01父が勝手に縁談を受けた
王太子と婚約をした記念に自費でノートを買ってみた。表紙がキラキラしてすごくお気に入り。メイドや父や母、兄に見せびらかしたら羨ましがられて、得意げになった。
明日は王太子とやらに会うのだがなんだかあんまり嬉しくない。なぜか胃のあたりがキリキリする。
虫の知らせと本で読んだ事がある。これはその類なのではと思ったが昨日の今日で嫌だと言うのもなにか変なので言えない。
うちが高位貴族だから、選ばれてしまったのだ。
兄がなぜ日付が書かれていないのか聞いてきた。流石は跡継ぎ。目のつけどころが一味違う。
日付を書いたら三日坊主なことが知られてしまう。おまけに自分の目にも入って、その途端書く気が無くなるからだ。
などと説明すると兄は笑って、お前は天才だな!と髪をぐしゃぐしゃにしながら撫でてきた。
天才なのは自他共に認められているから、今になって気付くなんて、もう少し見る目を養った方がいいかもしれないと心配になる。
兄は将来婚約者の彼の側近になるらしいから。今日は朝から大忙し。王太子に会うために早起きをしなくてはならない。
毎回これならやっぱり婚約者なんてなりたくない。もうなっているというツッコミはなしで!
おめかしして父に手を引かれて行くとムスッとした王の息子が父親の王と共に出迎えた。自分も同じ顔をしたいのに我慢しているのに。そっちがその表情を許される理由がわからない。
なぜ、王は息子を注意しないの?父も怒っているのか王を冷たい目で見て笑みを浮かべている。
笑っているのに怒っているのがわかるなんて器用だ。自分も大人になったら同じスキルを会得しておきたい。
王妃になるかは今日でわからなくなったが、貴族令嬢としては必須項目かもしれないし。
王は父の冷えた目を見て原因を無くそうと王子に挨拶するように言う。けれど。
「お前みたいな子供と結婚なんてしないからな!」
叫ばれて驚いた。王は王子になにを言っているんだと叱るが、普段から父親を舐めているらしく恐れずにそっぽを向く。
しかし、だ。
父はそれを見て王に低い声で今回の婚約は頼み倒されて許可したのにこれはどういうことかと聞いている。王は王子をもう一度怒って謝らせようとしているけれどダメっぽかった。
自分からしても、子供は王の子供以前に貴族の子供としてどうかと思う。こちらはしっかり王族に対して礼儀を示したのに。彼は忠義を蔑ろにするつもりらしい。
彼に忠義も敬意も払いたくないと思って不愉快に内心思っていると、王がすまないと謝ってきた。
何度も謝る。なんでそこまでこちらと婚姻を望むのかわからない。父は謝る王を許すとも許さないとも言わず無言で見ている。
「おい!貴様!父上に頭を下げさせるなんて何様だ!」
「や、やめんかっ」
「陛下……わざとですか?」
父が声をかけたと思ったら王に威圧を向けてジリジリとしたものが空気を支配する。
「ち、父上?」
王子は目をぱちぱちして怒鳴るので、目を白黒させている。頭を下げさせているのは、息子の自分だと気付かずに。
こういうのをマッチポンプというのだそう。素晴らしいシステムだ。王子は立ち尽くしてボーっとしている。
「え、え、父上、なぜ、私に?」
再度問う息子に父親が頭が痛いという顔をしている。
「黙っていろっ。もう、余計なことを言って相手を怒らせるなっ」
怒られたことが納得いかないようだ。父親のために怒ったのに怒られたと思っていそう。こんな人と婚約者にされるなんて不幸でしかない。世界で一番の。
「お父様」
父に声をかける。父はこちらを向いていると首を振る。自分と同じ気持ちなのだと信じているからね?婚約をなくしてくれるよね、ね?わかってるよね。
しかし、二人で視線で会話をしていると王がこちらの視線のやり取りを見ていたのか「すまない」とぺこぺこする。
「お願いだ。やめないでくれ」
「しかし、相性が悪いです」
父が顔を顰めて断ろうとする。
「お、お願いだ」
自分以外にも婚約をしてくれる令嬢くらいいると思うんだけど、と思っていたら王と父の間の契約を見直すことになったらしい。
その内容は、暴言を吐くごとに慰謝料と婚約者としての義務をなくしていくこと。そして、その度に護衛を増やす。王も王子の行動や暴言の報告書を読むこと。
あまりに酷いとその内容を世間に公表するという様々な契約を増やしていく。嫌ならば態度を改めればいい。
「し、しかし、この内容は」
「嫌なら婚約はなかったことにするだけです」
「ああ、わかった」
「うちの娘を王子の教育係にしないでくださいね?娘の方が年下なのですから」
項垂れる王に釘を刺す父。その間、子供同士で……というふざけたことは言われなかった。予定では散歩させるつもりだったらしいのだが、王子の態度があり得なさすぎて実現は不可と思われたらしく。
素直に二人で家へ即座にとんぼ帰りすることになる。本当に顔合わせだけだったなぁ。変な王子だったなぁ、ということを母や兄にも話す。
二人は憤慨していた。父がその場で婚約をなかったことにしなかったことも、怒りの一因らしい。
評価をしていただければ幸いです。ひたすら王家ディスの話です




