失敗した。
『ねぇねぇ、魔王』
『んあ? なんだい?』
『ちょっとスキル取って良いい??』
『あー、いいよー』
何か生返事だけど、魔王からのOKは出た。
私は一気に、≪瞬間転移≫をLevel.20、≪視線感知≫をLevel.4まで振ってみる。
≪飛行≫Job.Level.3
≪瞬間転移≫Job.Level.20
≪視線感知≫Job.Level.4
消費スキルポイント:35(残0)
「こ、これでついに……」
まず、魔王の視線を感知しようとする。
視線を感知すればウィンドウが開いて魔王の姿形が見えるはず、と思ったが表示されない。
おかしい。もう一度≪視線感知≫の説明文を良く見てみる。
「えーっと……。『スキルを使用された場合視線を感知できる?』 なら……」
私は、5メートル先を指定して自分で≪瞬間転移≫をクリックしてみる。
――なにもおきない。
おかしい。
これじゃ魔王の元に飛べない。
『見たことがある』の条件に掛からないじゃないのよ。
『ねぇねぇ。魔王。ねぇ、魔王ってば――』
『もう、なんだい。今動画見てるから後にしてー』
『動画?』
『あぁ、異世界のジアちゃんは知らないだろうけど、それを見るととっても笑顔になるって、あぁあああああ――――。なんじゃこりゃぁぁ――』
急に魔王が叫んだ。どうしたというのだろう?
『スキルポイントが勝手に振られてるぅぅぅーーー\(^o^)/』
主に私のせいだった。
『えーっと、スキル取るとき確認しましてよ?』
『ぐ……、完全にログが残っているからぐうの音もでねぇ……。適当に答えたのがまずったorz..。変身スキルとか取りたかったのにぃ。魔法少女の定番! 変身バンク! ジアちゃんの変身みたかったのになぁ……』
何か不穏なセリフを聞いたが、私は聞かなかったことにした。
『ところでマスター。ちょっと実験したいんで、≪瞬間転移≫して頂けないでしょうか?』
『OKOK-。ジアちゃんの頼みだ。スキル振って何がしたかったのか見てあげようじゃないか。なんでもするよッ。ってポチっとな』
私の視線が飛び、また5mくらい移動した。
その瞬間ウィンドウが表示され、ぼやけた黒い服の男の子の姿が見えた。
『お、俺の姿が映っているじゃん。なんじゃこりゃ。これはえーっと、PCのカメラ? って、これがジアちゃんの取りたかった≪視線感知≫の能力? でもこれ、敵の攻撃かわすならLevel.5まで上げないと意味ないんじゃ?』
『私、マスターの姿が見たかったから……』
『おぉ、可愛いこといってくれるねぇー。あー。これが実験かぁ……。やっぱりジアちゃん可愛いなぁ……』
いいえ。これが実験ではなく、これからが実験なの。
姿は見えた。これなら――
私は今『見た』魔王の姿を思い浮かべながら≪瞬間転移≫のアイコンをクリックする――
これで、魔王の元へ――
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なにも起きなかった。
何度も押す。反応なし。
「うそ……、なんで……」
メッセージウィンドウを見る。何か原因が分かるかもしれない。
確かに原因が黄色いメッセージで表示されている。
≪≪指定した転移先は視認したことがありません――≫≫
≪≪指定した転移先は視認したことがありません――≫≫
≪≪指定した転移先は視認したことがありません――≫≫
………
クリックするたびに増える同一メッセージ。
(じゃぁ、私には魔王の元にはいけないというの?)
(何か……、見落としがあるはず……)
『んー。じゃぁ今度は、俺の実験に付き合ってよ』
『えぇ……』
『あれ? 俺と付き合えないの?』
内心気落ちしながら答えたためか、魔王を困らせてしまったようだ。
『いいえ、そんなことはないのですが……』
『大丈夫だって、いやらしいことじゃないから。狩りだよ狩り』
『まずはゴブリン?』
『そう、ゴブリン。ちょっと思いついたことがあってね。空間魔術師って攻撃力ゼロの言ってみれば地雷職だけど、これがうまくいったらかなりの攻撃力がだせるし。当面の目標としてはそれでレベルアップして≪視線感知≫をLevel.5にすることかな。そうすれば遠距離攻撃回避もできるようになるから――』
『えぇっとそれは――』




