ。


「やれやれ、切れ味が良すぎて助かったわい。ホッホッホッ」

水鬼は後ろ向きに着いた頭をグリッと正面に修正すると、指をヒョイヒョイと回す。

 すると地面から水がドン!と湧き出し、灰になった金鬼の塊を取り込み練り直す。

すると三メートルほどの黒い巨体が再生された。


「なんだ、ずいぶん小さくなってしまったではないか水鬼よ」

金鬼がボリボリと胸を掻いた。

「ぜいたく言うな。そのうち元に戻るわホッホッホッ」水鬼は笑った。


 「ウソでしょ!」

これはさすがにカマタリも額田姫王(ぬかたのひめみこ)も驚いた。

「バラバラにされても燃やされても生き返るのか!」

いくらカマタリたちが天魔の転生体とはいえ、これではもう、打つ手が無い。


「さて…ではそろそろ参ろうかのう」

水鬼、金鬼、風鬼の三鬼が並ぶと、ビュウ!と突風が吹き荒れた。


 斑鳩の外れでは蘇我の軍勢から「ギャアアア!」と叫び声が上がる。

 イルカが眼を向けると鉾や旗がバタバタと倒れて行くのが見えた。

「何ごとだ!」

イルカは馬をひるがえす。

 軍勢のど真ん中を「何か」が突っ切って行く様に見える。


 ふとイルカは先ほどの異人の美女を思い出した。

「まさか…厩戸皇子の四鬼神(シキガミ)!」


 中でも隠形鬼(おんぎょうき)は、あらゆるものに姿を変え、相手を惑わして殺すと聞く。

 まさかその様な志能便(シノビ)の魔物が真正面から軍勢を突破して来るとは。

 完全に意表を突かれた。

 

 イルカがその「何か」が向かっている先を見ると、そこには先ほど葛城皇子が入って行った間人皇女(はしひとのひめみこ)の豪勢な輿(こし)が置かれていた。


「しまった!ヤツらの狙いは中大兄皇子だ!」

イルカは輿(こし)に向かって馬を走らせた。


 はたしてその異人の美女は間人皇女(はしひとのひめみこ)輿(こし)の前に居た。

 輿(こし)の周囲に居る数十人の従者は魔人と聞くが、全く抵抗する様子も無く、ジッと(つくば)ったままであった。


「おや、良いところに来たなあ〜蘇我のイルカや」

隠形鬼(おんぎょうき)は口を広げて笑った。


 (この鬼は私の事を知っているのか?!)

イルカは太刀を抜刀する…が、隠形鬼(おんぎょうき)の腕が素早く伸びて、一瞬で太刀を奪われてしまった。


 いや、イルカだけでは無い、周囲の兵士たちの武器がガラガラと積み上げられる。

 甘い香りがした。

「うっ…」イルカは口を押さえた。

周囲の兵士たちはバタバタと倒れていく。


「何が起きている?!」


 この隠形鬼(おんぎょうき)の発する『香り』に酔わされ数百の兵士が皆倒されてしまった。


 イルカが一人、呆然と立ち尽くしているのを見ながら隠形鬼(おんぎょうき)はケラケラと笑う。

 志能便(シノビ)の魔物が真正面から来たのは戦術でも何でも無く、姿を消す必要すら無い事を、私に見せつけるためであったのか! 

 イルカは覚った。


「この中に大将が居るのかえ〜」

隠形鬼(おんぎょうき)輿(こし)の方へ向く。


「や…やめろ!」


 すると突然、輿(こし)幔幕(まんまく)がひとりでにスルリと巻き上がった。

 そこに見えたのは髪を解いて全裸になた葛城皇子と、その妹の間人皇女(はしひとのひめみこ)の二人が抱き合っている姿であった。


「よく参った。隠形鬼(おんぎょうき)

葛城皇子はフワリと笑いながら言葉をかける。


大王(おおきみ)のおおせのままに」

隠形鬼(おんぎょうき)(ひざま)ずくとヒラリと長い袖を流して(かしこ)まった。


 すると、ドン!という爆音と共に三人の『四鬼神(シキガミ)』がその脇に降り立ち、隠形鬼(おんぎょうき)の横に居並んで(かしこ)まった。

 赤毛のカッパが(かしこ)みながらズリズリと膝で歩み出て葛城皇子に奏上する。

「陛下の御心のままに」


 葛城皇子は首を傾けて人形の様に微笑んだ。


(いったい何が起きているのだ……)

 蘇我イルカは突然の出来事に呆然と立ち尽くした。



〜44「斑鳩 燃ゆ」〜 

 (=φωφ=)あとがき。

いよいよ四鬼神(シキガミ)志能便(シノビ)との最終決戦。

アクションシーンは書いてて楽しいっすね。

そして間人皇女は今日も裸です。


 >(らん)

「みだれ」と読むのかもしれませんが、剣術家から学んだと言うことで、乱剣、虎乱の乱にしました。


 > 尾花(おばな)刈り

どこにも尾花(おばな)とは詠まれて無いんですが、秋の野のみ草刈りなのでススキ系のいろいろななのでしょうね。


 >落雷

法隆寺を燃やした犯人はカマ様でした。

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